第2種衛生管理者試験 2025年10月公表 問19

労働衛生関連統計の知識




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年10月公表問題 問19 難易度 労働衛生関連の統計に関する知識は過去問でも頻出。ほぼ過去問の通りだが、変形させたものもある。
労働衛生関連統計

問19 労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、これは発生率と同じ意味で用いられる。

(2)集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。

(3)ばらつきをもって分布するデータの代表値として、平均値、中央値などがあるが、どの代表値を選択するかは、データの内容と分布による。

(4)ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。

(5)病休度数率は、在籍労働者の延べ実労働時間数100万時間当たりの疾病休業件数で示される。

正答(1)

【解説】

労働衛生管理に用いられる統計に関する問題は、最初は 2018 年4月公表問題で示され、その後、6回は示されていなかった。ところが、2021年10月公表問題から 2023 年10月公表問題まで、毎回、示されてた。その後、2回連続で示されなかったが、2025年4月以降は、連続で示された。このような傾向は、今後も続くと思われる。

なお、選択肢は、最近は過去の公表問題とほぼ同じものが出題される傾向があり、今回は、(4)が若干、ひねってあるがすべて過去問と同じ肢である。

(1)誤り。ある時点での検査における有所見者の出現割合を有所見率といい、一定期間に有所見とされた者の割合を発生率としている。この2つは異なる概念である。

(2)正しい。正しい。平均値が正常値の場合、分散がゼロであればそのグループはすべてが正常値であるが、分散が大きければ異常なケースが存在している可能性がある。分散が異なれば、異なった特徴をもつ集団であると評価しなければならない。

(3)正しい。ばらつきをもって分布するデータの代表値としては、本肢に示された平均値(Mean)、中央値(Median)の他に最頻値(Mode)などもある。労働時間や賃金の分布では、大きい方から平均値、中央値、最頻値の順となることが一般的である。

どの代表値を選択するかは、データの内容と分布によることになる。

  • 平均値:平均値(Mean:単純算術平均)は、すべてのサンプルの値の合計をサンプル数で除した値である。
  • 中央値:中央値(Median)は、すべてのサンプルをデータの大きさ等の順に並べたときに中央になるサンプルのデータである。サンプル数が偶数のときは、中央の2つのサンプルのデータの平均値とする。
  • 最頻値:最頻値(Mode)は、各サンプルのデータのうち、もっとも多く現れるデータである。

(4)正しい。ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められても、たまたま(偶然)ということもあり得る。また、他に共通な原因があるだけで、その事象と健康事象との間には因果関係がないこともあり得る。

(5)正しい。病休度数率は、在籍労働者の延べ実労働時間数 100 万時間当たりの疾病休業件数で示される。なお、「疾病」と付いているが、通常の度数率(延べ100万実労働時間当たりの災害等の発生件数)を疾病について計算しているだけである。

病休度数率=疾病休業件数在籍労働者の延実労働時間数×1,000,000

なお、この機会に以下の概念についても覚えておこう。最近の衛生管理者試験は、過去の公表問題を「ひねって」出題することが多い。過去問の学習をするのは、合格するためであるが、最近の衛生管理者試験に合格するには、過去問の学習をするに当たっては出題されたことだけを覚えるのではなく、関係する事項についても理解しておく必要がある。

病休強度率=疾病休業延日数在籍労働者の延実労働時間数×1,000

疾病休業日数率=疾病休業日数在籍労働者の延所定労働日数×100

病休件数年千人率=疾病休業件数在籍労働者の延所定労働日数×1,000

2025年10月11日執筆