第2種衛生管理者試験 2021年4月公表 問18

一次救命処置




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合格

 このページは、試験協会が2021年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年04月公表問題 問18 難易度 一次救命処置に関する問題は、基本を押さえておけば確実に正答できる。落とさないようにしよう。
一次救命処置

問18 一次救命処置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)傷病者に反応がある場合は、回復体位をとらせて安静にして、経過を観察する。

(2)一次救命処置は、できる限り単独で行うことは避ける。

(3)口対口人工呼吸は、傷病者の鼻をつまみ、1回の吹き込みに3秒以上かけて傷病者の胸の盛り上がりが見える程度まで吹き込む。

(4)胸骨圧迫は、胸が約5cm沈む強さで、1分間に100~120回のテンポで行う。

(5)AED(自動体外式除細動器)による心電図の自動解析の結果、「ショックは不要です」などのメッセージが流れた場合には、すぐに胸骨圧迫を再開し心肺生を続ける。

正答(3)

【解説】

本問は、JRC蘇生ガイドライン2015(以下、本問の解説中において「ガイドライン」という。)からの出題である。

2010年版の旧ガイドラインと大きくは変わっていないが、胸骨圧迫のテンポが「少なくとも100回/分」から「100~120回/分」に変更されるなどいくつか重要な改定がある。

(1)正しい。ガイドラインでは、傷病者に反応がある場合についての記載はないが、救急救命措置を行っているときについて、「明らかにROSCと判断できる反応(呼びかけへの応答、普段通りの呼吸や目的のある仕草)が出現した場合には、十分な循環が回復したと判断してCPRをいったん中止してよい」との記述がある。なお、CPRとは「胸骨圧迫と人工呼吸による心肺蘇生」のことである。

(2)正しい。ガイドラインには、傷病者の「反応がなければその場で大声で叫んで周囲の注意を喚起する」との記載がある。他人に任せられることは、分担して任せた方がよいことは当然である。なお、119番通報やAEDの手配は、「誰かやってくれ」という依頼ではなく、明確に指名して依頼する。そうしないと誰もやってくれない。

(3)誤り。口対口人工呼吸は、約1秒かけて胸の盛り上がりが見える程度の量を2回吹き込む。なお、傷病者の気道を確保してから鼻をつまむことは正しい。

なお、口対口人工呼吸は、人工呼吸方法の訓練を受けていない場合、人工呼吸用のマウスピース等がない場合、及び血液や嘔吐物などにより感染危険がある場合は避ける必要がある。

胸骨圧迫

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(4)正しい。ガイドラインでは、成人の場合、胸骨圧迫は「深さは胸が約5cm 沈むように圧迫するが、6cmを超えないようにする。1分間あたり100~120回のテンポで圧迫する」とされている。肋骨の骨折は気にする必要はない(※)

※ 肋骨が骨折することはないという意味ではない。肋骨の骨折では死亡のリスクは高くない(治療によって完治することが多い)が、心臓が動かなければ確実に死亡するか、重篤な後遺症を残す。従って、心臓を動かすことを優先させるのである。

心臓マッサージに限らず、緊急的な救急救命措置では、素人が処置するとかえって被災者の状況を悪化させてしまうことがあり得る。その場合でも、悪意や重大な過失がなければ民法第698条により民事上の責任を負うことはない。刑事上の責任についても刑法第37条により、生じた害が避けようとした害の程度を超えなければ罰せられない。なお、消防庁の「救急・救助(レスキュー)に 関する質問」参照。

なお、心臓マッサージは、できるだけ中断をしないように行うことが望ましい。交代する場合も、中断の時間はできるだけ短くし、救急車が到着して、隊員が止めてよいというまで続けることが必要である。

(5)正しい。電気ショックの必要性はAEDが判断する(※)。なお、心電図解析中は被災者に触れないこと。

※ AEDが電気ショックの必要がないと判断すれば、除細動ボタンを押しても電気は流れない。なお、電気ショックの必要がない場合だけでなく、電気ショックでは治せない場合も、電気ショックの必要がないと判断する。

なお、電気ショックの必要がないとAEDが判断した場合であっても、2分間が経過すると、再びAEDが心電図・解析評価を行うとの音声を出すので、心臓マッサージを中断して音声ガイダンスの指示に従って、これを繰り返す。

※ 動画は総務省消防庁のサイト「9.救命の連鎖(7)~ 一次救命処置(AEDの使用手順)」より同サイトのルールに従い引用

2021年04月24日執筆