第2種衛生管理者試験 2025年10月公表 問12

照明、採光など(全般)




問題文
トップ
学習する男性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、下表の左欄、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2025年10月公表問題 問12 難易度 照明、採光等に関する基本的な知識問題である。確実に正答できるようにしておこう。
照明等

問12 照明、採光などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)北向きの窓では、直射日光はほとんど入らないが一年中平均した明るさが得られる。

(2)全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の10分の1以下になるようにする。

(3)前方から明かりを取るときは、まぶしさをなくすため、眼と光源を結ぶ線と視線とがなす角度が、おおむね30°以上になるように光源の位置を決めるとよい。

(4)あらゆる方向から同程度の明るさの光がくると、見る物に影ができなくなり立体感がなくなるので、不都合な場合がある。

(5)部屋の彩色として、目の高さ以下は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色とし、目より上方の壁や天井は、明るい色を用いるとよい。

正答(2)

【解説】

(1)正しい。北向きの窓では、直射日光がほとんど入らないことは正しい。直射日光が入らないので、他の方向に向いた窓に比較すれば一年中平均した明るさが得られる。

(2)誤り。近年、省エネのために、全般照明の明るさを落として、作業面に局部照明を併用することで、電力を節約するタスクアンドアンビエント照明方式が広く用いられている。ただ、作業面における水平面照度の変化は、出来るだけ小さいことが望ましい。

なお、衛生管理者の試験では、かつては「全般照明の明るさは局部照明の10分の1以上が望ましい」として正しい肢であるとすることが多かった(例えば 2017 年4月問 13 など)が、10分の1ではやや比率が大きすぎる。2020年4月公表問題以降は5分の1以上(又は5分の1程度)という数字となって正しいとされている。

また、2024年4月公表問題では 15 分の1以下として誤りとしていたが、今回は、10 分の1以下として誤りとしている。

これについて、JIS Z 9110:2010(照明基準総則)は、部屋全般に平均 100(lx)、作業面(情報端末ディスプレイを除く)に局部的に 750(lx)を推奨している。この場合、作業面周辺は 200~300(lx)程度の明るさになると想定され、作業面周辺と作業面の照度比はおよそ1:3になる。

また、明石他(※1)によると、「伝票処理などの一般的な事務作業の場合、周辺照度/作業面照度の比が1.0、0.33、0.1のうち、1.0の照明条件下で最も集中でき、企画などの思考を伴う作業の場合、0.1の照明条件で最も集中できることを明らかにした」とされている。

(3)正しい。視野の中に輝度の高い光源があれば、目が疲労し不快感を感じるばかりか、物が見えにくくなる。これがグレア(まぶしさ)である。視線を中心として上下30°の範囲はグレアゾーンと呼ばれ、この範囲には輝度の高い光源をなくすのが照明の基本とされている。おおむね 30 度以上程度になるように光源の位置を決めていれば、間違いとは言えない。

(4)正しい。実際の物を立体的にみるためには、影が手掛かりとなるので、影ができる照明の方が適している。そのため、あらゆる方向から同程度の明るさの光がくると、見るものに影ができなくなり、立体感がなくなってしまうことがある。転倒防止のためには、このようなことは不都合となる。

(5)正しい。部屋の彩色として、目の高さ以下は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色とし、目より上方の壁や天井は、明るい色を用いるとよい。

なお、山津(※2)は、適当なる明度対比として、天井:8.0~9.0、側壁:6.5~8.0、腰羽目:5.0~6.0、床:4.5という米国の基準を紹介している。

※1 明石行生他「作業者の集中度と周辺照度/作業面照度の比との関係」(照明学会誌 第80巻 第8A号 1996年)

※2 山津幸夫「色彩調節の実施とその効果その1(工場と事務室)」(照明学会雑誌 第26巻 第7号 1952年)

2025年10月11日執筆