問9 労働基準法における労働時間等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、労使協定とは、「労働者の過半数で組織する労働組合(その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と使用者との書面による協定」をいうものとする。
(1)1日8時間を超えて労働させることができるのは、時間外労働の労使協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合に限られている。
(2)労働時間に関する規定の適用については、事業場を異にする場合は労働時間を通算しない。
(3)所定労働時間が7時間30分である事業場において、延長する労働時間が1時間であるときは、少なくとも45分の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
(4)監視又は断続的労働に従事する労働者であって、所轄労働基準監督署長の許可を受けたものについては、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない。
(5)フレックスタイム制の清算期間は、6か月以内の期間に限られる。
このページは、試験協会が2020年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2020年10月公表問題 | 問09 | 難易度 | 労基法上の労働時間は、過去問に類例がない。やや難問だっただろうか。 |
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労基法上の労働時間制度 | 5 |
問9 労働基準法における労働時間等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、労使協定とは、「労働者の過半数で組織する労働組合(その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と使用者との書面による協定」をいうものとする。
(1)1日8時間を超えて労働させることができるのは、時間外労働の労使協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合に限られている。
(2)労働時間に関する規定の適用については、事業場を異にする場合は労働時間を通算しない。
(3)所定労働時間が7時間30分である事業場において、延長する労働時間が1時間であるときは、少なくとも45分の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
(4)監視又は断続的労働に従事する労働者であって、所轄労働基準監督署長の許可を受けたものについては、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない。
(5)フレックスタイム制の清算期間は、6か月以内の期間に限られる。
正答(4)
【解説】
(1)誤り。労基法第32条第2項は、明確に1日に8時間を超えて労働させてはならないとしている。
これ以上に働かせたければ、本肢の時間外労働の労使協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出る方法がある。ここで「時間外労働の労使協定」とは、労基法第36に定める労使協定、いわゆる「36協定」のことである。
ただ、わが国の労働時間制度は、これ以外にも極めて柔軟なものとなっており、変形労働時間制(1月単位(同法第32条の2)、1年単位(第32条の4)、1週間単位の非定型的(第32条の5)、フレックスタイム制(第32条の3))、みなし労働時間制(第38条の2)、裁量労働制(第38条の3)など多くの方法が定められている。
そして、これらのいずれについても、特定の1日について8時間を超えて就労させることが可能になっている。ただし、これらの制度を採用するためには、ほとんどの場合、それぞれの労使協定が必要(※)になる。
※ これらの労使協定は、本肢の「時間外労働の労使協定」には当たらない。また、1月単位の変形労働時間制の場合は、労使協定でなくとも就業規則等による定めでよい。さらに、みなし労働時間制については、労使協定や就業規則等による定めは必要ではない。
さらに、同法第33条の「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働」については、労使協定を締結しなくても行わせることが可能である。
以上により、同法第36条の「時間外労働の労使協定を締結」を締結しなくとも、特定の1日について8時間を超えて労働させることができる場合があるので、本肢は誤りである。
なお、当然のことながら、このような制度を採用していれば、事業者は労働者の労働時間を把握しなくてもよいということではない。また、過労死等が発生すれば民事上の責任や社会的責任を負うことがあり得るということは理解しておくべきである。
【労働基準法】
(労働時間)
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
第32条の2 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
② 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
第32条の3 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
一~四 (略)
②~④ (略)
第32条の4 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第三十二条の規定にかかわらず、その協定で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
一~五 (略)
②~④ (略)
第32条の5 使用者は、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であつて、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のものに従事する労働者については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、第三十二条第二項の規定にかかわらず、一日について十時間まで労働させることができる。
②及び③ (略)
(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
第33条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
②及び③ (略)
(時間外及び休日の労働)
第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
②~⑪ (略)
第38条の2 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
②~③ (略)
第38条の3 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。
一~六 (略)
② (略)
(2)誤り。これは当然であろう。ある企業がA工場で8時間働かせた労働者を、同じ日にB工場で8時間働かせてよいわけがあるまい。労基法第38条第1項は、労働時間に関する規定の適用については、事業場を異にする場合においても労働時間を通算するとしている。
【労働基準法】
(時間計算)
第38条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
② (略)
(3)誤り。本肢の場合労働時間が8時間を超えているので、労基法第34条第1項の規定により、少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。45分では足りない。
【労働基準法】
(休憩)
第34条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
②及び③ (略)
(4)正しい。労基法第41条(第三号)の規定により、監視又は断続的労働に従事する労働者であって、所轄労働基準監督署長の許可を受けたものについては、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない。
【労働基準法】
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一及び二 (略)
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
(5)誤り。労基法第32条の3第1項の規定により、フレックスタイム制の清算期間は、3か月以内の期間に限られる。6か月以内ではない。
【労働基準法】
第32条の3 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
一 (略)
二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
三及び四 (略)
②~④ (略)