各種の危険要因による死亡リスク




トップ
家庭内の事故

様々な危険要因による死亡者数は、我々が感じる「恐怖感」の大きさと必ずしも一致しません。もちろん、死者数だけで、様ざまなリスクのレベルが評価できるものではありません。

各種の危険要因に対処するためには、その危険性の大きさを正しく知る必要があります。そして、各種の危険要因のリスクの大きさの評価手段の一つとして死者数は有効なファクターとなります。

本項では、各種の危険要因による死者数について解説しています。




1 様々な原因(事故等)による死者数

執筆日時:

最終改訂:

政府の統計による様々な原因による死者数をまとめてみた。なお、死者の定義が統計によって異なっており、単純に比較できるものではない。あくまでも「この程度」という感覚で見て欲しい。また、それぞれの死者には重複があり得ることをお断りしておく。

各種危険要因ごとの死亡者数

図をクリックすると拡大します

※ 肺炎(人口動態統計)
自殺者数(警察庁統計)
家庭内における主な不慮の事故(人口動態統計)
交通事故(警察庁発表資料/2020年は2,839人)
火災(総務省報道発表資料)
労働災害(厚生労働省発表資料)
水難(令和元年における水難の概況/警察庁生活安全局生活安全企画課)
他殺(人口動態統計)
食中毒(令和元年食中毒発生状況の概要について/厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課)

なお、これらの死者数は年によってかなり変動する。できるだけ同じ年のものを示したかったので、データがあれば2019年の一年間の数値を示しているが、家庭内の不慮の事故は正式な人口動態統計には表れないため、2015年の数値を用いている。

また、参考までに「喫煙」及び「受動喫煙」の数値を参考までに挙げているが、これは各年ごとのデータは存在していないので、各種の研究による推定値を挙げていることをお断りしておく。


2 新型コロナによる死者数はどうなっているか

この表の「肺炎」による死者は2019年の数値であり、新型コロナの流行の前である。因みに2020年の新型コロナによる死者数は、3,492名(NHKのWEBサイトによる)であり、交通事故よりもかなり多い(※)が、従来型肺炎や、喫煙による死亡リスクよりかなり低いことが分かる。

※ 2021年の新型コロナによる死者数は、五輪の開催状況やワクチンの接種状況にもよるだろうが、2020年を大きく上回るものと予想される。

なお、警察庁の公表している2020年の交通事故の死者数は、2,839人であるが、2019年から大きく減少したのは新型コロナによる自粛の可能性も否定できない。

もちろん、死亡者の他に、多数の死傷者(コロナの場合は死亡に至らない発病者)があり、また、様ざまな経済影響もあることだから、新型コロナが従来型肺炎や喫煙よりもリスクが低いとは言えない。しかし、過度な恐怖感を感じたり、行き過ぎた対策で別なリスクが出るようなことは避けなければならない(※)

※ もちろん、新型コロナの危険を軽視するべきでもない。不要不急の外出を避けることは必要である。また人込みを避けることや、手洗い等の履行など、対策をとることは重要である。


3 労働災害のリスクをどう捉えるべきか

この表を見ると、家庭は職場より危険だと思われるかもしれない。もちろん、そのような即断は誤りである。

  • そもそも、労働災害の母集団は労働者のみであるが、他の死因は国民全体である。従って、同じ人口当たりでは、労働災害発生件数は数倍程度になる。
  • 他の死因には、高齢者や乳幼児など、死亡リスクの高いグループが含まれるが、労働者は事故に遭いにくい青壮年のみでこれだけの死者が出ている。
  • 他の災害は本人があえてリスクのある行動をとったことに起因するものもあるが、労働災害は必ずしもそうではない。

3番目について説明を加えると、例えば水難は自らダイビングなどの危険な行為を行ったことによるケースもあり、一方、労働災害は強制されたリスクである。後者のリスクは前者のリスクよりも低くなければならないのである。

死者数だけから、その対策にかけるコストの大小を決めることは正しいことではない。労働災害防止対策にかけるコストは、交通事故対策にかけるコストよりも3分の1程度で良いということにはならないのである。


4 最後に=正しく恐れるということ

冒頭に、様々な災害発による死亡者数をお示ししたが、どのような印象を受けられるだろうか。もちろん、死者数だけで、様ざまなリスクが分かるというものではないが、普段、我々が考える「危険性」よりも死者数から受ける印象は異なるだろう。

危険と言うものは、もちろん恐れる必要がある。危険を軽視するべきではない。それは、誰にでも起こり得ることなのだ。

しかし、恐れすぎることも、恐れなさすぎることも正しい態度ではない。危険は、正しく恐れる必要がある。これこそがリスク管理の第一歩なのである。





プライバシーポリシー 利用規約