第1種衛生管理者試験 2025年10月公表 問09

有機溶剤中毒予防規則による措置




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学習する男性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年10月公表問題 問09 難易度 有機則は銀出事項である。過去問を学習していれば正答できる問題である。
有機則の規定

問9 有機溶剤等を取り扱う場合の措置について、有機溶剤中毒予防規則に違反しているものは次のうちどれか。

ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。

(1)地下室の内部で第一種有機溶剤等を用いて作業を行わせるとき、その作業場所に局所排気装置を設け、有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。

(2)地下室の内部で第二種有機溶剤等を用いて作業を行わせるとき、その作業場所にプッシュプル型換気装置を設けブース内の気流の乱れもなく稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。

(3)地下室の内部で第三種有機溶剤等を用いて吹付けによる作業を行わせるとき、その作業場所に全体換気装置を設け有効に稼働させ、作業者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。

(4)屋内作業場に設けた空気清浄装置のない局所排気装置の排気口で、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものの高さを、屋根から2mとしている。

(5)有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものを、屋外の一定の場所に集積している。

正答(3)

【解説】

本問は、(2)及び(3)は、本サイトで解説を掲示している 2017 年4月公表問題以来、初出となっている。正答が(3)なので、やや難易度が高かったかもしれない。

(1)違反とはならない。基本的に呼吸用保護具(防毒マスク等)を使用しなければならないのは、局所排気装置等を使用しない場合である。

地下室の内部で第一種有機溶剤等を用いて作業を行わせるときであっても、その作業場所に局所排気装置を設け、有効に稼働させているのであれば、作業者に送気マスクや有機ガス用防毒マスクを使用させなくても違反とはならない。

【有機則】

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(送気マスクの使用)

第32条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。

 (略)

 第九条第二項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務

2及び3 (略)

(呼吸用保護具の使用)

第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具を使用させなければならない。

 第六条第一項の規定により全体換気装置を設けたタンク等の内部における業務

 第八条第二項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務

 第九条第一項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備及び局所排気装置を設けないで吹付けによる有機溶剤業務を行う屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所における業務

四~七 (略)

2及び3 (略)

(2)違反とはならない。送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させなければならない場合は、有機則第 33 条第1項に規定されているが、本肢の場合は同項の各号のいずれにも該当しない。

なお、有機則の「タンク等の内部」という用語には、同規則第2条第1項(第一号)の定義により、地下室の内部が含まれる。

【有機溶剤中毒予防規則】

(適用の除外)

第2条 (柱書 略)

 (前略)タンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第2項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)(後略)

 (略)

 (略)

(呼吸用保護具の使用)

第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具を使用させなければならない。

 第6条第1項の規定により全体換気装置を設けたタンク等の内部における業務

 第8条第2項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務

 第9条第1項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備及び局所排気装置を設けないで吹付けによる有機溶剤業務を行う屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所における業務

 第10条の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行う屋内作業場等における業務

 第11条の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行う屋内作業場における業務

 プッシュプル型換気装置を設け、荷台にあおりのある貨物自動車等当該プッシュプル型換気装置のブース内の気流を乱すおそれのある形状を有する物について有機溶剤業務を行う屋内作業場等における業務

 屋内作業場等において有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備(当該設備中の有機溶剤等が清掃等により除去されているものを除く。)を開く業務

2及び3 (略)

(3)違反している。有機則第6条第2項の規定により、地下室の内部で第三種有機溶剤等を用いて吹付けによる作業を行わせる場合は、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。全体換気装置では足りない。

なお、本規定については、局所排気装置等の設置が困難な場合における設備の特例(同規則第10条)、他の屋内作業場から隔離されている屋内作業場における設備の特例(同規則第11条)、労働基準監督署長の許可に係る設備の特例(同規則第13条)が定められているが、本肢はこれらに該当するとはされていない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(第三種有機溶剤等に係る設備)

第6条 事業者は、タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。

 事業者は、タンク等の内部において、吹付けによる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(4)違反とはならない。有機則第 15 条の2第2項により、空気清浄装置のない局所排気装置の排気口については、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものであっても、その高さを屋根から1.5mとすれば違反とはならない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(排気口)

第15条の2 事業者は、局所排気装置、プッシュプル型換気装置(第二章の規定により設けるプッシュプル型換気装置をいう。以下この章、第十九条の二及び第三十三条第一項第六号において同じ。)、全体換気装置又は第十二条第一号の排気管等の排気口を直接外気に向かつて開放しなければならない。

 事業者は、空気清浄装置を設けていない局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置(屋内作業場に設けるものに限る。)又は第十二条第一号の排気管等の排気口の高さを屋根から一・五メートル以上としなければならない。ただし、当該排気口から排出される有機溶剤の濃度が厚生労働大臣が定める濃度に満たない場合は、この限りでない。

(5)違反とはならない。有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものを、屋内の一定の場所に集積しているのであるから、有機則第 36 条に適合している。

なお、本肢では「密閉している」とは書かれていないが、仮に密閉していないとしても屋外の一定の場所に集積しておけば違反とはならない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(空容器の処理)

第36条 事業者は、有機溶剤等を入れてあつた空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものについては、当該容器を密閉するか、又は当該容器を屋外の一定の場所に集積しておかなければならない。

2025年10月03日執筆