第1種衛生管理者試験 2025年10月公表 問18

作業環境測定の実施方法と評価方法




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年10月公表問題 問18 難易度 作業環境測定に関するやや詳細な問題。かなりの難問だが、すべての肢が過去問に出題されている。
作業環境測定

問18 厚生労働省の「作業環境測定基準」及び「作業環境評価基準」に基づく作業環境測定及びその結果の評価に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)A測定の第二評価値が管理濃度を超えている単位作業場所は、B測定の結果に関係なく第三管理区分になる。

(2)A測定における測定点の高さの範囲は、床上100㎝以上150㎝以下である。

(3)A測定は、原材料を反応槽へ投入する場合など、間欠的に大量の有害物質の発散を伴う作業における最高濃度を知るために行う測定である。

(4)評価の指標として用いられる管理濃度は、個々の労働者の有害物質へのばく露限界を示すものである。

(5)B測定の測定値が管理濃度を超えている単位作業場所は、A測定の結果に関係なく第三管理区分になる。

正答(1)

【解説】

厚生労働省の作業環境測定に関する2つの告示「作業環境測定基準」及び「作業環境評価基準」に関する設問である。

なお、作業環境測定基準等においては、粉じんその他の項目について、それぞれに規定があるので、粉じんの測定を例にとって解説している。

(1)正しい。A測定による評価は次表のようになり、総合的な評価はA測定による評価とB測定による評価の悪い方となる。従って、本肢の場合はB測定の結果に関係なく第三管理区分となる。

管理区分 評価値と測定対象物に係る別表に掲げる管理濃度との比較の結果
第一管理区分 第一評価値が管理濃度に満たない場合
第二管理区分 第一評価値が管理濃度以上であり、かつ、第二評価値が管理濃度以下である場合
第三管理区分 第二評価値が管理濃度を超える場合

(2)誤り。作業環境測定基準によるA測定における測定点の高さの範囲の原則(※)は、次表のようになっている。床上100㎝以上150㎝以下とはされていない。

※ いくつかの例外が定められている。

表:作業環境測定の位置(原則)
測定対象 測定位置 床上高さ 最少
測定数
粉じん、特定化学物質、石綿、鉛及び有機溶剤等 単位作業場所の床面上に6m以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点 50cm以上、150cm以下
気温、湿度等 単位作業場所の中央部 50cm以上、150cm以下
騒音 単位作業場所の床面上に6m以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点 120cm以上、150cm以下
坑内の作業場 坑内における切羽と坑口(切羽と坑口との間に坑の分岐点がある場合には、当該切羽に最も近い坑の分岐点)との中間の位置及び切羽 それぞれ1
建築物の室 建築物の室の中央部 75cm以上、120cm以下
線量当量率等 単位作業場所
酸素及び硫化水素 作業における空気中の酸素及び硫化水素の濃度の分布の状況を知るために適当な位置

(3)誤り。A測定は、作業環境評価基準第2条第1項第一号の定義により、作業環境測定基準第2条第1項第一号から第二号によって行う測定である。そして、作業環境測定基準第2条第1項第二号により、A測定は作業が定常的に行われている時間に行う。従って、最高濃度は、A測定の結果により評価されるべきものではない。

なお、B測定は発散源に近接する場所で作業が行われる単位作業場所において、A測定に加えて行うものである。B測定は、作業環境評価基準第2条第1項第二号の定義により、作業環境測定基準第2条第1項第二号の二によって行われる測定である。そして、作業環境測定基準第2条第1項第二号の二により、B測定は、濃度が最も高くなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において測定を行う。

原材料を反応槽へ投入する場合など、間欠的に有害物質の発散を伴う作業による気中有害物質の気中濃度の測定をA測定のみによって行うかB測定も併せて行うかは、発散源に近接する場所において作業が行われるかどうかによって決めるべきである。

【作業環境評価基準】

(測定結果の評価)

第2条 事業者は、令第六条第一号の高圧室内作業については、高圧室内作業主任者免許を受けた者のうちから、作業室ごとに、高圧室内作業主任者を選任しなければならない。

 A測定(作業環境測定基準第二条第一項第一号から第二号までの規定により行う測定(作業環境測定基準第十条第四項、第十条の二第二項、第十一条第二項及び第十三条第四項において準用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)のみを行った場合(表略)

 A測定及びB測定(作業環境測定基準第二条第一項第二号の二の規定により行う測定(作業環境測定基準第十条第四項、第十条の二第二項、第十一条第二項及び第十三条第四項において準用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)を行った場合(表略)

2~4 (略)

【作業環境測定基準】

(粉じんの濃度等の測定)

第2条 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号。以下「令」という。)第二十一条第一号の屋内作業場における空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度の測定は、次に定めるところによらなければならない。

一及び一の二 (略)

 A測定及びB測定(作業環境測定基準第二条第一項第二号の二の規定により行う測定(作業環境測定基準第十条第四項、第十条の二第二項、第十一条第二項及び第十三条第四項において準用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)を行った場合(表略)

二の二 土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの発散源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所にあっては、前三号に定める測定のほか、当該作業が行われる時間のうち、空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度が最も高くなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において測定を行うこと。

三及び四 (略)

2~4 (略)

(4)誤り。管理濃度は、有害物質に関する作業環境の状態を単位作業場所の作業環境測定結果から評価するための指標として設定されたものである。具体的には、作業環境測定基準の別表に定められている。

(5)誤り。A測定とB測定を併せて行う場合は、A測定の測定値を用いて求めた第一評価値及び第二評価値並びにB測定の測定値に基づき、以下の表によって、単位作業場所を第一管理区分から第三管理区分までのいずれかに区分する。

B測定の測定値が管理濃度を超えている場合であっても、A測定の結果によっては第二管理区分になることがある。

【総合判定】

A測定 X<A2 ①第3管理区分 ④第3管理区分 ⑦第3管理区分
A2≦X≦A1 ②第2管理区分 ⑤第2管理区分 ⑧第3管理区分
A1<X ③第1管理区分 ⑥第2管理区分 ⑨第3管理区分
A1:第1評価値、
A2:第2評価値、
B:B測定結果、X:管理濃度
B<X X≦B≦1.5X 1.5X<B
B測定
2025年10月04日執筆