労働衛生コンサルタント試験 2013年 労働衛生一般 問03

石綿の性状、有害性、法的規制等




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問03 難易度 石綿の性状、有害性、規制の状況等に関するごく基礎的な知識問題。正答できなければならない。
石綿の性状、有害性等

問03 石綿に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)極めて細い繊維で、熱や摩擦などに強く、丈夫で変化しにくい。

(2)ばく露の可能性が高い業種には、建設業、造船業がある。

(3)作業者の家族のばく露の原因として、作業着などの家庭への持ち込みがある。

(4)ばく露による健康障害には、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚がある。

(5)日本では、代替化が難しい一部の石綿含有製品の流通が認められている。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。石綿は、極めて細い繊維で、熱や摩擦などに強く、丈夫で変化しにくい。

(2)正しい。石綿は、かつて耐火材などとして建築物や船舶に多量に使用されており、それらの建築物や船舶の修理・解体などの作業で、作業者がばく露するリスクが高いと考えられる。なお、建築物の新築や船舶の新造では、ばく露の可能性はないと言ってよい。

(3)正しい。いわゆるクボタショックにおいて、作業者の家族が、家庭へ持ち込まれた作業着によってばく露して被災した例が確認されている。本件に関し、ミサワリゾート訴訟及びリゾートソリューション訴訟という2件の損害賠償請求訴訟が提訴されたが、前者は予見可能性がないとして原告敗訴、後者は会社側が和解金を支払うこと等で終結した(※)

※ ミサワリゾート訴訟でも事実関係そのものが否定されたわけではない。その後、遺族に対する和解金の支払いは制度化され、2020年3月には、クボタの旧神崎工場の元社員の家族の中皮腫による死亡に対し、クボタが遺族に解決金を支払った例などがある。この家族は工場から3km以上離れた場所に住んでいたが、職員の作業着を洗濯していたことがばく露の原因と考えられた。

なお、石綿健康被害救済制度では、労働者が持ち帰った作業着等に付いた石綿を吸い込んだ家族など、労災補償の対象とはならない者を救済する制度である。

(4)正しい。ばく露による健康障害には、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚がある。なお、良性石綿胸水も石綿関連疾患であるが、救済給付の対象外となっている。

(5)誤り。2006年(平成18年)9月1日に、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する石綿含有製品の製造、輸入、譲渡、提供又は使用が全面禁止(除外品目あり)された。このとき、法制度が、原則は禁止せずに禁止品目を指定する「ネガティブリスト方式」から、原則は禁止として製造等が認められる製品を指定する「ポジティブリスト方式」に切り替わった。このため、一般には「全面禁止」されたと理解されているが、代替化が難しい一部の石綿含有製品の流通は認められていた。

その後、ポジティブリストの製品が順次削除され、2012年(平成24年)3月1日にはすべてのポジティブリストの製品が削除された。現在では、石綿製品の製造等は全面禁止されている。

なお、現在も分析用の試料や試験研究用の製品は製造等が認められているが、これは「代替化が難しい一部の石綿含有製品の流通が認められている」わけではない。

2021年02月14日執筆