問3 産業医に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
(1)常時使用する労働者数が 50 人以上の事業場において、厚生労働大臣の指定する者が行う産業医研修の修了者等の所定の要件を備えた医師であっても、当該事業場においてその事業を統括管理する者は、産業医として選任することはできない。
(2)産業医が、事業者から、毎月1回以上、所定の情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、産業医の作業場等の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることができる。
(3)事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
(4)事業者は、産業医が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない。
(5)事業者が産業医に付与すべき権限には、労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集することが含まれる。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2022年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2022年10月公表問題 | 問03 | 難易度 | 2021年4月とほぼ同じ問題。衛生管理体制に関する基本的な内容であり、確実に正答しておきたい。 |
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産業医の選任と職務 | 3 |
問3 産業医に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
(1)常時使用する労働者数が 50 人以上の事業場において、厚生労働大臣の指定する者が行う産業医研修の修了者等の所定の要件を備えた医師であっても、当該事業場においてその事業を統括管理する者は、産業医として選任することはできない。
(2)産業医が、事業者から、毎月1回以上、所定の情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、産業医の作業場等の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることができる。
(3)事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
(4)事業者は、産業医が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない。
(5)事業者が産業医に付与すべき権限には、労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集することが含まれる。
正答(4)
【解説】
(1)正しい。安衛法第13条第1項(安衛令第5条)の規定により、常時使用する労働者数が50人以上の事業場では産業医を選任しなければならない。
そして、産業医は、安衛法第13条第2項(及び安衛則第14条第2項)により厚生労働大臣の指定する者が行う産業医研修の修了者等の所定の要件を備えた医師でなければならないとされている。
しかし、安衛法第13条第2項(及び安衛則第14条第2項)の規定とはかかわりなく、安衛則第13条第1項第2号の規定により、その事業場においてその事業を統括管理する者は、産業医として選任することはできない。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
2 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
3~6 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(産業医を選任すべき事業場)
第5条 法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。
【労働安全衛生規則】
(産業医の選任等)
第13条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 次に掲げる者(イ及びロにあつては、事業場の運営について利害関係を有しない者を除く。)以外の者のうちから選任すること。
イ及びロ (略)
ハ 事業場においてその事業の実施を統括管理する者
三及び四 (略)
2~4 (略)
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第14条 (第1項略)
2 法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。
一 法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
二~五 (略)
3~7 (略)
(2)正しい。安衛則第15条のカッコ書きにより、産業医が、事業者から、毎月1回以上、所定の情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、産業医の作業場等の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることができる。
【労働安全衛生規則】
(産業医の定期巡視)
第15条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一及び二 (略)
(3)正しい。安衛則第13条第4項により、事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
【労働安全衛生規則】
(産業医の選任等)
第13条 (第1項~第3項 略)
4 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
(4)誤り。このような規定はない。総括安全衛生管理者について安衛則第3条は、旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならないとしている。しかし、産業医にはこの規定は準用されていない。
産業医は、短期間であれば職務を行うことができなかったとしても、それほど支障はない。また、長期にわたって職務ができないのであれば解任して新たな産業医を選任するべきであろう。
なお、衛生管理者及び安全管理者については、同第3条の規定が準用されていることに留意すること。
種類 | 代理者の選任 |
---|---|
総括安全衛生管理者 | 必要 |
衛生管理者 | 必要 |
産業医 | 不要 |
安全管理者(参考) | 必要 |
衛生推進者 | 不要 |
安全衛生推進者 | 不要 |
統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者及び安全衛生責任者 | 必要 |
救護に関する技術的事項を管理する者 | 必要 |
【労働安全衛生規則】
(総括安全衛生管理者の代理者)
第3条 事業者は、総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によつて職務を行なうことができないときは、代理者を選任しなければならない。
(産業医の選任等)
第13条 (第1項 略)
2 第二条第二項の規定は、産業医について準用する。ただし、学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)第二十三条(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号。以下この項及び第四十四条の二第一項において「認定こども園法」という。)第二十七条において準用する場合を含む。)の規定により任命し、又は委嘱された学校医で、当該学校(同条において準用する場合にあつては、認定こども園法第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園)において産業医の職務を行うこととされたものについては、この限りでない。
3 第八条の規定は、産業医について準用する。この場合において、同条中「前条第一項」とあるのは、「第十三条第一項」と読み替えるものとする。
4 (略)
(5)正しい。安衛則第14条の4第1項により、事業者は産業医に対して同第14条第1項各号の事項をなしうる権限を与えなければならない。そして、その権限には第14条の4第2項により、第14条第1項各号に掲げる事項を実施するために必要な情報を労働者から収集することが含まれている。そして、同第14条第1項には「労働者の健康管理に関すること」が含まれている。
従って、事業者が産業医に付与すべき権限には、労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集することが含まれている。
なお、安衛法第13条第4項及び安衛則第14条の2により、事業者は、産業医に対して、労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を提供しなければならないこととされている。
【労働安全衛生法】
(産業医等)
第13条 (第1項~第3項 略)
4 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。
5及び6 (略)
【労働安全衛生規則】
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第14条 法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。
一 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
二 法第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項に規定する面接指導並びに法第六十六条の九に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
三 法第六十六条の十第一項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査の実施並びに同条第三項に規定する面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
四 作業環境の維持管理に関すること。
五 作業の管理に関すること。
六 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
七 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
八 衛生教育に関すること。
九 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
2~7 (略)
(産業医に対する情報の提供)
第14条の2 法第十三条第四項の厚生労働省令で定める情報は、次に掲げる情報とする。
一及び二 (略)
三 前二号に掲げるもののほか、労働者の業務に関する情報であつて産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの
2 (略)
(産業医に対する権限の付与等)
第14条の4 事業者は、産業医に対し、第14条第1項各号に掲げる事項をなし得る権限を与えなければならない。
2 前項の権限には、第14条第1項各号に掲げる事項に係る次に掲げる事項に関する権限が含まれるものとする。
一 事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること。
二 第十四条第一項各号に掲げる事項を実施するために必要な情報を労働者から収集すること。
三 労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること。