労働衛生コンサルタント試験 2012年 労働衛生一般 問06

酸素欠乏症及び硫化水素中毒




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問06 難易度 酸素欠乏症等は、同種問題が繰り返し問われている。正答できなければならない。
酸素欠乏症等

問6 酸素欠芝症と硫化水素中毒に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)酸素不足になると頭痛、吐き気等の症状が現れる。

(2)酸素不足によって障害を最も受けやすいのは脳のうちの大脳皮質であり、通常では空気中の酸素の濃度が16%程度になると死の危険が生じてくる。

(3)サイロ内では貯蔵した植物の呼吸作用により酸素濃度の低下と二酸化炭素濃度の上昇が見られる。

(4)硫化水素が発生する危険のある場所として、し尿処理施設、パルプエ場がある。

(5)高濃度の硫化水素ばく露により肺水腫が生じることがある。

正答(2)

【解説】

本肢は、厚生労働省のパンフレット「なくそう 酸素欠乏症・硫化水素中毒」(以下「酸欠パンフ」という。)からの出題である。このパンフレットは、受験までに理解しておく必要がある。

【酸素欠乏症】
酸素
濃度
症状等
21% 通常の空気の状態
18% 安全限界だが連続換気が必要
16%
12%
8%
6%
頭痛、吐き気
目まい、筋力低下
失神昏睡、7~8分以内に死亡
瞬時に昏倒、呼吸停止、死亡
【硫化水素中毒】
硫化水素
濃  度
症状等
5ppm程度 不快臭
10ppm 許容濃度(眼の粘膜の刺激下限界)
20ppm

350ppm

700ppm
気管支炎、肺炎、肺水腫
 
生命の危険
 
呼吸麻痺、昏倒、呼吸停止、死亡

※ 厚生労働省パンフレット「なくそう 酸素欠乏症・硫化水素中毒」

(1)正しい。酸欠パンフの表紙の表(上記の表)によれば、酸素濃度が16%程度に不足すると、頭痛、吐き気等の症状が現れるとされている。

(2)誤り。酸素不足によって障害を最も受けやすいのは脳のうちの大脳皮質であることは正しい。しかし、通常では空気中の酸素の濃度が16%程度であれば死の危険が生じてくるとは考えにくい。

(3)正しい。呼吸作用とは生物が酸素を取り入れて二酸化炭素を吐き出す生命活動である。サイロ内に植物を貯蔵しておくと、その呼吸作用により酸素濃度の低下と二酸化炭素濃度の上昇が見られる場合がある。

(4)正しい。し尿中にはメチル‐メルカプタンなどの硫黄を含む有機化合物が含まれており、これが細菌によって分解されることによって硫化水素が発生する。このため、し尿処理施設では硫化水素発生のリスクがある。

また、パルプ工場においては、クラフトパルプ製造時に用いる硫化ナトリウムから硫化水素が発生する(※)

※ I.B.Douglass(東京工業大学 清浦研究室訳)「クラフト法における悪臭防止について」(紙パ技協誌 Vol.22 No.3 1968年)

酸欠則は、硫化水素が発生する危険のある場所における作業を、第二種酸素欠乏危険作業としている。そのひとつに「し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きよ、マンホール、溝又はピツトの内部」(安衛令別表第6第九号)を定めている。

【労働安全衛生法施行令】

別表第6 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係)

一~八 (略)

 し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きよ、マンホール、溝又はピツトの内部

十~十二 (略)

 (以下略)

【酸素欠乏症等防止規則】

(定義)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~七 (略)

 第二種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険場所のうち、令別表第六第三号の三、第九号又は第十二号に掲げる酸素欠乏危険場所(同号に掲げる場所にあつては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。)における作業をいう。

(5)正しい。酸欠パンフの表紙の表によれば、20ppm以上の硫化水素ばく露により肺水腫が生じることがあるとされている。

2022年01月07日執筆