18歳未満の者の技能講習受講の可否




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基本方針

※ イメージ図(©photoAC)

労働基準法(年少者労働基準規則)では、18歳未満の者について、クレーンの運転等の業務を禁止しています。一方、これらの業務の多くは、免許、技能講習等の資格がなければ行うことができません。

このため、18歳未満の者がこれらの資格を取得しても、実際に業務を行うことはできません。このため、18歳未満の者は技能講習の受講そのものができないのではないかという疑問を持たれる方がいるようです。この疑問について解説します。

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1 はじめに

執筆日時:


(1)18歳未満の年少者の技能講習の受講等の可否

指でバツ印を作る女性

※ イメージ図(©photoAC)

労働基準法(労基法)は、18歳未満の年少者の労働者を保護する観点から、一定の危険・有害な業務については、年少者に行わせることを禁止しています。

一方、これらの業務の多くは安全衛生法(安衛法)によって、免許や技能講習修了等の資格がなければ行ってはならないこととされています。そのため、年少者はこれらの資格を取ることもできないのではないかという疑問があるようです。

本稿では、そのような疑問に答えます。


(2)年少者に行わせてはならない業務

労基法第62条によって年少者に行わせてはならない業務は、年少者労働基準規則(年少則)第8条に定められています。

このうち、安衛法第61条で、資格がないと行ってはならないとされている就業制限業務は安衛令第20条に定められていますが、年少者に関するものの例としては、以下のもの(※)があります。

※ 左欄の「号」の欄は年少則第8条の号番号であり、「該当する就業制限業務」の欄の末尾のカッコ書きは安衛令第20条の号番号である。

年少者が禁止
される業務
該当する
就業制限業務
資格
ボイラー(小型ボイラーを除く。)の取扱いの業務 ボイラー(小型ボイラーを除く。)の取扱いの業務(3号) 免許・
技能講習
ボイラー(小型ボイラーを除く。)の溶接の業務 ボイラー(小型ボイラーを除く。)の溶接(自動溶接等を除く。)の業務(4号) 免許
クレーン、デリック又は揚貨装置の運転の業務 つり上げ荷重が5トン以上のクレーン(跨こ線テルハを除く。)の運転の業務(6号) 免許・
技能講習
つり上げ荷重が1トン以上の移動式クレーンの運転の業務(7号) 免許・
技能講習
つり上げ荷重が五トン以上のデリツクの運転の業務(8号) 免許
制限荷重が五トン以上の揚貨装置の運転の業務(2号) 免許
動力により駆動される運搬機の運転の業務 最大荷重が1トン以上のフオークリフトの運転の業務(11号) 技能講習
最大荷重が1トン以上のショベルローダーの運転の業務(13号) 技能講習
最大積載量が一トン以上の不整地運搬車の運転の業務(14号) 技能講習
12 動力により駆動される土木建築用機械の運転の業務 作業床の高さが十メートル以上の高所作業車の運転の業務(15号) 技能講習
機体重量が三トン以上の移動式建設機械(整地・運搬・積込み用機械)又は移動式建設機械(解体用機械)の運転の業務(12号) 技能講習
28 火薬、爆薬又は火工品を製造し、又は取り扱う業務で、爆発のおそれのあるもの 発破の場合におけるせん孔、装てん、結線、点火並びに不発の装薬又は残薬の点検及び処理の業務(1号) 免許
29 可燃性のガスを取り扱う業務で、爆発、発火又は引火のおそれのあるもの 可燃性ガス及び酸素を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の業務(10号) 免許・
技能講習
38 異常気圧下における業務 潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務(9号) 免許

※ 免許、技能講習の他にもこれらの作業を行える資格がある場合がある。運転の業務は道路を走行する業務を除く。

これらの業務については、18歳未満の年少者に従事させてはならないことはもちろんです。また、安衛法で定める就業制限業務に該当すれば年齢にかかわらず、一定の資格(免許、技能講習等)が必要となります。


(3)「資格の取得」は「業務への従事」とは別

ただ、資格を取るということと、業務に従事するということは別なことです。18歳未満の者であっても、とくに禁止されていない限り、業務に従事しさえしなければ資格を取ることに問題はありません。

鞄を持って元気に歩く女子高生

※ イメージ図(©photoAC)

むしろ、中卒で働いている方が18歳になったらすぐに就業制限業務に就きたいということはあるでしょう。また、高校生が、卒業する前に資格を取って、建設会社に有利な就職をしたいということもあるかもしれません。

18歳未満の年少者が、このような希望を持つことは、むしろ好ましいことだともいえます。

18歳未満の年少者に資格を付与すると違法な就労を助長すると考える事業主もいるかもしれません。しかし、18歳未満の年少者が誤って無資格で業務に従事しないよう、正しい知識を付与するために資格を取らせるという考え方もあると思います。

では、資格取得に関して、法令による年齢制限の規定の有無について解説します。


2 18歳未満の者には資格は取れないのか

(1)免許と技能講習

ア 免許制度と年齢制限

ガッツポーズをする若い作業服の女性

※ イメージ図(©photoAC)

まず、免許についてですが、実は免許について定める安衛法は免許試験の受験資格として年齢制限は設けていません。従って、免許試験を受けることは可能です。

しかし、満18歳(※)に満たない者には免許証は交付されないこととされていますので、試験に合格しても満18歳になるまで免許申請をすることはできません。もちろん、18 歳になった後は、いつでも免許申請をすれば免許が与えられます。

※ 作業主任者もほぼ同様ですが、高圧室内作業主任者の年齢制限だけは満 20 歳となっています。

なお、免許証を交付しないという安衛法の根拠ですが、第72条第2項に、免許を与えない者についての定めがあり、安衛則やクレーン則などで満 18 歳に満たない者には免許を与えないとされています。

【労働安全衛生法】

(免許)

第72条 第十二条第一項、第十四条又は第六十一条第一項の免許(以下「免許」という。)は、第七十五条第一項の免許試験に合格した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者に対し、免許証を交付して行う。

 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えない。

 (略)

 前号に掲げる者のほか、免許の種類に応じて、厚生労働省令で定める者

3及び4 (略)

【安全衛生規則】

(免許の欠格事項)

第63条 (前略)発破技士免許又は揚貨装置運転士免許に係る法第七十二条第二項第二号の厚生労働省令で定める者は、満十八歳に満たない者とする。

【クレーン等安全規則】

(免許の欠格事項)

第224条 クレーン・デリック運転士免許に係る法第七十二条第二項第二号の厚生労働省令で定める者は、満十八歳に満たない者とする。

(免許の欠格事項)

第230条 移動式クレーン運転士免許に係る法第七十二条第二項第二号の厚生労働省令で定める者は、満十八歳に満たない者とする。

すなわち、免許試験については受験はできますが、免許は与えられませんので合格しても18歳まで資格は付与されないこととなります。では、資格を取っても意味がないと思われるかもしれませんが、試験に合格したという事実は就職活動のための履歴書に書けますし、現に働いていれば会社に対して伝えることも可能です。

満 18 歳になってから職業能力の幅を広げるためにも、若いうちから受験することは大きな意義があることなのです。

イ 技能講習と年齢制限

技能講習については、免許と異なり実施機関は民間の登録教習機関が行っています。そのため、登録教習機関によって扱いが異なることがあります。

法的には、満 18 歳未満であっても、受講することは禁止されていません(※)し、技能講習修了証を受けることも可能です。すなわち、免許と異なり資格を取得することは可能なのですが、資格を取得しても満 18 歳まで業務を行うことができないことは同じです。

※ 小学生など極端に若い者が受講を希望した場合は、本人や他の受講生の安全が確保できないので受講を断られると思います。

もちろん、満 18 歳未満で受講していれば、満 18 歳になると同時にその業務を行うことができます。

ところが、登録教習機関によって満 18 歳未満の受講生の扱いが微妙に異なっているのです。実務では、次のように扱いが分かれているようです。

【登録教習機関による年少者の扱い】

  • 満 18 歳になるまで技能講習の受講を拒否する。
  • 満 18 歳未満でも受講させるが、満 18 歳になるまで修了証を付与しない。
  • 満 18 歳未満でも受講させるが、修了証は本人ではなく学校又は家族に交付する。
  • 満 18 歳未満でも受講させ、修了証に満 18 歳まで業務ができない旨を注記して本人に交付する。
  • 満 18 歳未満でも受講させ、通常の修了証を本人に交付するが、満 18 歳まで業務ができないことを口頭などで徹底する。

実を言えば、これらはいずれも都道府県労働局が認めていることです。従って、いずれの場合も違法という扱いはされていないようです。

従って、満 18 歳になるまでに技能講習を受講したいのであれば、受け入れてくれる登録教習機関を利用するしかありません。ただ、18歳未満の者の受講を認めないという機関は少数派です。

ウ 特別教育と年齢制限

ガッツポーズをする若い作業服の女性

※ イメージ図(©photoAC)

なお、特別教育についても同様な問題が起こり得ますが、特別教育は教育であって資格ではないのですから、18歳未満の者が受講してはならないなどということがあるわけがありません。

当然ながら、特別教育を受講することに何の問題もありませんが、18 歳未満の年少者に禁止されている業務を行わせてはならないことも当然です(※)

※ なお、外部の教育機関によっては、違法な就労を助長するという考えから満 18 歳未満の年少者の受講を認めていない場合があります。

仕事を行わせないことを徹底しつつ、教育を行うことは好ましいことであって、それをよくないとする法的な理由はありません。


(2)18歳未満で資格に挑戦する意義

満 18 歳未満で資格を取ることは、将来の仕事の幅が広がることであり、より高い収入にもつながることでもあります。また、若いうちから資格を取ることで、安全についての意識づけや知識が得られるため、災害の減少にも寄与します。

満 18 歳未満の者に行わせることが禁止されている職務なので、18 歳になるまで資格を取ることを好ましくないと考える人もいるようです。しかし、免許や技能講習は安全な作業ができるようになるための制度ですから、資格を取ること自体はむしろ好ましいことです(※)

※ 当然のことですが、満 18 歳になるまで業務を行ってはなりません。


3 まとめ

結論としては、免許も技能講習も満 18 歳未満でも受験や受講はできるし、技能講習は修了による資格取得も可能ということです。

法的な根拠はと聞かれれば、法令で禁止されていないからとしか言いようがありません。現実の実務での取り扱いもそのようになっているのです。もちろん、繰り返しになりますが、満 18 歳になるまで業務に就くことはできません。

しかし、若いうちに資格を取っておくことは、将来の職業の幅を広げることにもなり、また、安全にも役立つことです。免許試験の受験や、技能講習の受講は好ましいことだと言えるでしょう。





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