問16 有機溶剤の人体に対する影響に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)脂溶性があり、脂肪の多い脳などに入りやすい。
(2)呼吸器の症状には、咳、上気道の炎症などがある。
(3)低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、めまい、不眠などの不定愁訴がみられる。
(4)皮膚や粘膜に対する症状には、黒皮症、鼻中隔穿孔などがある。
(5)肝機能障害や腎機能障害を起こすものがある。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2025年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
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2025年10月公表問題 | 問16 | 難易度 | 有機溶剤による健康障害についての基本的な問題である。確実に正答できなければならない。 |
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有機溶剤の人体への影響 | 3 |
問16 有機溶剤の人体に対する影響に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)脂溶性があり、脂肪の多い脳などに入りやすい。
(2)呼吸器の症状には、咳、上気道の炎症などがある。
(3)低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、めまい、不眠などの不定愁訴がみられる。
(4)皮膚や粘膜に対する症状には、黒皮症、鼻中隔穿孔などがある。
(5)肝機能障害や腎機能障害を起こすものがある。
正答(4)
【解説】

有機溶剤の人体に対する影響などというと難しく聞こえるが、酒類もエタノールの濃度が5wt%を超えれば有機溶剤である。
アルコールによる影響を考えれば、簡単に正答に達することができる。本問でも(4)を除けば、アルコールの習慣的な飲用で起きることがある疾病である。
(1)正しい。有機溶剤の特徴として脂溶性に富むこと、揮発性が大きいことが挙げられる。このため、脂肪の多い脳などに入りやすい。
(2)正しい。高濃度の有機溶剤を吸入すると急性気管支炎に似た症状が生じ、気管や気管支の炎症が起きて咳が出るようになる。
(3)正しい。低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴がみられる。
(4)誤り。有機溶剤は、様ざまな皮膚障害を引き起こすが、黒皮症や鼻中隔穿孔がみられることはない。アルコール依存症で、黒皮症や鼻中隔穿孔がみられるという話は聞いたことがないだろう。
なお、黒皮症は砒素によって、鼻中隔穿孔はクロム、砒素などによって発症することがある。
(5)正しい。血液中の有機溶剤は、そのままでは分子量が小さく、水溶性の物を除けば腎臓の糸球体で濾過されても尿細管から再吸収されてしまう。腎臓は、そのとき高濃度の有機溶剤にさらされることとなり、多くの有機溶剤は腎機能障害をもたらす。
また、有機溶剤は、一部は呼気から排出されるが、肝臓で分解されて排出される。そのため肝臓に影響を与え、肝機能障害を起こすことがある。