問7 酸素欠乏症等防止規則に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)し尿を入れたことのあるポンプを修理する場合で、これを分解する作業に労働者を従事させるときは、指揮者を選任し、作業を指揮させなければならない。
(2)パルプ液を入れたことのある槽の内部における作業については、酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。
(3)硫化水素中毒とは、硫化水素の濃度が 10ppm を超える空気を吸入することにより生ずる症状が認められる状態をいう。
(4)タンクの内部その他通風が不十分な場所において、アルゴン等を使用して行う溶接の作業に労働者を従事させるときは、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18%以上に保つように換気し、又は労働者に空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクを使用させなければならない。
(5)第一種酸素欠乏危険作業を行う作業場については、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の硫化水素の濃度を測定しなければならない。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2025年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2025年10月公表問題 | 問07 | 難易度 | 酸欠則は過去問でも頻出で、今回はごく初歩的な内容。確実に正答できる必要がある。 |
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酸欠則 | 1 |
問7 酸素欠乏症等防止規則に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)し尿を入れたことのあるポンプを修理する場合で、これを分解する作業に労働者を従事させるときは、指揮者を選任し、作業を指揮させなければならない。
(2)パルプ液を入れたことのある槽の内部における作業については、酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。
(3)硫化水素中毒とは、硫化水素の濃度が 10ppm を超える空気を吸入することにより生ずる症状が認められる状態をいう。
(4)タンクの内部その他通風が不十分な場所において、アルゴン等を使用して行う溶接の作業に労働者を従事させるときは、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18%以上に保つように換気し、又は労働者に空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクを使用させなければならない。
(5)第一種酸素欠乏危険作業を行う作業場については、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の硫化水素の濃度を測定しなければならない。
正答(2)
【解説】
(1)正しい。酸欠則第25条の2第1項(第二号)の規定により、し尿を入れたことのあるポンプを修理する場合で、これを分解する作業に労働者を従事させるときは、指揮者を選任し、作業を指揮させなければならない。
本肢は 2025 年4月公表問題問8で出題されたものと全く同じ内容である。
なお、過去問では「汚水を入れたことのあるポンプを修理する場合」として出題されたことがある。過去問を学習するときは、その答えだけを覚えるのではなく、条文そのものを参照しておく必要がある。
【酸素欠乏症等防止規則】
(設備の改造等の作業)
第25条の2 事業者は、し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、若しくは分解しやすい物質を入れてあり、若しくは入れたことのあるポンプ若しくは配管等又はこれらに附属する設備の改造、修理、清掃等を行う場合において、これらの設備を分解する作業に労働者を従事させるときは、次の措置を講じなければならない。
一 (略)
二 硫化水素中毒の防止について必要な知識を有する者のうちから指揮者を選任し、その者に当該作業を指揮させること。
三~五 (略)
2 (略)
(2)誤り。酸欠則第2条(第八号)の定義により、本肢の「パルプ液を入れたことのある槽の内部における作業」については、第二種酸素欠乏危険作業となる。そして、同規則第11条第1項の規定により、第二種酸素欠乏危険作業については、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。酸素欠乏危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから選ぶのではない。
なお、本肢は 2024 年4月公表問題問8で出題されたものと全く同じ内容である。
【労働安全衛生法】
(作業主任者)
第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
【労働安全衛生法施行令】
(作業主任者を選任すべき作業)
第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
一~二十 (略)
二十一 別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所における作業
二十二 (略)
別表第六 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係)
一~八 (略)
九 し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きよ、マンホール、溝又はピツトの内部
十~十二 (略)
【酸素欠乏症等防止規則】
(定義)
第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~七 (略)
八 第二種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険場所のうち、令別表第六第三号の三、第九号又は第十二号に掲げる酸素欠乏危険場所(同号に掲げる場所にあつては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。)における作業をいう。
(作業主任者)
第11条 事業者は、酸素欠乏危険作業については、第一種酸素欠乏危険作業にあつては酸素欠乏危険作業主任者技能講習又は酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、第二種酸素欠乏危険作業にあつては酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから、酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。
2及び3 (略)
(3)正しい。酸欠則第2条(第四号)の定義により、硫化水素中毒とは、硫化水素の濃度が 10ppm を超える空気を吸入することにより生ずる症状が認められる状態をいうとされている。
なお、本問では、本肢のみが、本サイトで解説文を載せている 2017 年4月公表問題以降で初出である。
【酸素欠乏症等防止規則】
(定義)
第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~三 (略)
四 硫化水素中毒 硫化水素の濃度が百万分の十を超える空気を吸入することにより生ずる症状が認められる状態をいう。
五~八 (略)
(4)正しい。酸欠則第 21 条第1項の規定そのままである。ここで、「アルゴン等を使用して」とあるのはミグ溶接、マグ溶接及びティグ溶接に用いられるシールドガスにアルゴン等が混入されている場合のことである。アークをシールドするためにトーチの先端からアルゴンガスや二酸化炭素などを吹き付けるので、酸欠や一酸化炭素中毒のリスクがある。
なお、本肢は 2020 年 10 月公表問題問7で出題されたものと全く同じ内容である。
【酸素欠乏症等防止規則】
(保護具の使用等)
第5条の2 事業者は、前条第1項ただし書の場合においては、同時に就業する労働者の人数と同数以上の空気呼吸器等(空気呼吸器、酸素呼吸器又は送気マスクをいう。以下同じ。)を備え、労働者にこれを使用させなければならない。
2及び3 (略)
(溶接に係る措置)
第21条 事業者は、タンク、ボイラー又は反応塔の内部その他通風が不十分な場所において、アルゴン、炭酸ガス又はヘリウムを使用して行なう溶接の作業に労働者を従事させるときは、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
一 作業を行なう場所の空気中の酸素の濃度を18パーセント以上に保つように換気すること。
二 労働者に空気呼吸器等を使用させること。
2~4 (略)
(5)誤り。第一種酸素欠乏危険作業を行う作業場については、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の酸素の濃度を測定しなければならない。硫化水素の濃度を測定する必要はない。
第一種酸素欠乏危険作業とは酸素欠乏のおそれがある場所での作業である。酸素欠乏と硫化水素中毒のおそれがある場所での作業は第二種は酸素欠乏危険作業である。
なお、本肢は 2025 年4月公表問題問8で出題されたものと全く同じ内容である。
【酸素欠乏症等防止規則】
(作業環境測定等)
第3条 事業者は、令第21条第九号に掲げる作業場について、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の酸素(第二種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあつては、酸素及び硫化水素)の濃度を測定しなければならない。
2 (略)