第2種衛生管理者試験 2018年10月公表 問25

腎臓の仕組みと尿




問題文
トップ
合格

 このページは、試験協会が2018年10月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2018年10月公表問題 問25 難易度 やや高度な内容だが、なぜか腎臓及び尿に関する問題は頻出する。正答できるようにしておこう。
腎臓及び尿

問25 腎臓又は尿に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 腎機能が正常な場合、糖はボウマン囊中に濾し出されないので尿中には排出されない。

B 腎機能が正常な場合、大部分の蛋白質はボウマン囊中に濾し出されるが、尿細管でほぼ100%再吸収されるので尿中にはほとんど排出されない。

C 尿は淡黄色の液体で、固有の臭気を有し、通常、弱酸性である。

D 尿素窒素(BUN)は、腎臓から排泄される老廃物の一種で、腎臓の働きが低下すると尿中に排泄されず、血液中の値が高くなる。

(1)A,B

(2)A,C

(3)A,D

(4)B,C

(5)C,D

正答(1)

【解説】

何故か試験協会は、衛生管理者には腎臓の詳しい働きについての知識が必要だと思っているらしい。これがよく出題されるのである。

もともと腎臓という臓器は、太古の動物が海から川へ進出したときに手に入れたものである。彼らの皮膚は半透膜だったため、真水の川では塩分の多い体内に水が侵入してくるので、これを体外に排出する仕組みが必要になったのである。現在では、血液中の老廃物を尿として体外に排出する機能を有している。

老廃物をこしとる仕組みとして、腎臓内にはネフロンと呼ばれる多数の「装置」が備わっている。個々のネフロンは腎小体(「糸球体」と「ボウマン囊」)及び「尿細管」という組織から成り立っている。

血液は、「糸球体」「ボウマン囊」「尿細管」の順で流れる。最初の糸球体を血液が通過するとき、蛋白質や血球は通過できず、それ以外の糖質、アミノ酸、電解質、尿素などはボウマン囊へ濾し出される。ただ、糖質、アミノ酸、電解質などは有用なものなので、尿細管で大部分の水分と共に再吸収される。残りの尿素などが尿として排出されるのである。

A 誤り。正常な腎機能であっても、糖はボウマン囊中に濾し出される。ただし、ほとんどは尿細管で再吸収されるので、尿中に排出されないことは正しい。

B 誤り。腎機能が正常な場合、大部分の蛋白質は糸球体を濾すことはできない。なお、本肢は「蛋白質」を「糖」と修正すれば正しい。

C 正しい。尿は淡黄色の液体で、固有の臭気を有し、通常、弱酸性である。

D 正しい。体内で蛋白質を分解するとアンモニアが作られる。このアンモニアは身体には必要のないものなので、肝臓で尿素に変えられ、腎臓を通して尿として排出される。腎臓の働きが悪くなると、尿素を体外へうまく排出することができなくなるので、血液中の尿素が増加する。

尿素には窒素が含まれるので、健康診断で尿素窒素(BUN=Blood urea nitrogen)を測定することにより、腎臓の機能を調べるのである。そして、血液中の尿素窒素の値が高くなる場合に、腎臓の機能の低下が考えられる。

2020年08月29日執筆