問4 労働安全衛生規則に基づく医師による雇入時の健康診断に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しない者を雇い入れる場合、その健康診断の結果を証明する書面の提出があったときは、その健康診断の項目に相当する雇入時の健康診断の項目は省略することができる。
(2)雇入時の健康診断では、40歳未満の者について医師が必要でないと認めるときは、貧血検査、肝機能検査等一定の検査項目を省略することができる。
(3)事業場において実施した雇入時の健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者については、その結果に基づき、健康を保持するために必要な措置について、健康診断が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。
(4)雇入時の健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければならない。
(5)雇入時の健康診断の結果については、事業場の規模にかかわらず、所轄労働基準監督署長に報告する必要はない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2022年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
他の問題の解説をご覧になる場合は、下表の左欄、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2022年04月公表問題 | 問04 | 難易度 | 健康診断に関するかなり高度な内容。健康診断業務に関わったことがないと正答は難しいだろうか。 |
---|---|---|---|
雇入時の健康診断 | 5 |
問4 労働安全衛生規則に基づく医師による雇入時の健康診断に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しない者を雇い入れる場合、その健康診断の結果を証明する書面の提出があったときは、その健康診断の項目に相当する雇入時の健康診断の項目は省略することができる。
(2)雇入時の健康診断では、40歳未満の者について医師が必要でないと認めるときは、貧血検査、肝機能検査等一定の検査項目を省略することができる。
(3)事業場において実施した雇入時の健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者については、その結果に基づき、健康を保持するために必要な措置について、健康診断が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。
(4)雇入時の健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければならない。
(5)雇入時の健康診断の結果については、事業場の規模にかかわらず、所轄労働基準監督署長に報告する必要はない。
正答(2)
【解説】
雇入れ時の健康診断は安衛法第66条第1項により義務付けられ、具体的な手法は安衛則第43条に規定されている。また、その結果の保存については、安衛法第66条の3により義務付けられ、具体的な手法は安衛則第51条に規定されている。
一方、監督署長への報告は安衛法第100条第1項により義務付けられ、健康診断の結果については具体的な定めが、安衛則第52条に定められているが、雇入れ時の健康診断の結果を報告しなければならないとはされていない。
【労働安全衛生法】
(健康診断)
第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
2から5 (略)
(健康診断の結果の記録)
第66条の3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第66条第1項から第4項まで及び第5項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第66条の4 事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
(報告等)
第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
2及び3 (略)
【労働安全衛生規則】
(雇入時の健康診断)
第43条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(1,000Hz及び4,000Hzの音に係る聴力をいう。次条第1項第三号において同じ。)の検査
四 胸部エックス線検査
五 血圧の測定
六 血色素量及び赤血球数の検査(次条第1項第六号において「貧血検査」という。)
七 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)
八 低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)
九 血糖検査
十 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(次条第1項第十号において「尿検査」という。)
十一 心電図検査
(定期健康診断)
第44条 (第1項 略)
2 第1項第三号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。
3及び4 (略)
(健康診断結果の記録の作成)
第51条 事業者は、第43条、第44条若しくは第45条から第48条までの健康診断若しくは法第66条第4項の規定による指示を受けて行った健康診断(同条第5項ただし書の場合において当該労働者が受けた健康診断を含む。次条において「第43条等の健康診断」という。)又は法第66条の2の自ら受けた健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを5年間保存しなければならない。
(健康診断結果報告)
第51条の2 第四十三条等の健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 第四十三条等の健康診断が行われた日(法第六十六条第五項ただし書の場合にあつては、当該労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から三月以内に行うこと。
二 聴取した医師又は歯科医師の意見を健康診断個人票に記載すること。
2及び3 (略)
(健康診断結果報告)
第52条 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、第44条又は第45条の健康診断(定期のものに限る。)を行つたときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第六号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2 事業者は、第48条の健康診断(定期のものに限る。)を行つたときは、遅滞なく、有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書(様式第六号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
※ 安衛則第52条は、出題当時は下記のようになっていた。2022年10月1日より上記のように改正されているが、本問の正誤とは関係がない。
(健康診断結果報告)
第52条 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、第44条、第45条又は第48条の健康診断(定期のものに限る。)を行なつたときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第六号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
※ なお、安衛法に基づく届出、報告等の主要なものは、2025年1月1日より電子申請が原則となるので、本条もさらに改正されるが、報告の手法に関するものなので、本条の正誤に影響はない。
(1)正しい。安衛則第43条但書により、医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しない者を雇い入れる場合、その健康診断の結果を証明する書面の提出があったときは、その健康診断の項目に相当する雇入時の健康診断の項目を省略することができる。
(2)誤り。雇入時の健康診断は、定期健康診断(安衛則第44条第2項)とは異なり、医師が必要でないと認めるときは項目を省略できるという規定はない。
(3)正しい。事業場において実施した雇入時の健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者については、その結果に基づき、健康を保持するために必要な措置について、健康診断が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。
(4)正しい。安衛則第51条は、雇入時の健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければならないと定めている。
(5)正しい。雇入時の健康診断の結果の所轄労働基準監督署長について定めた安衛則第52条は、雇入れ時の健診結果について報告を求めていない。