菅総理は、消費税を財源にした「助成金」を出してまで病床を減らそうとしています。
外国の軍事侵略という、可能性のほとんどない事態に備えて軍事費を増大させるより、確実にやってくる感染症の拡大や大災害に備えるために医療体制を拡充することこそが、国、そして国民を守るために必要なことです。
政府は、限られたコストを、リスクに備えてかけるべきところを誤っています。
1 厚生労働省の厚労科研の調査結果速報
執筆日時:
最終改訂:
過労死の水準を超えている医師の割合が驚くほどの高さとなっている。
厚生労働省が3月26日に公表した厚労科研の「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた医師の働き方改革が大学病院勤務医師の働き方に与える影響の検証とその対策に資する研究」調査結果の速報版によると、かなりの医師が過労死水準にあるのだ。
我々が若い頃は、所定外労働時間が所定内労働時間より長いということが“普通”だったこともある。しかし、近年の労使の意識改革が進む中で、大学だけがこの状況に取り残されていて良いということにはならない。
2 大学病院の医師の長時間労働の実態
上図は厚生労働省が公表した速報版に掲載されている大学病院の医師の勤務時間である。速報版なので、凡例が記載されておらず、やや意味の不明瞭な部分もあるが、縦軸と横軸の「労働時間」とあるのは「所定外労働時間」のことで、図中の斜線の注記に「960時間」と「1860時間」とあるのは、それぞれ「720時間」と「960時間」の誤植と思われる。(※)
※ より厳密には「1週40時間を超えて働く労働時間」のことであろう。また、「時間外・休日労働年960時間換算」の赤いラインが横軸と縦軸に交差する箇所が60時間になっているのでは計算が合わない。横軸と縦軸のスケールの方が正しいと仮定すると、「960時間」は「720時間」の誤植としか思えない。また、「1860時間」とあるのも「960時間」の誤りであろう。
縦軸と横軸のスケールが誤っている可能性もなくはないが、通常、グラフのスケールを誤るとは考えにくいので、スケールは正しいと考えよう。
それにしても、グラフから数える限りでは、大学病院の勤務時間だけで過労死ラインの80時間を超える医師が30名近く、兼業も合わせると50名を超えるのである。しかも、100時間を超える医師が兼業を含めて4名いるようにみえる(※)。有効回答数は531名であるので、1割強が過労死ラインを超えていることになる。
※ グラフ上のプロット数を数えた。図に重なりがあるので、正確なものではない。
3 根本的な解決には医療機関の充実が必要
勤務医の過重労働については、これまでも社会問題になってきている。たんにコロナだけが原因となっているのではないのだ。また、勤務医の労働条件の悪化、医療ミスによる訴訟リクスの増大が原因となって、医師を目指そうという若者が減少しているという状況さえ生まれている。
これは、コロナによる異常事態による面もなくはないが、それだけではないのだ。医療機関の削減こそが、その原因となっているのである。
医療サービスの需要が増大する中で、供給側が削減されれば、しわ寄せがどこかにいくのである。それが、医師、保健師、看護師などの医療従事者の労働条件の悪化として現れているのだ。
そして、それは医療サービスの低下となって、国民に跳ね返ってくるのである。
4 国の危機管理としての医療体制の充実
そもそも平常時を前提として、医療機関の削減を進めれば、緊急事態に対応ができないのである。危機に備えて医療体制を整えておくのは、国家の存亡にかかわるリスク管理なのである。
新たな感染症の突然の拡大はこれからも発生し得る。また、大災害による膨大な負傷者の発生、これらが発生したときに、医療体制が整っていなければ、国家の存続が危うくなるのである。
この動画は、共産党の議員の質問に対する政府の答弁であるが、あまりにも政府側に緊急事態発生時に国民の生命を守ろうという意識が薄弱なのである。どう考えても野党の方がまともなことを言っているのだ。
医療崩壊で救える命が救えなかった、その事への反省もなく、それどころか消費税を財源にした「助成金」を出してまで病床を減らそうとしている。
— EMIL (@emil418) March 25, 2021
質問に対し総理は答弁にすら立とうとせず、厚労大臣は逆切れした。
(2021.3.25参院予算委員会/田村智子議員) pic.twitter.com/EOP77AGtKn
外国の軍事侵略という、可能性のほとんどない事態に備えて軍事費を増大させるよりも、確実にやってくる感染症の拡大や大災害に備えるために医療体制を拡充することこそが、国、そして国民を守るために必要なことなのだ。
政府は、まともなリスク管理ができているのか。限られたコストを、リスクに備えてかけるべきところを誤っているのではないか。