※ イメージ図(©photoAC)
事業場のメンタルヘルス対策は、一次予防と健康保護(ヘルスプロテクション)がきわめて重要となります。しかし、問題が発生した場合には三次予防(疾病者の再発防止)と健康増進(ヘルスプロモーション)が必要になり、三次予防には産業医の協力が不可欠です。
しかし、非常勤産業医の産業保健活動について、事業者と産業医双方の理解不足もあり、不活発なケースもみられます。産業医活動を活性化するために何が必要かを解説します。
1 初めに
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(1)なぜ、産業医活動が不活発なのか
※ イメージ図(©photoAC)
職場復帰支援には医学的な知識が必要となることも多く、主治医の判断について企業として医学的な検討を行うためにも、また主治医と連携を図るためにも、産業医の理解を得てその協力を得られるようにすることが望ましいといえます。
しかし、心の健康問題に関して産業医の理解・協力が得られないという現場の声が多いことも事実です。ただ、産業医の側からも、事業者が協力を求めてこない、権限が与えられない、必要な情報も出してくれないなどの声もあるようです。
(2)メンタルヘルスの対応を避ける産業医の場合
産業医の協力が得られない場合の当面の解決策としては、衛生委員会への参加などの法定事項は必ず協力を得るようにし、それ以外は他の産業保健スタッフや上司、人事労務管理スタッフなどが産業保健推進センターなどの外部の専門家を活用しながら代替することが考えられます。
ただ、企業の側も産業医の側も、これからの産業保健にはメンタルヘルスは避けて通れない課題であり、産業医が一定の役割を果たすべきという意識を持つべきです。
2 産業医の活性化のために
以下のことなどに留意し、できるだけ早く産業医の活用が図れるようにしましょう。
【産業医の活性化のために】
- 産業医の選任の時点で、企業として何を求めるかを説明した上で契約する。なお、衛生委員会への参加等の法令事項は必ず協力を得なければならない。
- 産業医契約の報酬は適切な額とする。また非専属産業医の場合、主治医からの情報収集や個人面談、意見書の作成などの特別な業務への報酬についても明確にする。
- 産業医には必要な権限を付与する。また必要な健康情報を求められた場合にはプライバシーに留意しつつ提供する。
- 産業医の業務の遂行に当たり都道府県産業保健総合支援センターを活用する。(産業医も心の健康問題にかかる職場復帰など、メンタルヘルス対策の推進については、専門的な立場からの支援を必要としているケースが多い)
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