第2種衛生管理者試験 2018年4月公表 問10

労働基準法に基づくフレックスタイム制




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合格

 このページは、試験協会が2018年4月に公表した第2種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年04月公表問題 問10 難易度 フレックスタイムに関する問題は、あまり出題されていない。その意味では難問だったかもしれない。
労働時間・年次有給休暇

問10 労働基準法に基づくフレックスタイム制に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。ただし、常時使用する労働者が10人以上の規模の事業場におけるフレックスタイム制とし、以下の文中において労使協定とは、「労働者の過半数で組織する労働組合(その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と使用者との書面による協定」をいう。

(1)フレックスタイム制を採用するためには、就業規則により始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定め、かつ、労使協定により対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間における総労働時間等を定める必要がある。

(2)フレックスタイム制を採用した場合には、清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、1日8時間又は1週40時間を超えて労働させることができる。

(3)フレックスタイム制に係る労使協定は、所轄労働基準監督署長に届け出る必要はない。

(4)フレックスタイム制の清算期間は、1か月以内の期間に限るものとする。

(5)妊娠中又は産後1年を経過しない女性については、フレックスタイム制による労働をさせることはできない。

正答(5) 法改正により現時点では(3)及び(4)も誤りの肢である。

【解説】

労働基準法の労働時間の規定は、まず 32 条で原則を1週 40 時間、1日8時間と定める。そして、これに対する例外規定という形で、第 32 条の3及び第 32 条の3の2にフレックスタイム制度を定めている。なお、労基法には「フレックスタイム」という言葉は出てこない。法律を作製する人たちは、なぜかカタカナを嫌うのである。

【労働基準法】

(労働時間)

第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

第32条の2 (第1項 略)

 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

第32条の3 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、1週間において同項の労働時間又は1日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。

 この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

 清算期間(その期間を平均し1週間当たりの労働時間が第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

 清算期間における総労働時間

 その他厚生労働省令で定める事項

 清算期間が1箇月を超えるものである場合における前項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分中「労働時間を超えない」とあるのは「労働時間を超えず、かつ、当該清算期間をその開始の日以後1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間を生じたときは、当該期間。以下この項において同じ。)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えない」と、「同項」とあるのは「同条第1項」とする。

 1週間の所定労働日数が五日の労働者について第1項の規定により労働させる場合における同項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分(前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)中「第32条第1項の労働時間」とあるのは「第32条第1項の労働時間(当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、労働時間の限度について、当該清算期間における所定労働日数を同条第2項の労働時間に乗じて得た時間とする旨を定めたときは、当該清算期間における日数を7で除して得た数をもつてその時間を除して得た時間)」と、「同項」とあるのは「同条第1項」とする。

 前条第2項の規定は、第1項各号に掲げる事項を定めた協定について準用する。ただし、清算期間が1箇月以内のものであるときは、この限りでない。

第32条の3の2 使用者が、清算期間が1箇月を超えるものであるときの当該清算期間中の前条第1項の規定により労働させた期間が当該清算期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第33条又は第36条第1項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第37条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。

【労働基準法施行規則】

第12条の3 (第1項 略)

 法第32条の3第4項において準用する法第32条の2第2項の規定による届出は、様式第三号の三により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。

(1)正しい。労基法第32条の3により、就業規則により始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる(これがフレックスタイムということ)旨を定め、かつ、労使協定により対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間における総労働時間等を定めれば、フレックスタイム制度を導入することができる。

(2)正しい。これは当然であろう。フレックスタイム制とは、清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、1日8時間又は1週40時間を超えて労働させることができる制度である。なお、当然のことながら、労働する時間を使用者の側が指定することは認められない。

(3)誤り。働き方改革関連法改正により、清算期間が1か月を超える場合には、フレックスタイム制に係る労使協定は所轄労働基準監督署長に届け出る必要がある(労基法第32条の3第4項が準用する労基法第32条の2第2項)。

(4)誤り。働き方改革関連法改正により、フレックスタイム制の清算期間の上限が3か月となる(労基法第32条の3第1項第2号)

(5)誤り。妊娠中又は産後1年を経過しない女性について、フレックスタイム制を除外する規定はない。そもそもフレックスタイム制とは労働者が自ら労働する時間を決めることができるものであるから、妊産婦について除外する理由がないのである。

2020年08月30日執筆