個人情報の取得の同意を求める際の配慮




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※ イメージ図(©photoAC)

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の「5(1)情報の収集と労働者の同意等」で、(労働者の健康情報の収集について労働者の)「同意の諾否の選択を求めるに当たっては一定の配慮が必要である」とあります。

この配慮とは何か、また、どのような配慮が必要なのかについて分かりにくいという声があります。この配慮について解説します。




1 職場復帰支援の手引きによって求められる「配慮」とは

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(1)健康情報の取得の同意を求めるにあたっての配慮

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(職場復帰支援の手引き)の「5(1)情報の収集と労働者の同意等」の末尾に次のように記載されている。

心の健康問題の症状によっては日常の細かな選択や決定に大きなストレスを伴うこと等もあり、同意の諾否の選択を求めるに当たっては一定の配慮が必要である

※ 厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

※ 下線強調は引用者による。

この「配慮」について、どのような配慮を行えばよいかについて、職場復帰支援の手引きには何も書かれてはいない。そのため、この配慮として何を行うべきかについて、疑問を感じる産業保健関係者もおられるようである。


(2)どのような配慮が求められるのか

悩む女性

※ イメージ図(©photoAC)

うつ病などに罹患すると、その症状として、何かを選択したり決定したりすることに、きわめて大きな困難を伴うようになることがある。

このため「同意して欲しい」と言われても、同意するかしないかを決めることができないことがあり得る。また、できないだけではなく、病状がひどいときは「決めて欲しい(決断せよ)」と言われること自体が強いストレスになることもある。

ここにいう配慮とは、同意の必要性について説明したり、安全配慮のために必要となるのであり本人に不利益になるものではないなどと安心させるなどの配慮ということである。


2 同意を形だけのものにしないために

また、職場復帰支援の手引きの「ストレスを伴うこと等」の「等」の文字には、企業から同意するかしないかと問われても、通常は職場復帰したければ同意するしかなく、事実上、同意が形式を整えるだけになってしまうおそれがあることを示している。

労働者に対して情報収集の必要性とその情報がどのように用いられるかを十分に説明して理解させる等の一定の配慮や、特殊なケースとして(精神疾患の症状によっては)意思能力があるか否かの問題が起こり得るのでその確認をすることなども含まれる。


3 最後に(結論)

悩む女性の相談に乗る弁護士

※ イメージ図(©photoAC)

うつ病などの心の健康問題は、通常の場合の「あなたが良いと言ったはず」「あなたも分かっていたはずでしょう」「(良いといったのだから)あなたの自己責任でしょ」は通じないことがある。

本人に確認したからよいはずだと事業者側は思っていても、本人は「嫌なのに迎合してよいと言ってしまったと」自己嫌悪の感情に陥っていたり、後悔したり、悩んでいることもあり得る。場合によっては、病状が悪化することもあり得るのだ。

本人に不利になり得ることについて、同意を取る場合は、相手の症状に対する理解と配慮が重要となる。職場復帰支援の手引きの配慮とは、このことを挿しているのである。


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