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ネットを活用した安全衛生教育

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在宅安全衛生教育

厚生労働省安全衛生部の3課長名連名の通達で、労働安全衛生教育のネットを通した実施についての解釈が示されています。

これまで、法律上で実施が義務づけられている安全衛生教育について、WEBを通した実施が可能かどうかはグレーな面がありました。実際は、特別教育を中心に実態の方が先に進んでいるという状況でした。

今回の通達は、これらのネットを介した教育について、現実に行われていることを認めた上で、一部のずさんなやり方に歯止めをかけるという意味がありそうです。




1 コロナ禍と危機感

 

執筆日時:

最終改訂:

昨年の初めにコロナ禍が騒がれたとき、ここまで長引くと思っていた人はあまりいなかったと思う。

2020年3月末に患者数が急増して恐怖感を覚えたものだが、緊急事態宣言が発令されると患者数は大きく減少した。

その後、国民もリスクに慣れてしまい、東京、大阪の大都市圏で新規患者数が千人を超えても、あまり恐怖感を感じなくなってしまった。危険に慣れることは、それはそれで冷静な対応のためには必要なことでもあるが、やや危機感がなさすぎになるのも問題である。

感染対策を率先すべき国会議員による不適切な行為までが問題となっている。


2 コロナ禍を災い転じて福とする企業と・・・

それはさておき、コロナ禍に対する対策のため大手の企業を中心に在宅勤務が急速に進んでいる。一見したところでは、嫌々やっていてコロナ禍が終わればすぐに止めようという企業と、そのメリットに気付いてコロナ禍にかかわらず在宅勤務を進めようという企業に二分化しているようである。

在宅勤務は運動不足や社員間の意思疎通の不足というデメリットももたらしているが、そのメリットは、なんといっても通勤時間が無くなることだろう。その時間を、家庭や自己研鑽のために使うこともできるのである。


3 安全衛生教育にネットの活用が可能に

その様な中、厚生労働省安全衛生部の3課長名連名の通達で、労働安全衛生教育のネットを通した実施についての解釈が示されている。

これまで、安全衛生教育と言えば、OFF-JT形式で行うものは集合教育が当然であったが、これが在宅でもできる(技能講習などは除く。)というのだから、大きな発想の転換である。

安全衛生教育におけるWEBの活用は、形だけ教育をしたという形骸化のおそれはあるが、その一方でこれまでにない効果的な教育が行える可能性もある。そこは、活用する企業次第であろう(※)

※ 学校がリモート研修を行うようになったことから、すでに公布されていた著作権法の第35条改正が施行されることとなった。これにより、一般の学校や教育機関はネット授業に著作物の使用が可能になった。しかし、安全衛生教育を行う営利企業はそもそも第35条の対象外であるガイドライン参照。)ので留意されたい。


4 安全衛生教育の世界に何が起きるか

実際にリアルの世界で講師が教育を行っているときは、講師のレベル(知識や教える力)は、それほど「教育の生産性」に影響を与えなかった。能力の高い講師でも教えることのできる受講生の数には限りがあったし、その結果として能力の低い講師にもそれなりに仕事はあったのである。

ところが、ネットを使うとなればそうはいかなくなる。

通達によれば、特別教育については、受講はビデオを見るだけでよく、質問は別途受け付ければよいというのだから、講師1人当たりの受講者数の制限などはなくなる。能力の高い講師は、いくらでも受講生を集めることができるのだ。

このことは、受講生の側にとっても大きなメリットになる。能力の高い講師の質の高い教育を、文字通り「居ながらにして」容易に利用することができるからだ。

企業創設

この結果、教育機関で優れた講師を集め、すぐれた動画を作成するノウハウを持った企業が、労働安全衛生教育の市場に参入し、シェアを占有することも考えられよう。労働安全衛生教育は、法的な義務のあるものについては一定の需要を見込め、ある意味で「魅力的な」分野なのである。

新参者による市場の寡占化は、すでにネットの世界では起きていることだ。SNSは決してザッカーバーグのオリジナルではない。フェイスブックが誕生したとき、米国にはマイスペースやフレンドスターが先行していた。しかし、フェイスブックは先見の明があったのか幸運だったのか、あっという間に寡占状態となってしまった。Googleやマイクロソフトでさえ、そこに食い込むことは難しい状態となっている。


5 これからの安全衛生教育の世界

労働安全衛生教育について、同様にならないと考えることは困難だろう。確かに、我が国には複数の労働災害防止団体があり事業者の信頼を得ているため、これまでは一般企業が労働災害防止の市場へ参入することは困難な面があった。それは事実だ。だからこそ、安全衛生教育のテキストなども、きわめて大きな市場があるにもかかわらず民間の出版社が参入することはなかったのである。

だが、これからはそうではない。ネットを通した安全衛生教育の市場は、参入障壁はきわめて低い。労働安全衛生について熱意と知識ノウハウを有していて、労働災害防止団体に所属していない人材はいくらでもいる。そのような人材を結集して、教育のノウハウのある予備校などが、動画作成のノウハウのある企業とタイアップすれば、かなりの利益を上げることも可能だろう。

考えても見て欲しい。労働安全衛生法は、一定の危険有害な業務に労働者を従事させるときは、特別の教育を行わなければならないとしているのだ。そればかりではない。通達等で示された教育もあり、それらも一定の市場を有しているのである。

わが国の予備校がそこに目をつけないと考える方が奇妙である。

好むと好まざるとに拘わらず、労働安全衛生の世界にもWEBの波は押し寄せてくる。それを前提に、何をなすべきかを考えるべき時がきている。


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