第2種衛生管理者試験 2024年10月公表 問06

産業医の選任と職務




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2024年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2024年10月公表問題 問06 難易度 過去問の学習で正答できる内容であり、確実に正答しておきたい。
産業医

問6 産業医に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。

ただし、産業医の選任の特例はないものとする。

(1)医師のうち、労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるものは、産業医として選任することができる。

(2)産業医の選任は、選任すべき事由が発生した日から 14 日以内に行わなければならない。

(3)事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

(4)常時使用する労働者数が 2,000 人を超える事業場では、産業医を2人以上選任しなければならない。

(5)産業医は、労働者に対する衛生教育に関することであって、医学に関する専門的知識を必要とする事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告することができる。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。安衛法第 13 条第2項の規定により、産業医として選任することができるのは、厚生労働省令で定める要件を備えていなければならない。

この要件は、安衛則第14条第2項に定められているが、「医師のうち、労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの」は、同項第三号に定められている。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。

3~6 (略)

【労働安全衛生規則】

(産業医及び産業歯科医の職務等)

第14条 (第1項 略)

 法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。

一及び二 (略)

 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの

四及び五 (略)

3~7 (略)

(2)正しい。安衛則第13条第1項第一号に、産業医は、選任すべき事由が発生した日から 14 日以内に選任しなければならないとされている。

安衛法では、事業場ごとに選任される「管理者」(保護具着用管理責任者、産業医を含めて)は、選任する必要が生じた後、14日以内に選任することとされていることが多い(※)。これに対し、作業を行う都度つど選任される作業主任者や作業指揮者は、作業を行うときまでに選任する必要がある。

※ 安衛則第24条の7の救護に関する技術的事項を管理する者は、例外である。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

2~6 (略)

【労働安全衛生規則】

(産業医の選任等)

第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任すること。

二~四 (略)

2~4 (略)

(3)正しい。安衛則第13条第4項により、事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

【労働安全衛生規則】

(産業医の選任等)

第13条 (第1項~第3項 略)

 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

(4)誤り。このような規定はない。総括安全衛生管理者について安衛則第3条は、旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならないとしている。しかし、産業医にはこの規定は準用されていない。

産業医は、短期間であれば職務を行うことができなかったとしても、それほど支障はない。また、長期にわたって職務ができないのであれば解任して新たな産業医を選任するべきであろう。

なお、衛生管理者及び安全管理者については、同第3条の規定が準用されていることに留意すること。

種類 代理者の選任
総括安全衛生管理者 必要
衛生管理者 必要
産業医 不要
安全管理者(参考) 必要
衛生推進者 不要
安全衛生推進者 不要
統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者及び安全衛生責任者 必要
救護に関する技術的事項を管理する者 必要

【労働安全衛生規則】

(総括安全衛生管理者の代理者)

第3条 事業者は、総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によつて職務を行なうことができないときは、代理者を選任しなければならない。

(産業医の選任等)

第13条 (第1項 略)

 第二条第二項の規定は、産業医について準用する。ただし、学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)第二十三条(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号。以下この項及び第四十四条の二第一項において「認定こども園法」という。)第二十七条において準用する場合を含む。)の規定により任命し、又は委嘱された学校医で、当該学校(同条において準用する場合にあつては、認定こども園法第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園)において産業医の職務を行うこととされたものについては、この限りでない。

 第八条の規定は、産業医について準用する。この場合において、同条中「前条第一項」とあるのは、「第十三条第一項」と読み替えるものとする。

 (略)

(4)誤り。安衛則第13条第1項第四号に、常時3,000人を超える労働者を使用する事業場は2人以上の産業医を選任しなければならないとされている。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

2~6 (略)

【労働安全衛生規則】

(産業医の選任等)

第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一~三 (略)

 常時三千人をこえる労働者を使用する事業場にあつては、二人以上の産業医を選任すること。

2~4 (略)

(5)正しい。安衛則第 14 条第3項(及び第1項(第八号))により、産業医は、労働者に対する衛生教育に関することであって、医学に関する専門的知識を必要とする事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告することができる。

なお、安衛法第 13 条第5項(及び第1項(安衛則第 14 条第1項(第八号))により、事業者に対しても同じことを勧告できる。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

2~4 (略)

 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(産業医及び産業歯科医の職務等)

第14条 法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。

一~七 (略)

 衛生教育に関すること。

 (略)

 (略)

 産業医は、第1項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。

4~7 (略)

2024年10月18日執筆