第2種衛生管理者試験 2024年4月公表 問13

照明、採光など(全般)




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2024年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2024年4月公表問題 問13 難易度 照明、採光等に関する基本的な知識問題である。確実に正答できるようにしておこう。
照明等

問13 照明等の視環境に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)照度の単位はルクスで、1ルクスは光度1カンデラの光源から1m離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさに相当する。

(2)前方から明かりをとるときは、まぶしさをなくすため、眼と光源を結ぶ線と視線が作る角度は、おおむね30°以上になるようにする。

(3)全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の15分の1以下になるようにしている。

(4)室内の彩色で、目の高さ以下の壁や床には、まぶしさを防ぐため濁色を用いるようにする。

(5)高齢者は、若年者に比較して、一般に、高い照度が必要であるが、水晶体の混濁により、まぶしさを感じやすくなっている場合もあるので、注意が必要である。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。ルクス(lx)は照度の単位で、カンデラ(㏅)は光度の単位である。1(lx)は、1(㏅)の光源から、1m離れた所において、光軸に垂直な面が受ける明るさをいう。

(2)正しい。視野の中に輝度の高い光源があれば、目が疲労し不快感を感じるばかりか、物が見えにくくなる。これがグレア(まぶしさ)である。視線を中心として上下30°の範囲はグレアゾーンと呼ばれ、この範囲には輝度の高い光源をなくすのが照明の基本とされている。おおむね30°以上程度になるように光源の位置を決めていれば、間違いとは言えない。

(3)誤り。近年、省エネのために、全般照明の明るさを落として、作業面に局部照明を併用することで、電力を節約するタスクアンドアンビエント照明方式が広く用いられている。ただ、作業面における水平面照度の変化は、出来るだけ小さいことが望ましい。

なお、衛生管理者の試験では、かつては「全般照明の明るさは局部照明の10分の1以上が望ましい」として正しい肢であるとすることが多かったが、10分の1ではやや比率が大きすぎる。2020年4月公表問題以降は5分の1以上(又は5分の1程度)という数字となって正しいとされている。今回は、15分の1として誤りとしている。

これについて、JISZ9110:2010(照明基準総則)は、部屋全般に平均100(lx)、作業面(情報端末ディスプレイを除く)に局部的に750(lx)を推奨している。この場合、作業面周辺は200~300(lx)程度の明るさになると想定され、作業面周辺と作業面の照度比はおよそ1:3になる。

また、明石他(※2)によると、「伝票処理などの一般的な事務作業の場合、周辺照度/作業面照度の比が1.0、0.33、0.1のうち、1.0の照明条件下で最も集中でき、企画などの思考を伴う作業の場合、0.1の照明条件で最も集中できることを明らかにした」とされている。

(4)正しい。部屋の彩色として、目の高さ以下は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色とし、目より上方の壁や天井は、明るい色を用いるとよい。

なお、山津(※1)は、適当なる明度対比として、天井:8.0~9.0、側壁:6.5~8.0、腰羽目:5.0~6.0、床:4.5という米国の基準を紹介している。

(5)正しい。高齢者は、①瞳孔が小さくなる、②水晶体が濁る、③網膜の神経線維が減少するなどにより暗く感じることがあり、若年者に比較して、一般に、高い照度が必要である。

しかし、高齢者は白内障に罹患することも多く、白内障の濁りに強い光が乱反射することによって、まぶしさを感じる場合がある。

※1 山津幸夫「色彩調節の実施とその効果その1(工場と事務室)」(照明学会雑誌 第26巻 第7号 1952年)

※2 明石行生他「作業者の集中度と周辺照度/作業面照度の比との関係」(照明学会誌 第80巻 第8A号 1996年)

WBGT=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

(5)誤り。要綱の第2の1の(1)WBGT 値の低減等に「WBGT値が、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合には、冷房等により当該作業場所のWBGT値の低減を図ること、身体作業強度(代謝率レベル)の低い作業に変更すること、WBGT基準値より低いWBGT値である作業場所での作業に変更することなどの熱中症予防対策を作業の状況等に応じて実施するよう努めること」とされている。

2024年04月15日執筆