第2種衛生管理者試験 2024年10月公表 問30

腎臓・泌尿器系とその働き




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2024年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2024年10月公表問題 問30 難易度 腎臓と尿に関する問題は過去の公表問題で頻出事項。過去問の範囲で正答可能な問題である。
腎臓と尿

問30 腎臓・泌尿器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)ネフロン(腎単位)は、尿を生成する単位構造で、1個の腎小体とそれに続く1本の尿細管から成り、1個の腎臓中に約 100 万個ある。

(2)腎臓の腎小体では、糸球体から血液中のたん白質以外の血竣成分がボウマンのうし出され、原尿が生成される。

(3)腎臓の尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分及び身体に必要な成分が血液中に再吸収され、残りが尿として生成される。

(4)尿の約 95 %は水分で、約5%が固形物であるが、その成分が全身の健康状態をよく反映するので、尿を採取して尿素窒素の検査が広く行われている。

(5)尿の生成・排出により、体内の水分の量やナトリウムなどの電解質の濃度を調節するとともに、生命活動によって生じた不要な物質を排出する。

正答(5)

【解説】

ネフロン概念図

©看護roo!

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何故か試験協会は、衛生管理者には腎臓の詳しい働きについての知識が必要だと思っているらしい。これがよく出題されるのである。

もともと腎臓という臓器は、太古の動物が海から川へ進出したときに手に入れたものである。彼らの皮膚は半透膜だったため、真水の川では塩分の多い体内に水が侵入してくるので、これを体外に排出する仕組みが必要になったのである。現在では、血液中の老廃物を尿として体外に排出する機能を有している。

老廃物を血液から濾しとる仕組みとして、腎臓内にはネフロンと呼ばれる多数の「装置」が備わっている。個々のネフロンは腎小体(「糸球体」と「ボウマン囊」)及び「尿細管」という組織から成り立っている。

血液は、固体成分である血球(赤血球、白血球、血小板等の細胞成分)と、血漿と呼ばれる液体から成り立っている。そして、血漿には、90%程度の水分と各種の蛋白質(7~9%程度)の他、ブドウ糖などの糖質、アミノ酸、ナトリウムイオンなどの電解質、無機物ホルモン、尿素などが溶け込んでいる。

血液は、「糸球体」「ボウマン囊」「尿細管」の順で流れる。最初の糸球体を血液が通過するとき、蛋白質や血球は通過できず、それ以外の糖質、アミノ酸、電解質、尿素などはボウマン囊へ濾し出される。ただ、糖質、アミノ酸、電解質などは有用なものなので、尿細管で大部分の水分と共に再吸収される。残りの尿素などが尿として排出されるのである。

(1)正しい。ネフロン(腎単位)は、尿を生成する単位構造で、1個の腎小体とそれに続く1本の尿細管から成る。1個の腎臓中のネフロン数は、約 60 万個から 120 万個と個体差があり、また加齢・高血圧・腎疾患などにより減少するが、本肢が約 100 万個としているのは正しいとしてよいであろう。

なお、ネフロン数が極端に減少していれば、(原因が何であれ、)慢性腎臓病(CKD = Chronic Kidney Disease)である。

(2)正しい。上記で述べた通り、腎小体では、糸球体から血液中の血球及び蛋白質以外の成分がボウマン嚢に濾し出され、原尿が生成される。

(3)正しい。上記で述べた通り、腎臓の尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分及び身体に必要な成分が血液中に再吸収され、残りが尿として生成される。

(4)誤り。尿素窒素(BUN=Blood urea nitrogen)は、血液中の濃度を検査するものであり、尿中の濃度を検査するものではない。

なお、本肢は尿の約 95 %は水分だとするが、このことは衛生管理者試験の過去問では正しいとされている。しかし、尿中の固形物の割合は、文献によってもなり異なり、測定時の状況によっても大きく変わる。ちなみに Wikipedia の尿によれば尿の約 98 %は水分で、約2%が固形物としている。

また、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われていることも正しい。

(3)正しい。多量に水を飲むとうすい尿が多量に出るし、水分を制限すれば濃い尿が少量しか出ない少ししか出ないことは、日常、経験している。尿の量によって体内の水分を調節しているのである。これは血液中の電解質(血液に溶けているカルシウム、ナトリウム、カリウムなど)についても同様で、尿の生成・排出により、細胞外液のナトリウムなどの電解質の濃度を調節している。なお、生命活動によって生じた不要な物質を排泄することは上記で述べた通り。

2024年10月20日執筆

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