問3 衛生管理者が管理すべき業務として、法令上、定められていないものは次のうちどれか。
ただし、次のそれぞれの業務のうち衛生に係る技術的事項に限るものとする。
(1)化学物質等による危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
(2)健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
(3)労働者の衛生のための教育の実施に関すること。
(4)労働者の健康を確保するため必要があると認めるとき、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすること。
(5)少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じること。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2024年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2024年4月公表問題 | 問03 | 難易度 | 衛生管理者に管理させるべき業務に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない問題。 |
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衛生管理者 | 2 |
問3 衛生管理者が管理すべき業務として、法令上、定められていないものは次のうちどれか。
ただし、次のそれぞれの業務のうち衛生に係る技術的事項に限るものとする。
(1)化学物質等による危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
(2)健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
(3)労働者の衛生のための教育の実施に関すること。
(4)労働者の健康を確保するため必要があると認めるとき、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすること。
(5)少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じること。
正答(4)
【解説】
衛生管理者の業務は、安衛法第 12 条第1項の規定により、同第 10 条第1項各号の業務(総括安全衛生管理者の業務)のうち、衛生に係る技術的事項とされている。なお、同第 10 条第1項第五号の業務は、安衛則第3条の2に定められている。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
2及び3 (略)
(衛生管理者)
第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 (略)
(第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)
第57条の3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第57条第1項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。
2 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。
3及び4 (略)
【労働安全衛生規則】
(総括安全衛生管理者が統括管理する業務)
第3条の2 法第10条第1項第五号の厚生労働省令で定める業務は、次のとおりとする。
一 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
二 法第28条の2第1項又は第57条の3第1項及び第2項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
三 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
(衛生管理者の定期巡視及び権限の付与)
第11条 衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。
(1)定められている。安衛法第10条第1項第五号(安衛則第3条の2(第二号))により、化学物質等による危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関することは、「総括安全衛生管理者が統括管理する業務」である。従って、そのうち衛生に係る技術的事項は衛生管理者の管理すべき事項となる。
(2)定められている。安衛法第10条第1項第三号により、健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関することは、「総括安全衛生管理者が統括管理する業務」である。従って、そのうち衛生に係る技術的事項は衛生管理者の管理すべき事項となる。
(3)定められている。安衛法第10条第1項第二号により、労働者の衛生のための教育の実施に関することは、「総括安全衛生管理者が統括管理する業務」である。従って、そのうち衛生に係る技術的事項は衛生管理者の管理すべき事項となる。。
(4)定められていない。衛生管理者が管理すべき業務として「労働者の健康を確保するため必要があると認めるとき、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすること」は定められていない。
これは、産業医の権限であり(安衛法第 13 条第5項)、衛生管理者が管理すべき事項ではない。衛生管理者は事業者の指揮・命令を受けて業務を遂行するのであるから、事業者に対して勧告することはあり得ない。
(5)定められている。安衛則第11条により、「少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じること」は衛生管理者が実施すべき事項(※)となる。
※ (5)の問題文は「衛生管理者が管理すべき業務」となっており、安衛則第 11 条の職場巡視は「衛生管理者が実施すべき事項」であるから、厳密には誤りである。しかし、(4)が明らかに誤っているので、こちらは正しい肢であるとした。