- 1 はじめに
- (1)リスクアセスメント対象物健康診断
- (2)化学物質関連の特殊健康診断の回数(規制緩和)
- 2 具体的な改正事項と留意事項
- (1)リスクアセスメント対象物健康診断
- (2)化学物質関連の特殊健康診断の回数(規制緩和)
- 3 最後に
- 【参考】 関係条文
1 はじめに
(1)リスクアセスメント対象物健康診断
ア 制度の概要
(ア)法令の概要
執筆日時:
最終改訂:
厚労省は、自律的な化学物質管理を志向して2022年2月24日に改正安衛令等を公布し、同5月31日には改正安衛則等を公布した。
この新制度において新しく創設される化学物質関連の健康診断(リスクアセスメント対象物健康診断)の制度の関係条文は、本コンテンツの末尾に示すが、新設される第577条の2の第3項以降に規定されている。
その概要は次のようなものである。
【改正後の安衛則第577条の2による健康診断】
- 第3項:リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う労働者に対し、安衛法第66条による健康診断のほか、リスクアセスメント対象物に係るリスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴き、必要があると認めるときは、医師又は歯科医師が必要と認める項目について、医師又は歯科医師による健康診断(※)を行わなければならない。
- 第4項:濃度基準値設定物質を製造・取り扱う労働者が、濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときは、速やかに、医師又は歯科医師が必要と認める項目について、医師又は歯科医師による健康診断(※)を行わなければならない。
- 第5項(記録の保存):事業者は、上記健康診断(リスクアセスメント対象物健康診断)を行ったときは、その結果の記録(個人票)を作成して5年間(がん原性物質は30年間)保存しなければならない。
- 第6項(医師等への意見の聴取):リスクアセスメント対象物健康診断の結果、異常の所見がある労働者の健康を保持するために必要な措置について、次により、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
- リスクアセスメント対象物健康診断が行われた日から3月以内に行うこと。
- 聴取した医師又は歯科医師の意見を個人票に記載すること。
- 第7項(医師等への情報の提供):医師又は歯科医師から、上記の意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供しなければならない。
- 第8項(事後措置):医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、衛生委員会又は安全衛生委員会への当該医師又は歯科医師の意見の報告その他の適切な措置(※)を講じなければならない。
- 第9項(本人への結果の通知):リスクアセスメント対象物健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、リスクアセスメント対象物健康診断の結果を通知しなければならない。
- 第10項(関係労働者の意見の聴取):第8項の措置について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けること。
※ これらの健康診断及び措置については、衛生委員会(安全衛生委員会)の付議事項としなければならない。
※ イメージ図(©photoAC)
すなわち、新たに創設される健康診断は、改正後の安衛則第577条の2第3項によるものと4項によるものの2種類がある。なお、そのそれぞれに記録の保存、医師等の意見の聴取、医師等への情報の提供、事後措置、結果の本人への通知等が義務付けられる。
第3項はリスクアセスメント対象物(※)を製造・取り扱う労働者を対象とする健康診断である。実施をするかどうかは、事業者がリスクアセスメントの結果等に基づいて判断することとなる。
※ リスクアセスメント対象物については、「「自律的な管理」の対象とその問題点」を参照して頂きたい。なお、令和4年5月 31 日基発 0531 第9号「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」(以下「施行通達」という。)には、「本規定の「必要があると認めるとき」に係る判断方法及び「医師又は歯科医師が必要と認める項目」は、別途示すところに留意する必要があること
」とされている。
一方、第4項(※)は、労働者が濃度基準値を超えてばく露したおそれがあるときに臨時に行うものである。これは、実施をするかどうを事業者が判断できるものではない。一定のばく露をした恐れがある場合は、必ず行わなければならないものである。
※ 施行通達には、「本規定の「医師又は歯科医師が必要と認める項目」は、別途示すところに留意する必要があること
」とされている。
なお、本条には、安衛法第 66 条第5項に当たる労働者の受診義務が定められていない(※)。その理由を厚労省は明らかにしていないが、事業者が実施を決定することになる健康診断に受診義務を定めることを憚ったものであろう。
※ 労働者の受診義務が定められていないことから、同条但書きに当たる労働者の医師選択の自由を認める条項もない。
(イ)ガイドラインの策定
リスクアセスメント対象物健康診断については、厚生労働省からガイドライン(※)が定められている。ガイドラインには、実施の要否の判断方法、実施頻度及び実施時期/検査項目、配置前・配置転換後の健康診断等が定められている。
※ リスクアセスメント対象物健康診断に関するガイドラインの策定について(令和5年10月17日)報道発表)
検査項目については、「濃度基準値がある物質の場合には濃度基準値の根拠となった一次文献における有害性情報(当該有害性情報は、厚生労働省ホームページに順次追加される「化学物質管理に係る専門家検討会 報告書」から入手可能)を参照することと。それに加えて、濃度基準値がない物質も含めてSDSに記載されたGHS分類に基づく有害性区分及び有害性情報を参照すること
」とされているのみである。
その他、いくつかの留意事項も書かれているが、実際に検査項目を決定できる医師の数は限られるのではないかという印象を受ける。日本医師会や産業医科大学が、今後、医師に対する研修を行ってゆくものと期待されるが、どのような運用になるかは気になるところである。
イ 安衛法上の根拠と罰則
改正後の安衛則第577条の2の第3項~第 10 項までの各項の、それぞれの安衛法上の根拠が第何条なのかについて、厚労省は明確には公表していない(※)。しかし、次に示すように条文の文理からは、安衛法に根拠がない(罰則無し)ものであると考えられる。
※ 省令と法律の根拠の関係についての詳細は「省令の義務規定と法律上の根拠条文」を参照して頂きたい。なお、労働調査会「安衛法便覧」(平成4年版)には、2022年5月までの改正条文は記載されているが、根拠条文については何も書かれていない。
【リスクアセスメント対象物健康診断の安衛法上の根拠】
「安衛則等を改正する省令」の前文には、改正される各条文の安衛法の根拠として第66条については第2項のみが挙げられている。従って、改正後の安衛則第577条の2の健康診断や措置は、安衛法第66条が根拠だと仮定すると、第2項以外ではありえない。
また、改正後の安衛則第577条の2第3項に「法第六十六条の規定による健康診断のほか」とされているので、同項で義務付けられた健康診断は、安衛法第 66 条を根拠とする義務ではない。
しかし、同項の健康診断を、あえて安衛法第 66 条以外の条文(第22条など)にしなければならない理由はない。にもかかわらず、安衛則第577条の2第3項が、安衛法第 66 条に根拠がないことを明記したのは、根拠のない条文であることを明らかにする趣旨だと考えるのが自然である。
この健康診断の実施の義務の有無は、医師の意見によって変わるものであり、このような不確定な要素がある義務に罰則を科すことは罪刑法定主義から難しい。このことから、根拠のない条文としたものと考えるのが自然である。
一方、改正後の安衛則第577条の2第4項の健康診断も、義務の内容から安衛法第 66 条第2項を根拠とするものではない(そもそも安衛法第 66 条第2項には「政令で定めるものに従事する労働者に対し」とされているが、政令に規定がないことから第2項の義務になり得ない)と考えられる。
すなわち、改正後の安衛則第577条の2第3項及び第4項の健康診断は、安衛法上の根拠のない義務であり、違反しても罰則はかからないと考えられる。
また、健康診断の記録の作成や、医師又は歯科医師の意見の聴取についても、健康診断そのものが安衛法第66条の健康診断ではないので、安衛法第66条の3や6条の4が根拠とならないことは条文から明らかである。
法律に根拠がない省令だとすれば、事業者には遵守すべき法律上の義務はなく、もちろん違反したとしても処罰を受けることはない。
しかし、省令に定められている以上、CSRの観点などから実施するべきである。法律に根拠がない条文だからと軽く考えてはならない。
また、化学物資を取り扱う場合における健康診断であるから、実施していなければ、災害が発生した場合には安全配慮義務違反として民事賠償請求を受ける可能性もある。
むしろ将来の訴訟リスクを回避するために、積極的に健康診断を実施して、その記録を残しておくべきであろう。
ウ 事業者が労働者に受診を義務付けることは可能か
事業者による労働者への健康診断受診命令の効果(従って違反者への処分の有効性)については、就業規則上の根拠の有無にかかわらず、合理的なものであれば有効とするのが判例である。
【受診命令をめぐる判例の状況】
- 安衛法第66条の健康診断については、労働者に医師選択の自由(第5項但書き)を認めているが、労働者にも受診義務を課している。従って、事業者は、第5項但書きの場合を除き、受診を拒否する労働者を、就業規則に基づき合理的な範囲で処分することも可能である(名古屋高判平成9年7月25日(愛知県教育委員会事件)など)。
- 就業規則に根拠のある法定外健診についても、最1小判昭和61年3月13日(電電公社帯広電報電話局事件)は、就業規則の規定が合理的なものであれば、それに基づく業務上の疾病についての受診命令について、労働者の受診の自由や医師選択の自由を理由として受診を拒否することは許されないとしている。
- 就業規則に根拠のない受診命令についても、東京高判昭和61年11月13日(京セラ事件)や東京地判平成3年3月22日(空港グランドサービス・日航事件)などは、合理的な理由がある場合については、健診命令を有効としている。
- なお、私傷病による病気休職からの職務復帰の際の受診命令について、大阪地判平成15年4月16日(大建工業事件)などは、これを有効とし、労働者の受診義務を認めている。ただし、この判例では、医師の人選又は診断結果に不満がある場合は争いうるとしている。
※ イメージ図(©photoAC)
法律に根拠のない省令で義務付けられた健康診断を法定外健診とみるか、法定健診とみるかは評価の分かれるところであろう。筆者(柳川)は、それが法律に根拠を持たない以上、法定外健診とするしかないと考える。
ただし、省令に定められた義務であることから、その実施につき合理性は認められることとなろう。
従って、特段の事情がない限り、事業者による労働者への受診命令は有効とされることが多いのではないかと思われる。そして、この健康診断が安衛法第66条第5項の適用がない以上、原則として医師選択の理由を根拠に受診の拒否をすることは認められないものと考える。
ただし、その事業者側の指定する健診機関が、事業者の有利な診断をするという合理的な疑いがあるような場合は、安衛法第 66 条第5項の趣旨から、労働者は自らが健康診断を受けて事業者の行う健康診断の受診を拒否することもできると解する余地はあろう。
(2)化学物質関連の特殊健康診断の回数(規制緩和)
有機溶剤、特定化学物質(特別管理物質等を除く。)、鉛、四アルキル鉛に関する特殊健康診断の実施頻度について、作業環境管理やばく露防止対策等が適切に実施されている場合には、事業者は、当該健康診断の実施頻度(通常は6月以内ごとに1回)を1年以内ごとに1回に緩和できることとなる(※)。
※ これは、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」(令和3年7月19日)において、「海外の動向調査によれば、有害物へのばく露の可能性がある労働者への健診は「1年~2年以内ごとに1回」が主流であり、「6カ月以内ごとに1回」のものは一部のものだけであったこと、近年の職場環境の改善や、業種・作業によっては取扱量が極めて少ない場合があるなど、ばく露が著しく低い労働者に対して、必要以上に健康診断が実施されている可能性があること等から、健康診断の実施頻度は、当該物質の危険性・有害性等や労働者のばく露の状況に応じて適切な頻度で実施する仕組みに見直すことが適当である
」とされたことを受けたものである。
次のすべての要件を満たす場合(区分1)、次回の健診は1年以内に行えばよい。それ以外の場合(区分2)は、これまで同様6月以内に行わなければならない。なお、この要件を満たすかどうかの判断は、事業場単位ではなく労働者ごとに行う。
【化学物質関連特殊健康診断緩和の要件】
- 労働者が作業する単位作業場所における直近3回の作業環境測定結果が第一管理区分に区分されたこと。(※ 四アルキル鉛を除く。)
- 直近3回の健康診断において、その労働者に新たな異常所見がないこと。
- 直近の健康診断実施日から、ばく露の程度に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと(※)
※ 施行通達には、「直近の健康診断実施後に、軽微なものを除き作業方法の変更がないこと
」とされている。
判断は行政が行うのではなく、事業者が行う。判断に当たって、事前や事後に行政に対して報告する必要もない(※)。なお、判断は、労働衛生に係る知識又は経験のある医師等の専門家の助言を踏まえて行うことが望ましいとされている。
※ 特殊健康診断を実施したことは労働基準監督署長へ報告する必要がある。なお、臨検監督などの際には、健康診断の頻度を1年にしたことが適切かどうかは調べられることになろう。
また、同一の作業場で作業内容が同じで、同程度のばく露があると考えられる労働者が複数いる場合は、その集団の全員が上記要件を満たしている場合に実施頻度を1年以内ごとに1回に見直すことが望ましい。
2 具体的な改正事項と留意事項
(1)リスクアセスメント対象物健康診断
ア 濃度基準を超えてばく露したおそれがあるときとは
改正安衛則第577条の2第4項には、「労働者が厚生労働大臣が定める濃度基準を超えてばく露したおそれがあるとき」に健康診断を行うこととされている。
これは、例えば、次のような場合が該当する。ばく露濃度の常時測定を求めるというような趣旨ではない。
【濃度基準を超えてばく露したおそれがあるときの例】
- リスクアセスメント対象物が漏えいした際に労働者が当該物質を大量に吸引したとき等明らかに濃度基準を超えるようなばく露があったと考えられる場合
- リスクアセスメントの結果に基づき講じたばく露防止措置(保護具の使用等)に不備があり、濃度基準を超えるようなばく露があったと考えられる場合
- 事業場における定期的な濃度測定の結果、濃度基準を超えていることが明らかになった場合
なお、対象となる化学物質は、厚生労働大臣が定める濃度基準が示される物質となる。その詳細は、今後の告示を待つしかない。
イ 健康診断の結果の記録の保存
リスクアセスメント対象物健康診断の記録は、電磁的記録に関する省令(※)が改正され、一般の定期健康診断などと同様に電子データによる保存も可能とされる。
※ 安衛法による健康診断の記録の保存は、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」第3条及び「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」第3条の規定により、電磁的記録とすることができる。
なお、記録の保存年限は原則として5年であるが、がん原性物質は 30 年保存(※)が必要となる。その対象は、今後、厚生労働大臣告示によって示されるが、以下のものが想定されている。
※ 30年間の保存義務は、労働者が転職・退職した場合のみならず、死亡した場合も短縮されない。なお、行政は、第三者機関による保存の仕組みを検討するとしている。
【記録の30年保存が必要ながん原性物質】
- GHS 分類で発がん性区分1の物質
- 安衛法第28条第3項の規定に基づく健康障害を防止するための指針の対象物質
ただし、将来の訴訟リスクを考えた場合、慢性毒性の確認されている物質についての健診の記録は永年保存とすることを強くお勧めする。職業性疾病の民事賠償請求の時効は、発症のときから進行する。30年を経過したからといって、訴えられるリスクがなくなるわけではない(※)からである。
※ 労働災害の民事賠償請求訴訟の時効については、本サイトの「2017年民法改正(消滅時効等)」を参照されたい。
(2)化学物質関連の特殊健康診断の回数(規制緩和)
ア 対象となる労働者(作業)
特殊健康診断の実施頻度緩和の規定の適用については、その業務を行う場所について、作業環境測定の実施及びその結果の評価が法令で規定されるもののみが対象とされている。
したがって、法令で作業環境測定の実施及びその結果の評価が義務付けられていない屋外作業場については、今回の特殊健康診断の実施頻度緩和の対象とはならないことに留意する必要がある。
イ 判断の基準となる作業環境測定等
特殊健康診断の実施頻度緩和について、作業環境測定の結果は第一管理区分が3回連続していること、健康診断の結果は3回連続異常所見があると認められないことが定められている。
これについては、施行日前に実施された作業環境測定の評価結果及び特殊健康診断の結果を含んで判断してかまわない。
ウ 特別規則が免除となる場合
また、特化則、有機則等について、化学物質管理の水準が一定以上であると所轄都道府県労働局長が認定した場合、特別則の個別規制の適用が除外される。この場合、作業環境測定の実施義務も免除されることとなる。
この場合に、特殊健康診断の実施頻度緩和を行うためには、作業場の作業環境が第一管理区分相当の水準を維持していることを何らかの手段で評価する必要がある。この具体的な評価方法等については、今後通達等で示されることとなる。
エ 「ばく露量に大きな影響を与えるような作業内容の変更」とは
特殊健康診断の実施頻度緩和の要件のひとつは「直近の健康診断実施日からばく露量に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと」とされている。これについても事業者側で判断することとなる。
「ばく露量に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと」については、特殊健康診断の実施対象業務に従事する労働者への当該物質のばく露リスクに変更がないということであり、事業者がこの要件を満たすかどうかの判断を行うに当たっては、労働衛生に係る知識又は経験のある医師等の専門家の助言を踏まえて判断することが望ましい。
具体的な考え方については、施行通達に「ばく露量に大きな影響を与えるような作業方法の変更がないことであり、例えば、リスクアセスメント対象物の使用量又は使用頻度に大きな変更がない場合等をいう
」と示されている。
3 最後に
以上、述べてきたことからは、リスクアセスメント対象物健康診断の、個々の事業場における運用は、きわめて難しいものと考えざるを得ない。罰則が付かない条文がどこまで遵守されるかということもあるが、難しいのはその実施すべき内容であろう。
詳細な実施事項等は、今後、厚生労省大臣告示や通達等で示されるだろうが、2,900種類(※)リスクアセスメント対象物のすべてについて、健康診断の必要性の判断基準や、健康診断の項目を設定することはかなりの困難を伴うだろう。
※ この種類の数は、あくまでも安衛令別表第9の号数である。ひとつの号が〇〇の化合物のような形で示されることもあり、また別表第9に支援された物質の水和物も含まれるので、実際の化学物質の数はこれよりもはるかに多い。
告示や通達にどの程度、具体的に定められるのかは分からないが、ある程度は、事業者の判断にゆだねる部分も出てこよう。その場合に、その部分を個々の事業者が行うことの困難性は想像に難くない。
そればかりか、告示や通達に示された内容を理解すること自体、少なくない事業者にとって困難なものになるだろう。
また、それを指導する側の地方行政当局の力量の向上も課題となるだろう。
この制度が今後、どのように運用されるのかについては、分からないが、適切な運用のための努力を関係者に望みたい。
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【参考】 関係条文
【労働安全衛生規則】
(衛生委員会の付議事項)
第22条 法第十八条第一項第四号の労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項には、次の事項が含まれるものとする。
一~十 (略)
十一 第五百七十七条の二第一項、第二項及び第八項の規定により講ずる措置に関すること並びに同条第三項及び第四項の医師又は歯科医師による健康診断の実施に関すること。
十二 (略)
(ばく露の程度の低減等)
第577条の2 (第1項及び第2項 略)
3 事業者は、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者に対し、法第六十六条の規定による健康診断のほか、リスクアセスメント対象物に係るリスクアセスメントの結果に基づき、関係労働者の意見を聴き、必要があると認めるときは、医師又は歯科医師が必要と認める項目について、医師又は歯科医師による健康診断を行わなければならない。
4 事業者は、第二項の業務に従事する労働者が、同項の厚生労働大臣が定める濃度の基準を超えてリスクアセスメント対象物にばく露したおそれがあるときは、速やかに、当該労働者に対し、医師又は歯科医師が必要と認める項目について、医師又は歯科医師による健康診断を行わなければならない。
5 事業者は、前二項の健康診断(以下この条において「リスクアセスメント対象物健康診断」という。)を行つたときは、リスクアセスメント対象物健康診断の結果に基づき、リスクアセスメント対象物健康診断個人票(様式第二十四号の二)を作成し、これを五年間(リスクアセスメント対象物健康診断に係るリスクアセスメント対象物ががん原性がある物として厚生労働大臣が定めるもの(以下「がん原性物質」という。)である場合は、三十年間)保存しなければならない。
6 事業者は、リスクアセスメント対象物健康診断の結果(リスクアセスメント対象物健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、次に定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
一 リスクアセスメント対象物健康診断が行われた日から三月以内に行うこと。
二 聴取した医師又は歯科医師の意見をリスクアセスメント対象物健康診断個人票に記載すること。
7 事業者は、医師又は歯科医師から、前項の意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供しなければならない。
8 事業者は、第六項の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、衛生委員会又は安全衛生委員会への当該医師又は歯科医師の意見の報告その他の適切な措置を講じなければならない。
9 事業者は、リスクアセスメント対象物健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、リスクアセスメント対象物健康診断の結果を通知しなければならない。
10 事業者は、第一項、第二項及び第八項の規定により講じた措置について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けなければならない。
11 事業者は、次に掲げる事項(第三号については、がん原性物質を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に限る。)について、一年を超えない期間ごとに一回、定期に、記録を作成し、当該記録を三年間(第二号(リスクアセスメント対象物ががん原性物質である場合に限る。)及び第三号については、三十年間)保存するとともに、第一号及び第四号の事項について、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。
一 第一項、第二項及び第八項の規定により講じた措置の状況
二~四 (略)
12 (略)
【特定化学物質障害予防規則】
(健康診断の実施)
第39条 (第1項~第3項 略)
4 第一項の業務(令第十六条第一項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)及び特別管理物質に係るものを除く。)が行われる場所について第三十六条の二第一項の規定による評価が行われ、かつ、次の各号のいずれにも該当するときは、当該業務に係る直近の連続した三回の第一項の健康診断(当該健康診断の結果に基づき、前項の健康診断を実施した場合については、同項の健康診断)の結果、新たに当該業務に係る特定化学物質による異常所見があると認められなかつた労働者については、当該業務に係る第一項の健康診断に係る別表第三の規定の適用については、同表中欄中「六月」とあるのは、「一年」とする。
一 当該業務を行う場所について、第三十六条の二第一項の規定による評価の結果、直近の評価を含めて連続して三回、第一管理区分に区分された(第二条の三第一項の規定により、当該場所について第三十六条の二第一項の規定が適用されない場合は、過去一年六月の間、当該場所の作業環境が同項の第一管理区分に相当する水準にある)こと。
二 当該業務について、直近の第一項の規定に基づく健康診断の実施後に作業方法を変更(軽微なものを除く。)していないこと。
5~7 (略)
(特定有機溶剤混合物に係る健康診断)
第41条の2 特定有機溶剤混合物に係る業務(第三十八条の八において準用する有機則第三条第一項の場合における同項の業務を除く。)については、有機則第二十九条(第一項、第三項、第四項及び第六項を除く。)から第三十条の三まで及び第三十一条の規定を準用する。
4 (略)
一 (略)
二 (略)
5~7 (略)
【有機溶剤中毒予防規則】
(健康診断)
第29条 (第1項~第5項 略)
6 第一項の業務が行われる場所について第二十八条の二第一項の規定による評価が行われ、かつ、次の各号のいずれにも該当するときは、当該業務に係る直近の連続した三回の第二項の健康診断(当該労働者について行われた当該連続した三回の健康診断に係る雇入れ、配置換え及び六月以内ごとの期間に関して第三項の健康診断が行われた場合においては、当該連続した三回の健康診断に係る雇入れ、配置換え及び六月以内ごとの期間に係る同項の健康診断を含む。)の結果(前項の規定により行われる項目に係るものを含む。)、新たに当該業務に係る有機溶剤による異常所見があると認められなかつた労働者については、第二項及び第三項の健康診断(定期のものに限る。)は、これらの規定にかかわらず、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。ただし、同項の健康診断を受けた者であつて、連続した三回の同項の健康診断を受けていない者については、この限りでない。
一 当該業務を行う場所について、第二十八条の二第一項の規定による評価の結果、直近の評価を含めて連続して三回、第一管理区分に区分された(第四条の二第一項の規定により、当該場所について第二十八条の二第一項の規定が適用されない場合は、過去一年六月の間、当該場所の作業環境が同項の第一管理区分に相当する水準にある)こと。
二 当該業務について、直近の第二項の規定に基づく健康診断の実施後に作業方法を変更(軽微なものを除く。)していないこと。
【鉛中毒予防規則】
(健康診断の実施)
第53条 (第1項~第3項 略)
4 第一項の業務(令別表第四第十七号及び第一条第五号リからルまでに掲げる鉛業務並びにこれらの業務を行う作業場所における清掃の業務を除く。)が行われる場所について第五十二条の二第一項の規定による評価が行われ、かつ、次の各号のいずれにも該当するときは、当該業務に係る直近の連続した三回の第一項の健康診断の結果(前項の規定により行われる項目に係るものを含む。)、新たに当該業務に係る鉛による異常所見があると認められなかつた労働者については、第一項の健康診断(定期のものに限る。)は、同項の規定にかかわらず、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。
一 当該業務を行う場所について、第五十二条の二第一項の規定による評価の結果、直近の評価を含めて連続して三回、第一管理区分に区分された(第三条の二第一項の規定により、当該場所について第五十二条の二第一項の規定が適用されない場合は、過去一年六月の間、当該場所の作業環境が同項の第一管理区分に相当する水準にある)こと。
二 当該業務について、直近の第一項の規定に基づく健康診断の実施後に作業方法を変更(軽微なものを除く。)していないこと。
【四アルキル鉛中毒予防規則】
(健康診断)
第22条 (第1項~第3項 略)
4 第一項の業務について、直近の同項の規定に基づく健康診断の実施後に作業方法を変更(軽微なものを除く。)していないときは、当該業務に係る直近の連続した三回の同項の健康診断の結果(前項の規定により行われる項目に係るものを含む。)、新たに当該業務に係る四アルキル鉛による異常所見があると認められなかつた労働者については、第一項の健康診断(定期のものに限る。)は、同項の規定にかかわらず、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。