第2種衛生管理者試験 2023年4月公表 問19

感染症の原因と予防方法




問題文
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未来に向かって指さす女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2023年04月公表問題 問19 難易度 感染症の問題は2022年4月が初出で今回は2度目。しかし、当サイトの過去問の解説で正答できる内容。
感染症

問19 感染症に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)人間の抵抗力が低下した場合は、通常、多くの人には影響を及ぼさない病原体が病気を発症させることがあり、これを日和見感染という。

(2)感染が成立しているが、症状が現れない状態が継続することを不顕性感染という。

(3)感染が成立し、症状が現れるまでの人をキャリアといい、感染したことに気付かずに病原体をばらまく感染源になることがある。

(4)感染源の人がせきやくしゃみをして、唾液などに混じった病原体が飛散することにより感染することを空気感染といい、インフルエンザや普通感冒の代表的な感染経路である。

(5)インフルエンザウイルスにはA型、B型及びC型の三つの型があるが、流行の原因となるのは、主として、A型及びB型である。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。感染症の定義は以下の表のようになっている。本肢の「人間の抵抗力が低下した場合は、通常、多くの人には影響を及ぼさない病原体が病気を発症させる」のは日和見感染の説明である。

感染症 意味
顕性感染 細菌やウイルスなどの病原体が宿主の体内に侵入して増殖し、現実に発病して様々な症候を伴うものである。
不顕性感染 宿主が病原体に感染しても症候が出現しない状態である。
日本脳炎、ポリオなどが例として挙げられることが多いが、これらの感染症では感染しても発症しないことが多い。
不顕性感染の人(保菌者=キャリア)は感染したまま活動して、病原体を排泄して感染源となるので感染症拡大の原因となる。
日和見感染 通常の宿主にはほとんど病原性を発揮しない病原体(弱毒微生物)が、抵抗力が低下した宿主に対して病原性を発揮しておこす感染症である。
健康な宿主が発病する顕性感染に比較すると、難治性で重症化しやすく致死的となることがある。
垂直感染(参考) 病原体が母親から子へ伝わる感染のことである。経胎盤感染、経産道感染、経母乳感染がある。
水平感染(参考) 垂直感染以外の感染のことである。感染経路による分類としては、経口、血液、接触、性、飛沫、空気、動物などがある。

(2)正しい。感染が成立し、発症することなく持続的に感染している状態(持続感染)を不顕性感染という。

例えば、B型肝炎ウイルスでは感染者のうち90%以上、C型肝炎ウイルスでは約70%、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)では約95%が不顕性感染になるとされている。

(3)正しい。感染が成立し、症状が現れるまでの人や不顕性感染の状態の人をキャリア(carrier)といい、感染したことに気付かずに病原体をばらまく感染源になることがある。

(4)誤り。感染源の人がせきやくしゃみをして、唾液などに混じった病原体が飛散することにより感染することは飛沫感染という。空気感染ではない。

(5)正しい。インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型及びD型の4種類(※)がある。このうち人が罹患するのはA型、B型及びC型の3種類である。

※ 問題文には、D型についての記述がないが、「A型、B型及びC型の三つの型がある」としているだけで、他の型がないとは言っていないので誤りとはいえない。

また、人で流行するのは主にA型とB型である。C型は、一度罹患すると、その後は免疫が持続するので流行することはあまりない。

なお、A型とD型は、人以外の哺乳類や鳥類にも感染する。また、これらの4つの型のインフルエンザには、様々な亜種がある。

2023年04月20日執筆