第1種衛生管理者試験 2025年10月公表 問20

作業環境における有害要因による健康障害




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学習する男性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年10月公表問題 問20 難易度 過去に類似の出題例は多い。ほぼ過去問の学習で正答可能。正答できる必要がある。
作業環境中の有害要因

問20 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)電離放射線の被ばくによる白内障は、晩発障害に分類され、被ばく後、半年~30 年後に現れる。

(2)マイクロ波は、赤外線より波長が短い電磁波で、照射部位の組織を加熱する作用がある。

(3)金属熱は、金属の溶融作業において、高温環境により体温調節中枢が麻することにより発生し、長期間にわたる発熱、関節痛などの症状がみられる。

(4)凍そうは、皮膚組織の凍結死を伴うしもやけのことで、0℃以下の寒冷にばく露することによって発生する。

(5)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。

正答(1)

【解説】

(1)正しい。電離放射線による健康への影響のうち、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを晩発性影響と呼ぶ。

白内障は、晩発性影響であり、被ばく後、発症までの期間は必ずしも明確ではないが、短ければ被ばく後、数か月で発症する例や、数十年後に発症する例もある(※)。半年~30 年後としても誤りとは言えない。

※ 浜田信行他「ヒト水晶体上皮細胞に放射線を照射すると何が起きるか」(Isotope news No.734 2015年)など参照

(2)誤り。文献によって定義は異なるが、マイクロ波の波長は1mm ~1m 程度、赤外線は 700nm ~ 1mm 程度で、マイクロ波の方が波長は長い。なお、電磁波であること、照射部位の組織を加熱する作用があることは正しい。強力なマイクロ波は眼球の水晶体の温度を上げるため白内障を発症するリスクがあり、労基則別表第1の2には「マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患」が挙げられている。

(3)誤り。金属熱は、鉄、アルミニウムなどの金属を溶融する作業などで金属のヒュームを吸入することにより発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。あくまでも金属による急性中毒であって「高温環境により体温調節中枢が麻することにより発生」するものではない。

また、一般に予後は良いとされ、症状はあまり長期にわたって続くことはない。

(4)誤り。凍瘡とは、普通の「しもやけ」のことである。氷点下のような極寒条件よりも、気温5℃前後の環境や、昼夜の気温差が激しいときなどに起こる。

(5)誤り。潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた窒素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。「酸素」とする本肢は誤っている。

2025年10月04日執筆

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