問20 感染症に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)人間の抵抗力が低下した場合は、通常、多くの人には影響を及ぼさない病原体が病気を発症させることがあり、これを不顕性感染という。
(2)感染が成立し、症状が現れるまでの人をキャリアといい、感染したことに気付かずに病原体をばらまく感染源になることがある。
(3)微生物を含む飛沫の水分が蒸発して、5μm以下の小粒子として長時間空気中に浮遊し、空調などを通じて感染することを空気感染という。
(4)風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症で、免疫のない女性が妊娠初期に風しんにかかると、胎児に感染し出生児が先天性風しん症候群(CRS)となる危険性がある。
(5)インフルエンザウイルスにはA型、B型及びC型の三つの型があるが、流行の原因となるのは、主として、A型及びB型である。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2022年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
他の問題の解説をご覧になる場合は、下表の左欄、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2022年04月公表問題 | 問20 | 難易度 | 過去に類問のない新傾向問題。新型コロナの蔓延に伴い、今後の頻出問となる可能性もある。 |
---|---|---|---|
感染症 | 4 |
問20 感染症に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)人間の抵抗力が低下した場合は、通常、多くの人には影響を及ぼさない病原体が病気を発症させることがあり、これを不顕性感染という。
(2)感染が成立し、症状が現れるまでの人をキャリアといい、感染したことに気付かずに病原体をばらまく感染源になることがある。
(3)微生物を含む飛沫の水分が蒸発して、5μm以下の小粒子として長時間空気中に浮遊し、空調などを通じて感染することを空気感染という。
(4)風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症で、免疫のない女性が妊娠初期に風しんにかかると、胎児に感染し出生児が先天性風しん症候群(CRS)となる危険性がある。
(5)インフルエンザウイルスにはA型、B型及びC型の三つの型があるが、流行の原因となるのは、主として、A型及びB型である。
正答(1)
【解説】
(1)誤り。感染症の定義は以下の表のようになっている。本肢の「人間の抵抗力が低下した場合は、通常、多くの人には影響を及ぼさない病原体が病気を発症させる」のは日和見感染の説明である。不顕性感染ではない。
感染症 | 意味 |
---|---|
顕性感染 | 細菌やウイルスなどの病原体が宿主の体内に侵入して増殖し、現実に発病して様々な症候を伴うものである。 |
不顕性感染 | 宿主が病原体に感染しても症候が出現しない状態である。 日本脳炎、ポリオなどが例として挙げられることが多いが、これらの感染症では感染しても発症しないことが多い。 不顕性感染の人(保菌者=キャリア)は感染したまま活動して、病原体を排泄して感染源となるので感染症拡大の原因となる。 |
日和見感染 | 通常の宿主にはほとんど病原性を発揮しない病原体(弱毒微生物)が、抵抗力が低下した宿主に対して病原性を発揮しておこす感染症である。 健康な宿主が発病する顕性感染に比較すると、難治性で重症化しやすく致死的となることがある。 |
垂直感染(参考) | 病原体が母親から子へ伝わる感染のことである。経胎盤感染、経産道感染、経母乳感染がある。 |
水平感染(参考) | 垂直感染以外の感染のことである。感染経路による分類としては、経口、血液、接触、性、飛沫、空気、動物などがある。 |
(2)正しい。感染が成立し、発症することなく持続的に感染している状態(持続感染)の人をキャリア(disease carrier)という。感染したことに気付かずに病原体をばらまく感染源になることがある。
例えば、B型肝炎ウイルスでは感染者のうち90%以上、C型肝炎ウイルスでは約70%、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)では約95%がキャリアになるとされている。
(3)正しい。微生物を含む飛沫の水分が蒸発して、5μm以下の小粒子として長時間空気中に浮遊し、空調などを通じて感染することを空気感染という。
なお、飛沫感染とは、微生物が含まれている飛沫(5μmより大きい水滴)を直接吸い込むことで感染することをいう。この飛沫の水分が蒸発すると、飛沫核(5μm以下の小粒子)になるが、これによる感染が空気感染である。
(4)正しい。厚生労働省の「風しんについて」によると、風疹(rubella)は、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症である。症状は不顕性感染から、重篤な合併症併発まで幅広い。
また、風疹に感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、出生児が先天性風疹症候群を発症する可能性が高くなる。
(5)正しい。インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型及びD型の4種類(※)がある。このうち人が罹患するのはA型、B型及びC型の3種類である。
※ 問題文には、D型についての記述がないが、「A型、B型及びC型の三つの型がある」としているだけで、他の型がないとは言っていないので誤りとはいえない。
また、人で流行するのは主にA型とB型である。C型は、一度罹患すると、その後は免疫が持続するので流行することはあまりない。
なお、A型とD型は、人以外の哺乳類や鳥類にも感染する。また、これらの4つの型のインフルエンザには、様々な亜種がある。