第2種衛生管理者試験 2019年4月公表 問29

筋肉の特徴とそのはたらき




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合格

 このページは、試験協会が2019年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年04月公表問題 問29 難易度 筋肉に関する問題は頻出事項である。確実に正答できるようにしておこう。
筋肉・運動

問29 筋肉に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)筋肉は、神経から送られてくる刺激によって収縮するが、神経に比べて疲労しやすい。

(2)強い力を必要とする運動を続けていても、筋肉を構成する個々の筋線維の太さは変わらないが、その数が増えることによって筋肉が太くなり筋力が増強する。

(3)筋肉中のグリコーゲンは、筋肉の収縮時に酸素が不足していると、水と二酸化炭素にまで分解されず乳酸になる。

(4)筋肉が収縮して出す最大筋力は、筋肉の単位断面積当たりの平均値をとると、性差又は年齢差がほとんどない。

(5)荷物を持ち上げたり屈伸運動をするとき、関節運動に関与する筋肉には、等張性収縮が生じている。

正答(2)

【解説】

(1)誤っているとはいえない。本肢の前半の筋肉が神経から送られてくる信号によって収縮することについては問題はないだろう。

次に、筋肉が神経に比べて疲労しやすいかどうかに答えるためには、まず「疲労」とは何かを明確にする必要がある。日本疲労学会は「疲労」を「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」と定義している。

そうなると、「疲労」とは「筋肉」又は「神経」が独自に起こし、その起きやすさを比較できるようなものなのか、やや疑問は湧く。そこで切り口を変えて、「疲労」を生理的にみて、その原因は何なのかを考えてみよう。

古典的な考え方によれば、筋肉が疲労するのは、筋肉が運動するためにブドウ糖を利用するとき、酸素が十分に供給されないと乳酸が生じ、この乳酸によって筋肉が十分に働けなくなった常態であるとされている。あるいは、傷付いた筋繊維などが回復する際に、炎症を起こして痛み物質が発生して、疲労が起きるという考え方もある。これらによれば、本肢は誤っているとはいえないだろう。

もっとも、疲労が乳酸によるとする考え方は誤りだとする説もある。それによると、疲労の原因は、活性酸素による酸化ストレスで神経細胞が破壊されることだとされている。

こうなると、問題文のいう「筋肉は神経に比べて疲労しやすい」という部分は、やや意味不明であり、正誤もはっきりしない。しかし(2)が明らかに誤っているので、一応、誤りではないとしておく。

(2)誤り。強い力を必要とする運動を続けていると、筋肉を構成する個々の筋線維が太くなってゆくことによって筋肉全体が太くなり筋力が増強する。筋線維の数はほとんど変化しない。なお、ビタミンDをボランティアに投与したところ、筋線維数と太さが増加したという報告もあり、筋線維の数が全く変化しないというわけではない。

(3)正しい。筋肉中のグリコーゲンは、筋肉の収縮時に酸素が不足していると、水と二酸化炭素にまで分解されず乳酸になる。この乳酸が疲労の原因であるとする考え方が最近までは一般的であった。

(4)正しい。筋肉が収縮して出す最大筋力は、筋肉の単位断面積当たりの平均値をとると、性差又は年齢差がほとんどない。個人による筋力の差は、筋線維全体の太さによる。

(5)正しい。筋収縮は、等張性収縮、等尺性収縮及び等速性収縮の3つに分かれる。

また、等張性収縮とは、筋肉を現実に伸縮しながら力を出す状態だと考えればよい。荷物を持ち上げたり屈伸運動をするとき、筋肉は実際に伸縮しているので、等張性収縮が生じている。なお、等張性収縮は、短縮性収縮と伸張性収縮に分けられる。短縮性収縮とは筋肉を縮めながら力を出すことであり、伸張性収縮とは筋肉を伸ばしながら力を出すことである。ダンベルを持って、肘を曲げたり伸ばしたりする場合、曲げるときが短縮性収縮で、伸ばすときは伸張性収縮になる。

等尺性収縮は、筋肉の収縮を伴わずに力を出す状態だと覚えておこう。胸の前で手を合わせて押し合うような状態である。等速性収縮は、一定の速度で動作する状態をいう。

2020年08月23日執筆