第2種衛生管理者試験 2021年4月公表 問26

血液




問題文
トップ
合格

 このページは、試験協会が2021年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2021年04月公表問題 問26 難易度 血液に関する基本的な問題である。確実に正答できるようにしておこう。
血液循環

問26 血液に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)血漿しょう中のたん白質のうち、アルブミンは血液の浸透圧の維持に関与している。

(2)血漿中の水溶性蛋白質であるフィブリンがフィブリノーゲンに変化する現象が、血液の凝集反応である。

(3)赤血球は、損傷部位から血管外に出ると、血液凝固を促進させる物質を放出する。

(4)血液中に占める白血球の容積の割合をヘマトクリットといい、感染や炎症があると増加する。

(5)血小板は、体内に侵入してきた細菌やウイルスを貪食する働きがある。

正答(1)

【解説】

(1)正しい。まず、アルブミンが血漿中の蛋白質であることは正しい。

次に、「浸透圧」について簡単に説明しよう。液体が半透膜によって2つの区分に分けられており、その液体にはある物質(溶質)が溶けているが、その物質は半透膜を透過できないとしよう。そのとき液体は、半透膜を通して濃度の薄い方から濃い方へ移動し、両側の濃度を等しくしようとするのである。

分かりにくければ、半透膜に液体の分子は通過できるが溶質の分子は通過できない孔があると考えて欲しい。一定期間に濃度の低い側(10mol%としよう)からは液体分子が9回、溶質分子は1ぶつかる。その間に濃度の高い側(60mol%としよう)からは、液体分子が4回、溶質分子は6ぶつかる。液体分子は孔を通り抜けられるので、差し引き5つの分子が、濃度が高い側に異動するのである。すなわち、濃度の低い側から濃度の高い側に液体が浸透する圧力があるように見える。これが「浸透圧」である。

さて、アルブミンは血管外に60%程度存在するが、血管の膜を透過することはできず、血管の近くではアルブミン濃度は血管の外側の方が低い。そのため、濃度の濃い血管の内側への水分の移動(浸透)に寄与しているのである。

(2)誤り。フィブリノーゲンからフィブリン・モノマーが作られ、それが重合して繊維素となったものがフィブリンである。血液の凝固反応とは、フィブリノーゲンがフィブリンに変化する現象である。

また、凝集とは、採血管内で血小板や赤血球が凝集した状態のことである。本肢は、凝固の説明で、しかもフィブリノーゲンとフィブリンが逆になっている。

(3)誤り。赤血球は血液凝固とは関係がない。血液凝固にかかわるのは(2)のフィブリン・モノマーや血小板である。

血小板は、血管内皮細胞の下にあるコラーゲン線維と結合して活性化し、細胞質から他の血小板を集める物質を放出して血小板を集めて凝集して傷口をふさぐ。本肢は、血小板を赤血球と置き換えて誤りとしたものであろう。

(4)誤り。ヘマクリット(HCT)とは、血液中に占める血球成分の容積の割合のことである。実際には血球の96%が赤血球なので、実質的にはヘマトクリットとは血液中の赤血球の容積割合を意味すると考えてよい。増加する原因としては、脱水症、多血症などがあるが、一時的な体調の影響でも増加する。

なお、白血球の増加する要因として、感染症などの炎症、悪性腫瘍、血液疾患、薬物などがある。

(5)誤り。体内に侵入してきた細菌やウイルスを貪食する働きがあるのは、白血球の一種であるマクロファージ(貪食細胞)である。血小板は、血管壁が損傷したときにその傷口をふさぐ役割を有する。

2021年04月25日執筆