第2種衛生管理者試験 2018年4月公表 問13

照明などの視環境




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合格

 このページは、試験協会が2018年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年04月公表問題 問13 難易度 照明、採光等に関する基本的な知識問題である。確実に正答できるようにしておこう。
照明、採光等

問13 照明、採光などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)前方から明かりをとるとき眼と光源を結ぶ線と視線が作る角度は、45°程度としている。

(2)作業室全体の照度は、作業面の局部照明による照度の5分の1程度になるようにしている。

(3)1カンデラ(㏅)の光源から10m離れた所でその光に垂直な単位面積の面が受ける明るさを1ルクス(㏓)という。

(4)部屋の彩色として、目の高さ以下の壁面は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色を用いるとよい。

(5)室内の彩色で、明度を高くすると光の反射率が高くなることから照度を上げる効果があるが、彩度を高くしすぎると交感神経の緊張を招き、長時間にわたる場合は疲労が生じやすい。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。視野の中に輝度の高い光源があれば、目が疲労し不快感を感じるばかりか、物が見えにくくなる。これがグレア(まぶしさ)である。視線を中心として上下30°の範囲はグレアゾーンと呼ばれ、この範囲には輝度の高い光源をなくすのが照明の基本とされている。45°程度になるように光源の位置を決めていれば、間違いとは言えない。

(2)正しい。近年、省エネのために、全般照明の明るさを落として、作業面に局部照明を併用することで、電力を節約するタスクアンドアンビエント照明方式が広く用いられている。ただ、作業面における水平面照度の変化は、出来るだけ小さいことが望ましい。

かつての衛生管理者の試験では、「全般照明の明るさは局部照明の10分の1以上が望ましい」として正しい肢であるとされていたが、この数値はやや低すぎる。試験協会でも5分の1の方が望ましいと考えたようだ。これでもやや低いように思えるが、誤りとは言えないだろう。

なお、JISZ9110:2010(照明基準総則)によると、部屋全般に平均100(㏓)、作業面(情報端末ディスプレイを除く)に局部的に750(㏓)が推奨されている。この場合、作業面周辺は200~300(㏓)程度の明るさになると想定され、作業面周辺と作業面の照度比はおよそ1:3になる。

また、明石他(※1)によると、「伝票処理などの一般的な事務作業の場合、周辺照度/作業面照度の比が1.0、0.33、0.1のうち、1.0の照明条件下で最も集中でき、企画などの思考を伴う作業の場合、0.1の照明条件で最も集中できることを明らかにした」とされている。

(3)誤り。1ルクス(㏓)は、1カンデラ(㏅)の光源から、1m離れた所において、光軸に垂直な面が受ける明るさをいう。

(4)正しい。部屋の彩色として、目の高さ以下は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色とし、目より上方の壁や天井は、明るい色を用いるとよい。

なお、山津(※2)は、適当なる明度対比として、天井:8.0~9.0、側壁:6.5~8.0、腰羽目:5.0~6.0、床:4.5という米国の基準を紹介している。

(5)正しい。色は有彩色と無彩色で表せる。無彩色とは白黒とグレーのモノトーンのことで、有彩色とは赤、青、黄などの色を持つ彩色である。有彩色は、色相、明度、彩度という3つの性質で表せる。

明度とは、暗いか明るいかという明暗の度合いのことである。まず、本肢の前段の室内の彩色で、明度を高くすると光の反射率が高くなり照度を上げる効果があることは正しい。

また、彩度とは、色の鮮やかさの度合いであり、くすんだ色は彩度が低い。暖色は交感神経に、寒色は副交感神経に作用するとされている。彩度を高くしすぎると交感神経の緊張を招きやすいかどうかは、やや疑問はあるが、衛生管理者試験では正しいとされている。なお、山下他(※3)は学生ボランティアを用いた実験により「Redのvivid(実験に用いた色の中では最も彩度が高い:引用者注)は、各精度を高め、集中力を強化する作用が示唆された」としている。

※1 明石行生他「作業者の集中度と周辺照度/作業面照度の比との関係」(照明学会誌 第80巻 第8A号 1996年)

※2 山津幸夫「色彩調節の実施とその効果その1(工場と事務室)」(照明学会雑誌 第26巻 第7号 1952年)

※3 山下真裕子他「色相及びトーンを変化させた色光における生理的・心理的影響」(日本感性工学会論文誌 第12巻 第2号 2013年)

2020年08月30日執筆