第1種衛生管理者試験 2025年04月公表 問32

受動喫煙防止ガイドライン




問題文
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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年04月公表問題 問32 難易度 受動喫煙防止ガイドラインは過去問もあるが、各肢の内容は一新されている。
受動喫煙防止

問32 厚生労働省の「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)常時 50 人以上の労働者を使用する事業場では、受動喫煙防止のための推進計画を策定し、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

(2)たばこの煙の流出を防止するための技術的基準に適合した喫煙専用室においては、食事はしてはならないが、飲料を飲むことは認められている。

(3)第一種施設は、「原則敷地内禁煙」とされており、敷地内に喫煙場所を一切設置してはならない。

(4)一般の事務所や工場は、第二種施設に含まれ、「原則屋内禁煙」とされている。

(5)本ガイドラインの「屋内」とは、外気の流入が妨げられる場所として、屋根がある建物であって、かつ、側壁が全て覆われているものの内部を指し、これに該当しないものは「屋外」となる。

正答(4)

【解説】

本問は、問題文にもあるように「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン(以下「受動喫煙防止ガイドライン」という。)」(令和元年7月1日基発 0701 第1号)に関する問題である。受動喫煙防止ガイドラインに即して解答することが必要である。

受動喫煙防止ガイドラインに関する問題は過去問にも例があるが、本年度は各選択肢が一新されている(※)。過去問の内容をそのまま覚えるだけでは正答できない最近の衛生管理者試験の典型とも言うべき問題である。

※ 医学的な内容の問題とは異なり、この種の行政のガイドラインや指針類の内容を問う問題は、試験協会としても新しい問題を容易に作れるという事情があるのかもしれない。

(1)誤り。受動喫煙防止ガイドラインには、常時使用する労働者数によらず、受動喫煙防止のための推進計画を策定するという規定はある。しかし、その計画を所轄労働基準監督署長に届け出なければならないという規定はない。

基本的に、監督署長への報告は法定事項であり、通達によるガイドライン・指針類に報告義務は定められていないと考えてよい。また、通達による指針・ガイドライン類はあくまでも行政指導の範囲のことであり、「ねばならない」という表現が使用されることも、例外的な場合を除いてないと考えてよい(※)

※ 総務省「行政手続法Q&A」のQ14に「行政指導を受けた者に、その行政指導に必ず従わなければならない義務が生じるものではありません」と明記されている。

【職場における受動喫煙防止のためのガイドライン】

3 組織的対策

(2)受動喫煙防止対策の組織的な進め方

ア 推進計画の策定

  事業者は、事業場の実情を把握した上で、受動喫煙防止対策を推進するための計画(中長期的なものを含む。以下「推進計画」という。)を策定すること。この場合、安全衛生に係る計画、衛生教育の実施計画、健康保持増進を図るため必要な措置の実施計画等に、職場の受動喫煙防止対策に係る項目を盛り込む方法もあること。

  推進計画には、例えば、受動喫煙防止対策に関し将来達成する目標と達成時期、当該目標達成のために講じる措置や活動等があること。

  なお、推進計画の策定の際は、事業者が参画し、労働者の積極的な協力を得て、衛生委員会等で十分に検討すること。

イ~カ (略)

※ 厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年7月1日基発 0701 第1号)

(2)誤り。喫煙専用室においては、飲食は認められていない。飲食が認められるのは指定たばこ専用喫煙室である。

なお、労働衛生の世界においては、飲食を禁止する場所では飲食は合わせて両方が禁止される(喫煙場所以外では喫煙も禁止される。)。食事は禁止だが飲料を飲むことは許されるなどということはあり得ないと考えてよい。

【職場における受動喫煙防止のためのガイドライン】

2 用語の定義

  本ガイドラインで使用する用語の定義は、次に掲げるとおりであること。

(1)~(6) (略)

(7)喫煙専用室

  「喫煙専用室」とは、第二種施設等の屋内又は内部の場所の一部の場所であって、構造及び設備がその室外の場所(第二種施設等の屋内又は内部の場所に限る。)へのたばこの煙の流出を防止するための技術的基準に適合した室を、専ら喫煙をすることができる場所として定めたものをいうこと。

  専ら喫煙をする用途で使用されるものであることから、喫煙専用室内で飲食等を行うことは認められないこと。

(8)指定たばこ専用喫煙室

  「指定たばこ専用喫煙室」とは、第二種施設等の屋内又は内部の場所の一部の場所であって、構造及び設備がその室外の場所(第二種施設等の屋内又は内部の場所に限る。)への指定たばこ(加熱式たばこをいう。)の煙の流出を防止するための技術的基準に適合した室を、指定たばこのみ喫煙をすることができる場所として定めたものをいうこと。

  指定たばこ専用喫煙室内では、飲食等を行うことが認められていること。

※ 厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年7月1日基発 0701 第1号)

(3)誤り。第一種施設は、「原則敷地内禁煙」とされていることは正しい。しかしこれはあくまでも「原則」であり、一定の技術的基準を満たす特定屋外喫煙場所の設置までが禁止されているわけではない。

【職場における受動喫煙防止のためのガイドライン】

5 各種施設における受動喫煙防止対策

(1)第一種施設

  事業者は、第一種施設が健康増進法により「原則敷地内禁煙」とされていることから、第一種施設内では、受動喫煙を防止するために必要な別紙1の技術的基準を満たす特定屋外喫煙場所を除き、労働者に敷地内で喫煙させないこと。また、技術的基準を満たすための効果的手法等の例には、別紙2に示すものがあること。

(2)~(4) (略)

※ 厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年7月1日基発 0701 第1号)

(4)正しい。受動喫煙防止ガイドラインの定義により一般の事務所や工場は、第二種施設に含まれる。また、第二種施設は「原則屋内禁煙」とされている。

【職場における受動喫煙防止のためのガイドライン】

2 用語の定義

  本ガイドラインで使用する用語の定義は、次に掲げるとおりであること。

(1)及び(2) (略)

(3)第二種施設

  「第二種施設」とは、多数の者が利用する施設のうち、第一種施設及び喫煙目的施設以外の施設(一般の事務所や工場、飲食店等も含まれる。)をいうこと。

(4)~(7) (略)

5 各種施設における受動喫煙防止対策

(1) (略)

(2)第二種施設

 事業者は、第二種施設が健康増進法により「原則屋内禁煙」とされていることから、第二種施設内では、次に掲げるたばこの煙の流出を防止するための技術的基準に適合した室を除き、労働者に施設の屋内で喫煙させないこと。

(ア)及び(イ) (略)

イ~エ (略)

(3)及び(4) (略)

※ 厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年7月1日基発 0701 第1号)

(5)誤り。本ガイドラインの「屋内」とは、外気の流入が妨げられる場所として、屋根がある建物であって、かつ、側壁がおおむね半分以上覆われているものの内部を指し、これに該当しないものは「屋外」となる。

屋内とは、側壁が全て覆われているものの内部を指すわけではない。従って、屋外に4本の柱を立てて上部にトタンの屋根を付け、3方をベニヤ板で囲って中央に灰皿を設置して喫煙所とすれば、そこは定義上は屋内の喫煙所になる。また、「コ」の字型の建物で中央の上部をひさしが覆っている所があれば、そこに灰皿を置くと、そこも屋内の喫煙室ということになる。

【職場における受動喫煙防止のためのガイドライン】

2 用語の定義

  本ガイドラインで使用する用語の定義は、次に掲げるとおりであること。

(1)施設の「屋外」と「屋内」

  「屋内」とは、外気の流入が妨げられる場所として、屋根がある建物であって、かつ、側壁がおおむね半分以上覆われているものの内部を指し、これに該当しないものは「屋外」となること。

(2)~(8) (略)

※ 厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年7月1日基発 0701 第1号)
2025年04月11日執筆