第2種衛生管理者試験 2021年10月公表 問25

腎臓及び尿の役割




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 このページは、試験協会が2021年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年10月公表問題 問25 難易度 腎臓の働き及び尿に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
腎臓の働き及び尿

問25 腎臓・泌尿器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)腎臓の皮質にある腎小体では、糸球体からたん白質以外の血漿しょう成分がボウマンのうし出され、原尿が生成される。

(2)腎臓の尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分及び身体に必要な成分が血液中に再吸収され、残りが尿として生成される。

(3)尿は淡黄色の液体で、固有の臭気を有し、通常、弱酸性である。

(4)尿の生成・排出により、体内の水分の量やナトリウムなどの電解質の濃度を調節するとともに、生命活動によって生じた不要な物質を排出する。

(5)尿の約95%は水分で、約5%が固形物であり、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿を採取して尿素窒素の検査が広く行われている。

正答(5)

【解説】

何故か試験協会は、衛生管理者には腎臓の詳しい働きについての知識が必要だと思っているらしい。これがよく出題されるのである。

もともと腎臓という臓器は、太古の動物が海から川へ進出したときに手に入れたものである。彼らの皮膚は半透膜だったため、真水の川では塩分の多い体内に水が侵入してくるので、これを体外に排出する仕組みが必要になったのである。現在では、血液中の老廃物を尿として体外に排出する機能を有している。

老廃物を血液から濾しとる仕組みとして、腎臓内にはネフロンと呼ばれる多数の「装置」が備わっている。個々のネフロンは腎小体(「糸球体」と「ボウマン囊」)及び「尿細管」という組織から成り立っている。

血液は、固体成分である血球(赤血球、白血球、血小板等の細胞成分)と、血漿と呼ばれる液体から成り立っている。そして、血漿には、各種の蛋白質の他、糖質、アミノ酸、電解質、尿素などが溶け込んでいる。

血液は、「糸球体」「ボウマン囊」「尿細管」の順で流れる。最初の糸球体を血液が通過するとき、蛋白質や血球は通過できず、それ以外の糖質、アミノ酸、電解質、尿素などはボウマン囊へ濾し出される。ただ、糖質、アミノ酸、電解質などは有用なものなので、尿細管で大部分の水分と共に再吸収される。残りの尿素などが尿として排出されるのである。

(1)正しい。上記で述べた通り。

(2)正しい。上記で述べた通り。

(3)正しい。尿が淡黄色の液体で、固有の臭気を有していることは、とくに問題はあるまい。また、尿は、平均するとpH6.0前後であり、弱酸性である。ただ、直前に食べた食物によって変動し、pH4.5~8.0であればとくに異常ではない。一般に動物性食品を摂取すると酸性側に、植物性食品を過剰摂取するとアルカリ性側に傾く。

(4)正しい。多量に水を飲むとうすい尿が多量に出るし、水分を制限すれば濃い尿が少量しか出ない少ししか出ないことは、日常、経験している。尿の量によって体内の水分を調節しているのである。これは血液中の電解質(血液に溶けているカルシウム、ナトリウム、カリウムなど)についても同様で、尿の生成・排出により、細胞外液のナトリウムなどの電解質の濃度を調節している。なお、生命活動によって生じた不要な物質を排泄することは上記で述べた通り。

(5)誤り。尿の約95%は水分で約5%が固形物とあるが、この点は衛生管理者試験では正しいとしてよい。しかし、これはそのときの状況によって大きく変わる。ちなみにWikipediaの尿によれば尿の約98%は水分で、約2%が固形物とされるが、文献によってかなり異なる。

また、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われていることは正しい。

しかし、一般的な健康診断では、その検査項目としては、尿蛋白、尿潜血、尿等、尿ウロビリノーゲンなどの成分の検査や、尿の沈殿物を顕微鏡でみる尿沈渣検査などが行われる。尿素窒素(BUN=Blood urea nitrogen)の検査は、腎臓の機能などを調べるスクリーニング検査であり、人間ドックなどでは実施されるが健康診断で広く行われているとはいえない。

2021年10月30日執筆