第1種衛生管理者試験 2025年10月公表 問13

粉じんによる健康障害




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年10月公表問題 問13 難易度 やや高度な選択肢もあるが、じん肺の基本を押さえておけば正答できる問題である。
じん肺と合併症

問13 粉じんによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)米杉、ラワンなどの木材粉じんは、ぜんそくを起こすことがある。

(2)じん肺の自覚症状は、初期にはあまりみられないが、進行するとせきたん、呼吸困難などがみられる。

(3)じん肺は、続発性気管支炎、肺結核などを合併することがある。

(4)石綿肺では、胸膜の肥厚(プラーク)、胸膜の石灰化などがみられる。

(5)けい肺は、鉄、アルミニウムなどの金属粉じんを吸入することによって発症するじん肺である。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。昭和45年1月7日基発第2号「米杉等による気管支ぜん息等の予防について」の記のⅠの「1」には「米杉、ネズコ等の木材には特異な成分(例えば、nezukone)が含まれており、これらの吸入をくりかえすと、気管支炎のみにとどまらず、気管支ぜん息を発生する」とされ、「2 気管支ぜん息等を発生させるおそれのある木材の種類」には「米杉、ネズコ、リョウブ、ラワン」が挙げられている。

(2)正しい。肺の機能は十分な余裕があるため、じん肺の自覚症状は、初期にはあまりみられない。症状の初期には、空気をはき出すのが難しくなる気道系の障害が現れ、さらに症状が進むと、肺そのものが硬くなったり、空気の出入りする量が減少したりする。さらに症状が進むと、咳、痰、喘鳴ぜんめい、息切れなどの症状が現れ、呼吸も困難になる。

(3)正しい。じん肺の合併症はじん肺法施行規則第1条に定められている。具体的には、①肺結核、②結核性胸膜炎、③続発性気管支炎、④続発性気管支拡張症、⑤続発性気胸及び⑥原発性肺がんの6種類である。これはすべて覚えておく必要がある

【じん肺法】

(定義)

第2条 (第1項 略)

 合併症の範囲については、厚生労働省令で定める。

 (略)

【じん肺法施行規則】

(合併症)

第1条 じん肺法(以下「法」という。)第二条第一項第二号の合併症は、じん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者に係るじん肺と合併した次に掲げる疾病とする。

 肺結核

 結核性胸膜炎

 続発性気管支炎

 続発性気管支拡張症

 続発性気胸

 原発性肺がん

(4)正しい。石綿肺では、胸膜の肥厚(プラーク)、胸膜の石灰化などがみられる。胸膜プラークは、石綿小体とともに、石綿ばく露の指標となる医学的な所見である。

肺の石灰化は、日本では石綿ばく露以外には発症しないとされている。石綿ばく露から 20 年以降に肺の一部が石灰化することがある。40 年後には約3分の1以上で石灰化が認められる。

(5)誤り。けい肺は、遊離けい酸の粉じんを吸入することにより起こるじん肺である。なお、アルミニウム粉じんによるものをアルミニウム肺と呼ぶことがある。

2025年10月04日執筆