労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生関係法令 問05

酸素欠乏症等の防止




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問05 難易度 酸欠則に関する基本的な知識問題である。合格のためには正答できるようにしておく必要がある。
酸素欠乏症等

問5 酸素欠乏症等の防止に関する次の記述のうち、酸素欠乏症等防止規則上、誤っているものはどれか。

(1)汚水又は腐泥を入れたことのあるピットの内部の作業場については、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の酸素及び硫化水素の濃度を測定しなければならない。

(2)海水が滞留している暗きよの内部における作業については、酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。

(3)しょうゆ、酒類又はもろみを入れたことのある醸造槽の内部における作業に労働者を従事させるときは、労働者を当該作業を行う場所に入場させ、及び退場させる時に、人員を点検しなければならない。

(4)ボイラーの内部においてアルゴンを使用して行う溶接の作業に労働者を従事させるときは、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18パーセント以上に保つよう換気する措置、又は空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクの使用のいずれかの措置を講じなければならない。

(5)冷蔵室の内部における作業に労働者を従事させる場合、冷蔵室の出入口の扉若しくはふたが内部から容易に開くことができる構造のものであるとき又は冷蔵室の内部に通報装置若しくは警報装置が設置されているときを除き、労働者が作業をしている間、冷蔵室の出入口の扉又はふたが締まらないような措置を講じなければならない。

(2)

【解説】

(1)正しい。汚水又は腐泥を入れたことのあるピットの内部の作業は、酸欠則第2条(第八号及び安衛令別表第6第九号)により第二種酸素欠乏危険作業となる。

従って、酸欠則第3条第1項により、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の酸素及び硫化水素の濃度を測定しなければならない。

【労働安全衛生法】

(作業環境測定)

第65条 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。

2~5 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(作業環境測定を行うべき作業場)

第21条 法第六十五条第一項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。

一~八 (略)

 し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きよ、マンホール、溝又はピツトの内部

十~十二 (略)

 (略)

別表第6 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係)

一~八 (略)

 (略)

一~八 (略)

【酸素欠乏症等防止規則】

(定義)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~七 (略)

 第二種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険場所のうち、令別表第六第三号の三、第九号又は第十二号に掲げる酸素欠乏危険場所(同号に掲げる場所にあつては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。)における作業をいう。

(作業環境測定等)

第3条 事業者は、令第二十一条第九号に掲げる作業場について、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の酸素(第二種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあつては、酸素及び硫化水素)の濃度を測定しなければならない。

 (略)

(2)誤り。海水が滞留している暗きよの内部における作業は、酸欠則第2条(第八号及び安衛令別表第6第三号の三)により第二種酸素欠乏危険作業となる。

従って、酸欠則第11条第1項により、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者は認められない。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一~二十 (略)

二十一 別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所における作業

二十二及び二十三 (略)

別表第6 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係)

一~三の二 (略)

三の三 海水が滞留しており、若しくは滞留したことのある熱交換器、管、暗きよ、マンホール、溝若しくはピツト(以下この号において「熱交換器等」という。)又は海水を相当期間入れてあり、若しくは入れたことのある熱交換器等の内部

四~十二 (略)

【酸素欠乏症等防止規則】

(定義)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~七 (略)

 第二種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険場所のうち、令別表第六第三号の三、第九号又は第十二号に掲げる酸素欠乏危険場所(同号に掲げる場所にあつては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。)における作業をいう。

(作業主任者)

第11条 事業者は、酸素欠乏危険作業については、第一種酸素欠乏危険作業にあつては酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、第二種酸素欠乏危険作業にあつては酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない

2及び3 (略)

(3)正しい。しょうゆ、酒類又はもろみを入れたことのある醸造槽の内部における作業は、酸欠則第2条(第六号及び安衛令別表第6第八号)により酸素欠乏危険作業となる。

従って、酸欠則第8条の規定により、本肢の作業に労働者を従事させるときは、労働者を当該作業を行う場所に入場させ、及び退場させる時に、人員を点検しなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

別表第6 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係)

一~七 (略)

 海水が滞留しており、若しくは滞留したことのある熱交換器、管、暗きよ、マンホール、溝若しくはピツト(以下この号において「熱交換器等」という。)又は海水を相当期間入れてあり、若しくは入れたことのある熱交換器等の内部

九~十二 (略)

【酸素欠乏症等防止規則】

(定義)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 酸素欠乏危険作業 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号。以下「令」という。)別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所(以下「酸素欠乏危険場所」という。)における作業をいう。

七及び八 (略)

(人員の点検)

第8条 事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させるときは、労働者を当該作業を行なう場所に入場させ、及び退場させる時に、人員を点検しなければならない。

(4)正しい。本肢のボイラーの内部においてアルゴンを使用して行う溶接の作業は、酸欠則第21条第1項の対象となり、同項第一号及び第二号により正しい。

なお、一酸化炭素中毒の防止を目的としたものではあるが、平成 16 年9月 21 日基安化発第 0921002 号「アーク溶接作業における一酸化炭素中毒の防止について」では、ボイラ内部のアーク溶接について「アーク溶接作業のうち、タンク内等において炭酸ガス、アルゴン又はヘリウムをシールドガスとして使用するアーク溶接を行う場合には、酸素欠乏症等防止規則(昭和 47 年労働省令第 42 号。以下「酸欠則」という。)第 21 条第1項第1号の規定に基づき、作業場所の空気中の酸素濃度を 18 %以上に保つように換気する」とし、タンク内等の換気を行うことが困難な場合」に限って酸欠則第 21 条第1項第2号の規定に基づき、労働者に酸素呼吸器、空気呼吸器又は送気マスクを使用させるこ」とされている。

条文上では正しいのだが、換気と空気呼吸器等の使用を安易に「又は」でつないだ本肢には疑問を感じなくはない。

【酸素欠乏症等防止規則】

(保護具の使用等)

第5条の2 事業者は、前条第一項ただし書の場合においては、同時に就業する労働者の人数と同数以上の空気呼吸器等(空気呼吸器、酸素呼吸器又は送気マスクをいう。以下同じ。)を備え、労働者にこれを使用させなければならない。

2及び3 (略)

(溶接に係る措置)

第21条 事業者は、タンク、ボイラー又は反応塔の内部その他通風が不十分な場所において、アルゴン、炭酸ガス又はヘリウムを使用して行う溶接の作業に労働者を従事させるときは、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。

 作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を十八パーセント以上に保つように換気すること。

 労働者に空気呼吸器等を使用させること。

2~4 (略)

【アーク溶接作業における一酸化炭素中毒の防止について(平成 16 年9月 21 日基安化発第 0921002 号)】

 アーク溶接作業のうち、タンク内等において炭酸ガス、アルゴン又はヘリウムをシールドガスとして使用するアーク溶接を行う場合には、酸素欠乏症等防止規則(昭和47年労働省令第42号。以下「酸欠則」という。)第 21 条第1項第1号の規定に基づき、作業場所の空気中の酸素濃度を 18 %以上に保つように換気するとともに、一酸化炭素濃度を日本産業衛生学会で示されている許容濃度である 50ppm 以下に保つこと。

  なお、タンク内等の換気を行うことが困難な場合にあっては、酸欠則第 21 条第1項第2号の規定に基づき、労働者に酸素呼吸器、空気呼吸器又は送気マスクを使用させること。

(5)正しい。酸欠則第20条により、冷蔵室の内部における作業に労働者を従事させる場合、冷蔵室の出入口の扉若しくはふたが内部から容易に開くことができる構造のものであるとき又は冷蔵室の内部に通報装置若しくは警報装置が設置されているときを除き、労働者が作業をしている間、冷蔵室の出入口の扉又はふたが締まらないような措置を講じなければならない。

【酸素欠乏症等防止規則】

(冷蔵室等に係る措置)

第20条 事業者は、冷蔵室、冷凍室、むろその他密閉して使用する施設又は設備の内部における作業に労働者を従事させる場合は、労働者が作業している間、当該施設又は設備の出入口の扉又はふたが締まらないような措置を講じなければならない。ただし、当該施設若しくは設備の出入口の扉若しくはふたが内部から容易に開くことができる構造のものである場合又は当該施設若しくは設備の内部に通報装置若しくは警報装置が設けられている場合は、この限りでない。

2021年12月28日執筆 2023年05月22日修正