日本の政権と危機管理能力




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コロナによる感染リスク

日本の政権が危機管理ができないのは、勝てる見込みのない第二次大戦に突入した頃から一貫しているようです。その一方で、2017年に北朝鮮がミサイルを発射すると、ときの政府はこれを奇貨として国民の不安感を煽り、軍事予算の拡大を企てました。

我が国の現在の危機管理能力は、福島第一原子力発電事故の原因を作ったこと、新型コロナ対策で後手、後手にまわったことなど、きわめて低いといわざるを得ない状況にあります。残念ながら、二世、三世ばかりの世襲政治家にこれ以上、日本の危機管理は委ねることには強い危機感を覚えます。

日本国家の危機管理のためにも、専門家集団を活用した危機管理が強く望まれます。




1 我が国政府の危機管理のなさ

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日本の政権が危機管理ができないのは、勝てる見込みのない第二次大戦に突入した頃から変わっていないようだ。だが、大戦のときは現在の与党は存在していなかった(※)ので本稿では触れない。まず、政府の危機管理能力のなさを如実に表した例として2000年問題を挙げよう。などというと、すでに忘却の彼方のできごとのように思われるかもしれないが、実は、ここに政府の危機管理能力のなさが如実に表れているのだ。まずはここから説き起こそう。

※ もっとも、戦後の自民党の総裁には、戦前・戦時の内閣の閣僚が多数存在している。これはドイツで言えば、ゲッペルスやゲーリングが戦後のドイツの首相になっているようなものだ。

日本に住んでいるとあまり感じられないかもしれないが、世界の標準的な考え方からは異常というべきものである。これは、米国が旧ソ連などに対抗するために、日本の軍国主義者を利用しようとした結果である。


2 2000年問題と北朝鮮のミサイル

(1)2000年問題にみる自民党政府の危機管理意識

結論からいえば、2000年問題のときは、政府は、2000年問題の技術的な意味を理解しておらず、ありもしない危機を煽っていたのである。当時、政府は2000年問題によって大規模な災害が発生するのではないかという不安を持っていた。だが、実を言えば、専門家はしらけていただけだったのである。

専門家などとは到底言えないような“評論家”が危機を煽り、それを正確に理解できない政治家が鵜呑みにし、行政機関や専門家に対して、一方的に上から対策の指示を出していたため、現場はやむを得ず格好だけ付けていたというのが、当時の真の姿だったのである。

今になってみればお笑い草だが、当時の自民党の政治家たちは、本気でこんなことを心配していたのだ。

  • 化学プラントが異常反応を起こす(プラントの制御は、時間の測定を「時刻の差」で計算するから、2000年を超えると時間が正常に測定できなくなるため)
  • 北朝鮮からミサイルが発射される(理由は不明)
  • 航空機が墜落する(理由は不明)
  • 電気釜が発火する(おい、おい)
  • 産業用ロボットが暴走して作業者を襲う(はぁ?)

電子技術や制御技術の知識が多少でもあれば、冗談としか思えない内容ばかりである。最初の「プラントの制御は、時間の測定を「時刻の差」で計算するから、2000年を超えると時間が正常に測定できなくなる」などというのは、2000年問題の本質が理解できていないのである。

時刻の差で時間を測定することは普通にあり得るが、年単位の時刻を用いてその差を計算するようなシステムなどあるわけがない。何のためにメモリを節約するために年号を2桁にしていると思っているのか。

また、北朝鮮からのミサイルが飛んでくるなどというのは、さらに馬鹿げている。当時の北朝鮮の軍事用のコンピュータは、それほど性能が良くなかった。しょっちゅう故障していたのである。それが、2000年1月1日になって、もう一回壊れたからと言ってどうだというのか。

それでミサイルが飛んでくるなら、それまでにすでに飛んできている。いかに北朝鮮の指導者が愚かだとは言え、シリコンとワイヤの化け物に、自国の命運を委ねるほど愚かではないのだ。

当時与党の閣僚たちは、2000年問題があるからと国民に食料の備蓄を呼び掛けていた。さすがに官僚は、「自然災害等に備えてこの機会に」と付け加えて、何も起きなかったときの保険を掛けてはいたが。

2000年問題では、本来、問題を正確に分析して、不安を鎮めるべき立場の政府が、愚かにも危機感を煽っていたのである。


(2)北朝鮮からのミサイル問題で危機感を利用する政府

軍事基地

さらに、2017年に北朝鮮がミサイルを発射すると、当時の安倍政権はこれを奇貨として国民に不安感を煽り、軍事予算の拡大を企てた。確かに、北朝鮮のミサイル発射は暴挙と言うべきであり、下手な融和政策を採るべきではないし、怒りのポーズを示すことが必要な場合はあろうが、外交は冷静にならなければ状況を悪化させるだけである。

しかも、これ幸いとばかりに軍事費を増強するなどは、軍需産業の利益になるだけで国民の安全にはつながらないのだ。

北朝鮮の指導者たちが、信頼できない連中であることは疑いもないが、彼らは自国の利益のために行動するという一点において信頼できるのである。意味もなく、戦争状態にない他国にミサイルを撃ち込むほど愚かではないし、負けることが分かっている全面戦争など望んではいないのだ。

案の定、表面では米国と韓国は北朝鮮を批判をしつつも、水面下では北朝鮮の指導者に働きかけを行っていた。それが、トップ会談の形で現れるのである。自民党政府は、独ソ不可侵条約のときと同じように、関係各国政府に振り回されただけだった(※)

※ 北朝鮮の状況は複雑怪奇と言わなかっただけまだましというべきか。

ミサイル退避訓練

安倍政権作製

防空壕

東條政権作製

※ クリックすると別タブで拡大します。

一方、安倍政権は、国内の危機感を煽るために、アラートを出してみたり、意味のない避難訓練をしてみたりといった、「危機利用」を盛んに行っていた。国民の安全を確保するための外交手段に訴えることもなく、軍事費の拡大の好機ととらえたのであろう。

※ 因みに、右上の図は、右側が北朝鮮のミサイル飛来時の対応を呼びかける消防庁のポスターで、左側が第二次大戦中の防空壕の作り方を示す当時の政府のポスターである。両方とも、クリックで拡大するので見比べて欲しい。さして違いはないということが分かるだろう。いずれにしても、焼夷弾による絨毯爆撃や、近代的なミサイルにはさして役立ちそうもない。

政府は、北朝鮮によるミサイル発射を、危機と捉えて実効ある対策をとるのではなく、たんに危機意識を煽って利用しただけだったのだ。


3 政府と危機への備えの意識

現政権の危機管理能力のなさは、福島第一原子力発電事故の原因を作ったこと、新型コロナ対策で後手、後手にまわったことでも如実に示されている。福島第一については、野党の議員が事故の何年も前に災害リスクについて指摘していたにもかかわらず放置していた。

新型コロナ対策についても、新たな感染症のリスクについては、ビル・ゲイツ氏など多くの人々によって警告が出されていたにも拘わらず、逆に医療機関の病床を減らすという暴挙をやってのけている。

政府には、どのようなリスクがあるかを冷静に検討して、それに備えようという意識が全くないのだ。このような政権に国を委ねておくことは、きわめて危険だと言わざるを得ない。


4 政権の危機管理のなさの大きな要因

政権に、危機管理能力がまったく存在しない原因は何だろうか。私は、これは、専門知識に対する意識の欠如だと考えている。

専門家の知識を用いることができないばかりか、自らも専門知識を身に付けようとしてこなかったのである。確かに、政治家の多忙さは理解できなくもない。しかし、専門知識のないのは与党の議員に多いのだ。

野党の議員は、驚くほど専門的な知識を持っている者がいる。また、ブレーンも多いのだ。

ところが、与党議員の専門知識のなさはあきれるばかりである。安倍前総理の歴史の知識は小学生並みとよく言われる(そして正しい)。漢字が読めないのは、もともと本を読む習慣がないからであろう。云々を“でんでん”と読むような人物に総理になる資格はないのだ。

※ 一例だが、安倍前総理は、総理就任前の2005年に「サンデープロジェクト」で、「満州は攻め入って創ったわけではない」「満州に対する権益は第一次世界大戦の結果、ドイツの権益を日本が譲り受けた面があります」などと発言している。青島と満州の区別がついていないのであろう。愚かと言うより他はない。

これは、菅総理も同じことである。秘書に、さしたる知識もない子息を就けるようでは、総理としての資質に欠けるのだ。本来であれば、行政や政策に関して、専門知識を持った人物を就けるべきなのである。それをしないのは、国家よりも家族への情実を重視しているからである。

かつての、自民党の岸氏、池田氏、佐藤氏などは、政策は別としても、頭が切れたし知識も十分にあった。また、周囲にはブレーンがいたのである。

安倍前総理の周囲には、“ネトウヨ評論家”が集まっていただけである。こんな連中に頼っている最近の自民党ではどうにもならないのだ。

二世、三世ばかりの親の七光りだけの世襲政治家や、杉田水脈氏のようなネトウヨ政治家、片山さつき氏のような傲慢政治家ばかりの現在の自民党には任せておけない。日本国家の危機管理のためにも、今は、野党連立政権の樹立が強く望まれる。





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