第1種衛生管理者試験 2025年10月公表 問01

衛生管理体制




問題文
トップ
学習する男性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、下表の左欄、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2025年10月公表問題 問01 難易度 過去問の一部の肢を入れ替えただけの問題。本問は正答できる必要がある。
衛生管理体制

問1 常時 400 人の労働者を使用する製造業の事業場における衛生管理体制に関する(1)~(5)の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。

ただし、400 人中には、屋内作業場において次の業務に常時従事する者が含まれているが、その他の有害業務はないものとし、衛生管理者及び産業医の選任の特例はないものとする。

深夜業を含む業務 ・・・ 200人
多量の高熱物体を取り扱う業務 ・・・ 50人
塩素を試験研究のため取り扱う作業を行う業務 ・・・ 30人

(1)総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

(2)衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。

(3)衛生管理者は、全て第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任することができる。

(4)産業医は、この事業場に専属でない者を選任することができる。

(5)特定化学物質作業主任者を選任しなくてよい。

正答(2)

【解説】

2025 年4月公表の問1の一部を変更しているが、基本的に過去問と同じ趣旨の問題である。

(1)正しい。本問の事業場は製造業であるから、安衛令第2条の第二号に該当する。従って、常時 300 人以上(400 人)の労働者を使用しているので、総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

なお、安衛令第2条の第一号(屋外型産業)が 100 名、第二号(工業的業種)が 300 名、その他の業種が 1,000 名であることは覚えておく必要がある。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

2及び3 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第10条第1項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 100人

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 300人

  その他の業種 1,000人

(2)誤り。衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならないのは、安衛則第7条第1項第五号にのイ又はロに該当する事業場である。

この事業場は、常時400人以上の労働者を使用しているのみであるから、同号のイには該当しない。

また、(労働基準法施行規則第18条第二号の業務(多量の高熱物体を取り扱う業務)に常時 30 人以上の労働者を従事させてはいるが、)常時 400 人以上の労働者を使用しているのみであるから、同号のイにも該当しない

【労働安全衛生法】

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し(中略)なければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(衛生管理者を選任すべき事業場)

第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の選任)

第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一~四 (略)

 次に掲げる事業場にあつては、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者とすること。

 常時千人を超える労働者を使用する事業場

 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則(中略)第18条各号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させるもの

 (略)

2及び3 (略)

【労働基準法施行規則】

第18条 法第三十六条第六項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激なる業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務

(3)正しい。本問の事業場は常時400人の労働者を使用するのみであるから、のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任する必要はない。

また、安衛則第7条第1項第四号に該当せず、衛生管理者。製造業であるから、安衛則第7条第1項第三号(イ)により、第一種衛生管理者からこの事業場は、常時600人の労働者を使用しているが、有害業務は、深夜業を含む業務、多量の低温物体を取り扱う業務、及び第三類物質を取り扱う業務のみである。従って、安衛則第7条第1項第六号の条件に該当せず、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を有する者のうちから選任する必要はない。

【労働安全衛生法】

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し(中略)なければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(衛生管理者を選任すべき事業場)

第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の選任)

第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一及び二 (略)

 次に掲げる業種の区分に応じ、それぞれに掲げる者のうちから選任すること。

 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第 10 条各号に掲げる者

 (略)

 (略)

 (略)

 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則第18条第一号、第三号から第五号まで若しくは第九号に掲げる業務に常時 30 人以上の労働者を従事させるものにあつては、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任すること。

2及び3 (略)

(衛生管理者の資格)

第10条 法第12条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

 医師

 歯科医師

 労働衛生コンサルタント

 前三号に掲げる者のほか、厚生労働大臣の定める者

【労働基準法施行規則】

第18条 法第三十六条第六項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激なる業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務

(4)正しい。産業医を専属の者としなければならない要件は、安衛則第13条第1項第3号に定められているが、この事業場は常時1,000人以上の労働者を雇用しておらず、同号イ~カの業務に500人以上の労働者を従事させていない。従って、この事業場に専属の者を選任することは義務付けられていない。

なお、産業医を「専属」にしなければならない事業場の要件と、衛生管理者を「専任」にしなければならない事業場の要件との違いは深夜業など4業務である。なお「専属」と「専任」の違いを正確に理解しておくこと。簡単に言えば、「専属」とはその事業場に専ら属することであり、「専任」とはその業務(この場合は衛生管理者の業務)を専ら行うことである。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し(中略)なければならない。

2~6 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(産業医を選任すべき事業場)

第5条 法第13条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(産業医の選任)

第13条 法第13条第1項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一及び二 (略)

 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場にあつては、その事業場に専属の者を選任すること。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 さく岩機、びょう打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激な業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 坑内における業務

 深夜業を含む業務

 水銀、素、黄りん、ふつ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

 鉛、水銀、クロム、素、黄りん、ふつ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務

 その他厚生労働大臣が定める業務

 (略)

2~4 (略)

(5)正しい。作業主任者の選任は安衛法第 14 条で義務付けられている。その対象となる作業として、安衛令第6条第十八号が「特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業(試験研究及び特別有機溶剤を扱う一部の作業を除く。)」が定められている。

従って、特定化学物質を取扱う業務であっても、試験研究は作業主任者の選任義務はない。これは、試験研究を行うような者は、安全衛生面を含めて十分な知識を有している(※)ので作業主任者を選任する必要はないと考えられたためである。

※ 現実にはそうでもないのが実態ではあるのだが・・・。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一~十七 (略)

十八 別表第三に掲げる特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業及び同表第二号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う作業で厚生労働省令で定めるものを除く。)

十九~二十三 (略)

別表第三 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)

 第一類物質

1~8 (略)

 第二類物質

1~6 (略)

 (略)

8~37 塩素

 第三類物質

1~9 (略)

【特定化学物質障害予防規則】

第27条 事業者は、令第6条第十八号の作業については、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習(次項に規定する金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習を除く。第51条第1項及び第3項において同じ。)(特別有機溶剤業務に係る作業にあつては、有機溶剤作業主任者技能講習)を修了した者のうちから、特定化学物質作業主任者を選任しなければならない。

2及び3 (略)

2025年10月03日執筆