問14 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づくメンタルヘルスケアの実施に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)心の健康づくり計画の実施に当たっては、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要がある。
(2)プライバシー保護の観点から、衛生委員会や安全衛生委員会において、ストレスチェック制度に関する調査審議とメンタルヘルスケアに関する調査審議を関連付けて行うことは避ける。
(3)「セルフケア」とは、労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減する、あるいはこれに対処することである。
(4)心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題があることに留意する。
(5)労働者の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織等の要因によって影響を受ける可能性があるため、人事労務管理部門と連携するようにする。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2025年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2025年10月公表問題 | 問14 | 難易度 | メンタルヘルス指針に関する基本的な知識問題。内容は過去の公表問題とほぼ同じ。 |
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メンタルヘルス指針 | 3 |
問14 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づくメンタルヘルスケアの実施に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)心の健康づくり計画の実施に当たっては、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要がある。
(2)プライバシー保護の観点から、衛生委員会や安全衛生委員会において、ストレスチェック制度に関する調査審議とメンタルヘルスケアに関する調査審議を関連付けて行うことは避ける。
(3)「セルフケア」とは、労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減する、あるいはこれに対処することである。
(4)心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題があることに留意する。
(5)労働者の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織等の要因によって影響を受ける可能性があるため、人事労務管理部門と連携するようにする。
正答(2)
【解説】
本問は、労働者の心の健康の保持増進のための指針(以下、本問の解説中において「メンタルヘルス指針」という。)からの出題である。
(1)適切である。指針は、「2 メンタルヘルスケアの基本的考え方」において、心の健康づくり計画の実施に当たっては、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要があるとしている。
2 メンタルヘルスケアの基本的考え方
(略)また、心の健康づくり計画の実施に当たっては、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要がある。(以下略)
※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年(2015年最終改正))
(2)適切ではない。指針は、「3 衛生委員会等における調査審議」において「また、ストレスチェック制度に関しては、心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(中略)により、衛生委員会等においてストレスチェックの実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえてストレスチェック制度の実施に関する規程を定めることとされていることから、ストレスチェック制度に関する調査審議とメンタルヘルスケアに関する調査審議を関連付けて行うことが望ましい」としている。
そもそも、本肢のように、衛生委員会や安全衛生委員会において、ストレスチェック制度に関する調査審議とメンタルヘルスケアに関する調査審議を関連付けて行ったとしても、制度に関する調査審議で「プライバシー保護」の問題が発生することは考えにくい。
3 衛生委員会等における調査審議
(略)また、ストレスチェック制度に関しては、心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(平成 27 年4月 15 日心理的な負担の程度を把握するための検査等指針公示第1号。以下「ストレスチェック指針」という。)により、衛生委員会等においてストレスチェックの実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえてストレスチェック制度の実施に関する規程を定めることとされていることから、ストレスチェック制度に関する調査審議とメンタルヘルスケアに関する調査審議を関連付けて行うことが望ましい。(以下略)
※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年(2015年最終改正)。下線強調引用者)
(3)適切である。指針は、「5 4つのメンタルヘルスケアの推進」において、次のように記載している。なお、指針に示されているのは、事業者が労働者による「セルフケア」を支援することであり、労働者の自己責任などと言っているのではない。
5 4つのメンタルヘルスケアの推進
(略)労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減するあるいはこれに対処する「セルフケア」(以下略)
※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年(2015年最終改正))
(4)適切である。指針は、「2 メンタルヘルスケアの基本的考え方」において留意すべき事項を4つあげており、その「① 心の健康問題の特性」で、心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題があることに留意するとしている。
2 メンタルヘルスケアの基本的考え方
① 心の健康問題の特性
(略)また、心の健康は、すべての労働者に関わることであり、すべての労働者が心の問題を抱える可能性があるにもかかわらず、心の健康問題を抱える労働者に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題や、心の健康問題自体についての誤解や偏見等解決すべき問題が存在している。
※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年(2015年最終改正))
(5)適切である。指針は、「2 メンタルヘルスケアの基本的考え方」において留意すべき事項を4つあげており、その「③ 人事労務管理との関係」で「労働者の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理と密接に関係する要因によって、大きな影響を受ける。メンタルヘルスケアは、人事労務管理と連携しなければ、適切に進まない場合が多い」としている。
2 メンタルヘルスケアの基本的考え方
③ 人事労務管理との関係
労働者の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理と密接に関係する要因によって、大きな影響を受ける。メンタルヘルスケアは、人事労務管理と連携しなければ、適切に進まない場合が多い。
※ 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006年(2015年最終改正))