※ イメージ図(©photoAC)
2021年7月に厚労省は、自律的な化学物質管理制度の導入に向けた「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」を公表しました。
これに基づく2022年5月の改正安衛則には、化学物質管理者、保護具着用管理責任者、化学物質管理専門家、及び、作業環境管理専門家という4種類の管理者と専門家が規定されています。
本稿では、このうち化学物質管理者の選任の要件、実施するべき職務、留意するべき事項等について解説します。
- 1 はじめに
- (1)「自律的な管理」を一言で表現すると
- (2)これまでの経緯
- 2 化学物質管理者の制度の概要
- (1)化学物質管理者を規定する新しい条文
- (2)選任にかかる留意事項
- (3)実施させるべき職務
- (4)化学物質管理者の要件
- 3 最後に
- 参考 関係条文
1 はじめに
(1)「自律的な管理」を一言で表現すると
執筆日時:
最終改訂:
※ イメージ図(©photoAC)
2021年7月に厚労省から「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」(以下「あり方報告書」という。)が公表された。これに基づき、2022年2月24日に改正安衛令等が公布され、5月31日には改正安衛則等が公布されている。
その内容をごく単純に要約すれば、次の3点にまとめることができる。本稿では、このうち②の管理体制に必要な管理者・専門家のうち、化学物質管理者について解説する。
- ① 従来の表示・SDS制度やリスクアセスメント制度の整備(強化)を図る。
- ② 上記の確実な実施を確保するため、事業場内の管理体制を整備する。
- ③ ①の対象物を大幅に増加する。
2022年5月の改正安衛則には、化学物質管理者、保護具着用管理責任者(※)、化学物質管理専門家、及び、作業環境管理専門家という4種類の管理者と専門家が規定されている。これらの選任の要件はそれほど厳しいものではなく、該当する者を確保することはそれほど難しいことではない。
※ 保護具着用管理責任者の選任を義務付ける条文は安衛則の第1編第2章の安全衛生管理体制と、特別規則の作業環境測定結果の評価の部分の2パターンがある。これらは選任の要件等も異なっており、実質的には別な管理者(兼任することは問題ない。)だと考えられる。
問題は、職場の化学物質管理についてかなりの知識がなければ法定の職務は遂行できないと思われることである。就任の要件のハードルは低いが、業務が高度過ぎるのだ。
少なくとも、化学物質のリスクアセスメントの実施とその結果に応じた対策の選択と実施、適切な化学物質用の保護具の選択・正しい着用の教育・適切な管理等が彼らの職務となる。かなりの知識がなければ実施することは困難であろう。
(2)これまでの経緯
法令によって新しい義務を課す場合、その前に通達等によって指導を行い、ある程度の事業場にそれが根付いてから行うことが多い。
実は、化学物質管理者と保護具着用管理責任者については、これまでも告示や通達等でその選任が指導されていたのである。しかし、必ずしも効果を上げているとは言い難い状況であった。
管理者 | 指導の根拠 | |
---|---|---|
1 | 化学物質管理者 | 平成27年9月18日危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」 |
2 | 保護具着用管理責任者 | 平成29年1月12日基発0112第6号「化学防護手袋の選択、使用等について」 |
3 | 保護具着用管理責任者 | 平成17年2月7日基発第0207007号「防毒マスクの選択、使用等について」 |
4 | 保護具着用管理責任者 | 平成17年2月7日基発第0207006号「防じんマスクの選択、使用等について」 |
※ 厚生労働省は、今回の省令改正についてのパブリックコメントへの回答の中で「『化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針』(平成27年9月18日付け指針公示第3号)において『化学物質管理者』を指名し、その者にリスクアセスメント等に関する技術的業務を行わせることが望ましいこととしていますが、本改正は、当該指針上の『化学物質管理者』の選任を義務化するものであり
」、「保護具着用管理責任者とは、平成17年2月7日付け基発第 0207006 号『防じんマスクの選択、使用等について』等により示されている衛生管理者、作業主任者等の資格を有する等保護具についての知識及び経験を有する者とし、具体的には施行通達においてお示ししております。
」などとしている。
すなわち、今回の改正による化学物質管理者及び保護具着用管理責任者は、これらの通達等によって示されているものの「法律版」であるという位置づけなのである。
それらが効果を上げてこなかった最大の理由は単純なことである。ひとつには指導レベルだったので、事業者が本気にならなかったということもある。しかし、それよりも決定的な要因は、一部の大規模事業場を除けば、そのような業務ができる専門的な知識を持った者が事業場にいなかったのである。
ところが、今回の安衛則改正では、罰則付きの強行規定となっている(※)。しかし、法令で強制されたからといって、どこかから専門的な知識がわいてくるわけではない。
※ 化学物質管理者の選任規定の、安衛法上の根拠条文は厚生労働省の公式文書では公表されていない。しかし、信頼できる筋からの情報によると、安衛法第22条第1号が根拠条文となるとのことである。従って、罰則は6月以下の懲役又は 50 万円以下の罰金(第119条第1号)となる。
なお、根拠条文について、厚生労働省の化学物質対策課へもメールで問合せをしたが回答はなかった。詳細は、「省令の義務規定と法律上の根拠条文」を参照して頂きたい。
さて、どうするべきだろうか。
2 化学物質管理者の制度の概要
(1)化学物質管理者を規定する新しい条文
※ イメージ図(©photoAC)
化学物質管理者については、改正安衛則では第1編通則の第2章安全衛生管理体制に新たに「第3節の3化学物質管理者及び保護具着用管理責任者」という節を設け、その中の新たな第12条の5に規定している。
第12条の5の条文はかなり長いので本稿の末尾に示した。第1項の柱書は分かりにくいので要約すると次のようになる。
【安衛則:新第12条の5第1項柱書の要約】
- 事業者は、リスクアセスメント対象物(※)を製造し、又は取り扱う事業場ごとに、化学物質管理者を選任して次の各号に掲げる化学物質の管理に係る技術的事項を管理させなければならない。
- ただし、ラベルの表示(表示する事項及び標章に関することに限る。)等、SDSの交付(通知する事項に関することに限る。)及び労働者への教育管理(ラベル表示等に係るもの)を、他の事業場で行っている場合は、それらの技術的事項については、その(他の)事業場において選任した化学物質管理者に管理させなければならない。
※ リスクアセスメント対象物については当サイトの「「自律的な管理」の対象とその問題点」を参照されたい。
要は、今後、安衛令別表第9に指定される約 2,900 種類のリスクアセスメント対象物を製造し又は取り扱う事業場では、化学物質管理者を選任して一定の事項を行わせる必要があるということである。
本条は、人数や業種での限定はなく、事業場内でリスクアセスメント対象物を取り扱う作業が存在すれば、中小規模の商店(※)などでも化学物質管理者を選任する必要がある。また、リスクアセスメント対象物を取り扱う作業工程が密閉化、自動化等されていることにより、労働者が当該物にばく露するおそれがない場合であっても同様である。
※ リスクアセスメント対象物には、主に一般消費者の生活の用に供される製品は含まない。また、物流センター等で、密閉された状態の製品を保管するだけで、容器の開閉等を行わないのであれば、リスクアセスメント対象物を取り扱う事業場には該当しない。
なお、本条には「専任」についての規定はないので、化学物質管理者が、化学物質管理者の職務を適切に行える範囲であれば、大規模な事業場であっても他の職務と兼務することは差し支えない。
また、同一事業場内で複数人を選任することは違反とはならない。ただし、業務に抜けが発生しないよう、業務を分担する化学物質管理者間で十分な連携を図る必要がある。
(2)選任にかかる留意事項
ア 選任は事業場の職員から行うべきか
第12条の5第1項の条文には、「専属」に関する規定はない。従って、事業場ごとに選任されていれば、法令上は、外部のコンサルタントや他の事業場の者を選任することも可能である。
しかし、厚生労働省は、今回の省令改正についてのパブリックコメントへの回答の中で化学物質管理者について、次のように述べている。
番号 | 御意見の要旨 | 御意見に対する考え方 |
---|---|---|
80 | 中小企業の場合には外部の専門家等に化学物質管理者の業務を委託することが可能か。 | 化学物質管理者の選任に当たって、法令上雇用形態を限定していませんが、化学物質管理者が実施すべき業務に必要な権限を付与する必要があることから、原則は事業場内の労働者から選任されることを想定しています。 |
81 | 会社組織として一体であっても場所が異なれば別の管理者を置く必要があるか。 例えば、工場組織としては同じ組織内だが、他府県に所在する工場がある場合、化学物質管理者としては会社で定める工場組織の枠内では一名でもよいこととなるか。こういった立地する製造現場や化学物質取扱所などの施設を統括する会社組織が有る場合、指揮命令系統の統一性を持たせるため化学物質管理者は1名でも良いことを認めていただきたい。 |
化学物質管理者は、事業場ごとに選任する必要があります。また、化学物質管理者がその職務を適切に遂行する観点から、各事業場内の労働者から選任されることを想定しています。なお、各事業場の化学物質管理者を統括管理する者を社内の役職として設けることは差し支えありません。 |
※ 赤文字強調は引用者による。
確かに、次項に述べるように化学物質管理者の職務は広範囲にわたる。そのため、事業場外の専門家では、やや難しい面があろう。
また、衛生工学衛生管理者や専任の衛生管理者を選任しなければならないような事業場では、衛生工学衛生管理者や衛生コンサルタントの資格のある者を化学物質管理者として選任し、実質的に専任させなければ職務が全うできない場合も出てこよう。
なお、零細規模の事業場を除けば、事業場のトップを選任することも避けるべきであろう。ある程度の業務量をかける必要があるため、事業場のトップでは実施が困難になると思われる。
イ 建設現場の場合
建設工事現場などの有期工事についても、化学物質管理者は店社等の事業場単位で選任する必要がある。
ただし、元方事業者については、元方事業者の労働者がリスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱わない場合、建設現場に化学物質管理者の選任を行う必要はない(※)。
※ 本社や支店等についても、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱わないのであれば、選任を行う必要はない。
また、関係請負人の労働者が、建設現場において工事期間のみ塗装を行うような場合は「出張先での作業」と位置付けられ、その建設現場に化学物質管理者の選任を行う必要はない(※)。
※ 作業を行う労働者の所属する事業場において化学物質管理者を選任し、その者に現場の化学物質管理を行わせる必要がある。
(3)実施させるべき職務
化学物質管理者に実施させるべき職務は、新安衛則第12条の5第1項各号に次のように示されている。
【化学物質管理者に実施させるべき職務】
- 譲渡・提供する化学物質のラベル(表示)及びSDS(文書)等に関すること。
- リスクアセスメントの実施に関すること。
- 濃度基準値が設定される物質のばく露の程度の低減、健康診断の実施等の措置、その他リスクアセスメントの結果に基づく措置の実施に関すること。
- リスクアセスメント対象物を原因とする労働災害が発生した場合の対応に関すること。
- リスクアセスメントの結果の記録の作成及び保存並びにその周知に関すること。
- リスクアセスメントの結果等に基づき事業者が講じた措置の状況等の各種の記録の作成及び保存並びにその周知に関すること。
- 以上の事項の管理を実施するに当たっての労働者に対する必要な教育に関すること。
もちろん、化学物質管理者に求められる業務は、例えば化学物質のラベル・ SDS の作成等を「管理」することであって、作成等の業務を自らが直接行わなければならないという趣旨ではない。これらの業務は、直接の担当者が行い、化学物質管理者はその業務を管理することになる。
また、化学物質管理者は前述したように事業場ごとに選任する必要があるが、SDS の作成と化学物質の取り扱いを別の事業場で行っている場合は、それぞれの事業場において選任された化学物質管理者が、それぞれの事業場の業務内容に応じた業務管理を行えばよい。
(4)化学物質管理者の要件
化学物質管理者になるためには、とくに法令上の資格は必要はない。新安衛則第12条の5第3項に次のような定めがあるだけである。
【化学物質管理者の選任の要件】
- リスクアセスメント対象物を製造している事業場
- 厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習を修了した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者
- 上記に掲げる事業場以外の事業場
- 上記に定める者のほか、第一項各号の事項を担当するために必要な能力を有すると認められる者
要は、リスクアセスメント対象物を製造している事業場では、一定の講習を受けていればよく、それ以外の事業場では誰でも構わない(※)のである。
※ 後述するように、講習を受講することが推奨されている。
なお、上記にいう製造には混合物の製造が含まれる。すなわち、譲渡提供を目的として原料を混合するだけの事業場(※)も含まれるので留意されたい。
※ これについては、「化学物質による労働災害防止のための新たな規制(中略)に関するQ&A(令和5年3月31日掲載)」の2-1-4には、「譲渡提供を目的として、混合や精製など、化学品の組成の変更を伴う作業を行う事業場は製造事業場に該当する(下線強調は引用者)
」とされている。
この講習については、令和4年5月 31 日基発 0531 第9号「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」は、次のように述べる。
(2)安衛則第12条の5第3項関係
ア 本項第2号イの「厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習」は、厚生労働大臣が定める科目について、自ら講習を行えば足りるが、他の事業者の実施する講習を受講させることも差し支えないこと。また、「これと同等以上の能力を有すると認められる者」については、本項第2号イの厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習に係る告示と併せて、おって示すこととすること。
イ 本項第2号ロの「必要な能力を有すると認められる者」とは、安衛則第12条の5第1項各号の事項に定める業務の経験がある者が含まれること。また、適切に業務を行うために、別途示す講習等を受講することが望ましいこと。
※ 令和4年5月 31 日基発 0531 第9号「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」
分かりやすく言えば、この講習は誰が実施してもかまわないのである。これは、安衛法上の特別教育も同様であるが、特別教育の場合は中小企業では外部の教育機関が実施する教育を受けることが多い。化学物質管理者講習も同じ容易になると思われる。
この講習についての具体的な内容は、「令和4年9月7日厚生労働省告示第276号」に定められている。概略は次のようなものである。(なお、参考までにパブコメの結果にリンクを張っておく。)
科目 | 時間 |
---|---|
化学物質の危険性及び有害性並びに表示等 | 2時間 30 分 |
化学物質の危険性又は有害性等の調査 | 3時間 |
化学物質の危険性又は有害性等の調査の結果に基づく措置等その他必要な記録等 | 2時間 |
化学物質を原因とする災害発生時の対応 | 30 分 |
関係法令 | 1時間 |
科目 | 時間 |
---|---|
化学物質の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置等 | 3時間 |
学科と実習を合わせて 12 時間の講習である。修了試験もない。ほとんどの企業が対象になる講習で、受講生は化学物質に関する素養がないケースがほとんどであろう。
わずか 12 時間の講習を受けたからといって、SDSがきちんと理解できるようになったり、意味のあるような形でリスクアセスメントができるようになるとは思えない。
また、講習を実施できる機関がそれほどあるとも思えないのである。やたらに高度な話をされても受講者には理解できないだろうし、逆に低レベルな講義をされても役には立たないのである。適切なレベル・内容の話を分かりやすく伝えることができる教育機関がどれほどあるのだろうか。
化学物質の自律的な管理の制度が根付くためには、化学物質管理者の知識レベルと、やる気と、企業内で実質的な権限が付与されるかどうかに関わっているだろう。
やや不安を感じざるを得ない。
3 最後に
冒頭にも述べたように、化学物質管理者の要件は2日程度の講習を受ければよいのであるから、選任そのものは中小零細企業でも難しいことではない(※)。
※ 講習会を行う教育機関の数が十分にあればの話ではあるが。
しかし、化学物質管理者が適切にその職務を実施できるかは、また別な話である。わずか2日程度の講習(※)を受けさえすれば、SDSが正確に読めるようになり、化学物質のリスクアセスメントが適格に行えるようになると信じている者はほとんどいないだろう。
※ その講習が適切に行われたとしてもである。場合によっては、講習そのものが不適切に行われる可能性もあろう。講師の要件さえ定められてはいないのだ。
自律的な管理においては、形だけ法律を守っていればよいと考えるべきではない。化学物質管理者が、適切に業務を行えるようにするために、その能力向上のために必要なコストをかけるという意識が必要である。
本サイトの「リスクアセスメントと判例」にも示したが、有害性のある化学物質を不適切に用いて災害が発生すれば多額の賠償金を請求されることもあるのだ。
事業者は、「自律的な管理」の「自律」の意味を自らに問う必要があるだろう。最後にこれだけを言っておきたい。
- 化学物質管理者について、「法違反にならないためにはどういう要件の者を選任すればよいのだろう」と事業者が考えるようなら「自律的な管理」は確実に失敗するだろう。
- 自律的な管理が成功するには、「災害を起こさないために、化学物質管理者はどのような知識が必要だろう、またそのような知識を付与するためにはどうしたらいいのだろう」と考えるようでなければならない。
事業者の関心が「どうすれば違反にならないか」ということにあるなら、それは自律的な管理という思想から反対の方向にあり、ブラックジョークでしかない。
【関連コンテンツ】
化学物質の「自律的な管理」概説
化学物質の「自律的な管理」について概略を解説しています。
化学物質管理者講習の効果的活用
化学物質管理者の養成講習を適切に実施・活用するために、何が必要かをその背景を含めて詳細に解説します。
保護具着用管理責任者選任の留意事項
化学物質の「自律的な管理」における保護具着用管理責任者選任の留意事項について解説しています。
リスクアセスメント対象物とは何か
化学物質の「自律的な管理」のリスクアセスメント対象物について解説しています。
省令の義務規定と法律上の根拠条文
省令の規定と法律上の根拠条文の関係の他、化学物質管理者等選任の根拠条文等について解説しています。
参考 関連条文
【労働安全衛生規則】
(化学物質管理者が管理する事項等)
第12条の5 事業者は、法第五十七条の三第一項の危険性又は有害性等の調査(主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るものを除く。以下「リスクアセスメント」という。)をしなければならない令第十八条各号に掲げる物及び法第五十七条の二第一項に規定する通知対象物(以下「リスクアセスメント対象物」という。)を製造し、又は取り扱う事業場ごとに、化学物質管理者を選任し、その者に当該事業場における次に掲げる化学物質の管理に係る技術的事項を管理させなければならない。ただし、法第五十七条第一項の規定による表示(表示する事項及び標章に関することに限る。)、同条第二項の規定による文書の交付及び法第五十七条の二第一項の規定による通知(通知する事項に関することに限る。)(以下この条において「表示等」という。)並びに第七号に掲げる事項(表示等に係るものに限る。以下この条において「教育管理」という。)を、当該事業場以外の事業場(以下この項において「他の事業場」という。)において行つている場合においては、表示等及び教育管理に係る技術的事項については、他の事業場において選任した化学物質管理者に管理させなければならない。
一 法第五十七条第一項の規定による表示、同条第二項の規定による文書及び法第五十七条の二第一項の規定による通知に関すること。
二 リスクアセスメントの実施に関すること。
三 第五百七十七条の二第一項及び第二項の措置その他法第五十七条の三第二項の措置の内容及びその実施に関すること。
四 リスクアセスメント対象物を原因とする労働災害が発生した場合の対応に関すること。
五 第三十四条の二の八第一項各号の規定によるリスクアセスメントの結果の記録の作成及び保存並びにその周知に関すること。
六 第五百七十七条の二第十一項の規定による記録の作成及び保存並びにその周知に関すること。
七 第一号から第四号までの事項の管理を実施するに当たつての労働者に対する必要な教育に関すること。
2 事業者は、リスクアセスメント対象物の譲渡又は提供を行う事業場(前項のリスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場を除く。)ごとに、化学物質管理者を選任し、その者に当該事業場における表示等及び教育管理に係る技術的事項を管理させなければならない。ただし、表示等及び教育管理を、当該事業場以外の事業場(以下この項において「他の事業場」という。)において行つている場合においては、表示等及び教育管理に係る技術的事項については、他の事業場において選任した化学物質管理者に管理させなければならない。
3 前二項の規定による化学物質管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 化学物質管理者を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。
二 次に掲げる事業場の区分に応じ、それぞれに掲げる者のうちから選任すること。
イ リスクアセスメント対象物を製造している事業場厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習を修了した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者
ロ イに掲げる事業場以外の事業場イに定める者のほか、第一項各号の事項を担当するために必要な能力を有すると認められる者
4 事業者は、化学物質管理者を選任したときは、当該化学物質管理者に対し、第一項各号に掲げる事項をなし得る権限を与えなければならない。
5 事業者は、化学物質管理者を選任したときは、当該化学物質管理者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示すること等により関係労働者に周知させなければならない。