第1種衛生管理者試験 2025年04月公表 問28

情報機器作業の労働衛生管理ガイドライン




問題文
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学習する男性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年04月公表問題 問28 難易度 情報機器作業ガイドラインの問題は過去問では2度出題されている。各肢は、ほぼ過去問のままである。
情報機器作業指針

問28 厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に基づく措置に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)ノート型機器を使用する場合には、外付けキーボードを接続して入力作業を行っている。

(2)ディスプレイとの視距離は、おおむね50cmとし、ディスプレイ画面の上端を眼の高さよりもやや下にしている。

(3)グレアの防止、騒音の低減等の措置状況及び椅子、机等の調整状況について定期に点検している。

(4)1日の情報機器作業の作業時間が4時間未満である労働者については、自覚症状を訴える者についてのみ、情報機器作業に係る定期健康診断の対象としている。

(5)情報機器作業に係る定期健康診断の視力検査において、近見視力の片眼視力が両眼とも0.5以上である者については、遠見視力の検査を省略している。

正答(5)

【解説】

本問は、問題文から明らかなように、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(※)(以下「ガイドライン」という。)に関する問題である。

※ 厚労省からの通達(令和元年7月12日基発0712第3号(最終改正:令和3年 12 月1日基発 1201 第7号))として発出されている。

なお、過去問の学習に当たっては、たんに過去問の内容のみを学習するのではなく、ガイドラインが出題されたときはそのガイドラインについても目を通すようにしておきたい。

(1)適切でないとはいえない。ガイドラインには、「ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、小型のノート型機器で長時間の情報機器作業を行う場合については、外付けキーボードを使用することが望ましい」とされている。

【情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン】

4 作業環境管理

(2)情報機器等

ハ ノート型機器

(ハ)入力機器(キーボード、マウス等)

入力機器は、上記ロの(ロ)の要件に適合したものを用いること。

ただし、ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、小型のノート型機器で長時間の情報機器作業を行う場合については、外付けキーボードを使用することが望ましい。

※ 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン

(2)適切でないとはいえない。ガイドラインにはディスプレイとの視距離は、おおむね 40cm 以上とされているので、本肢の肢距離 50cm は適切である。なお、ディスプレイ画面の上端を眼の高さよりもやや下にしていることも適切である。

過去問の内容を覚えるに当たっては、自分が使っている情報処理端末がその問題の肢に適合しているかどうかを考えると記憶に残りやすい。

【情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン】

5 作業管理

(2)調整

ロ ディスプレイ

(イ)おおむね 40cm 以上の視距離が確保できるようにし、この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。

(ロ)ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。

(ハ)~(ホ)(略)

※ 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン

(3)適切でないとはいえない。ガイドラインそのままである。そもそも本肢は定期に点検しているといっているのだから、不適切となる要素がない。○○について点検しているが△△については点検していないとか、◇◇をしない代わりに点検を行っているなどとは言っていないのである。

【情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン】

6 情報機器等及び作業環境の維持管理

  作業環境を常に良好な状態に維持し、情報機器作業に適した情報機器等の状況を確保するため、次により点検及び清掃を行い、必要に応じ、改善措置を講じること。

(1)日常の点検

  作業者には、日常の業務の一環として、作業開始前又は一日の適当な時間帯に、採光、グレアの防止、換気、静電気除去等について点検させるほか、ディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の点検を行わせること。

(2)及び(3)(略)

※ 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン

(4)適切でないとはいえない。ガイドライン(別紙の表)によれば、1日の情報機器作業の作業時間が4時間未満である労働者については、自覚症状を訴える者についてのみ、情報機器作業に係る定期健康診断の対象とすることとされている。

【情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン】

7 健康管理

  作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業者に対して、次により健康管理を行うこと。

(1)健康診断

イ (略)

ロ 定期健康診断

  情報機器作業を行う作業者の配置後の健康状態を定期的に把握し、継続的な健康管理を適正に進めるため、情報機器作業の作業区分に応じて、別紙に定める作業者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について必要な調査又は検査を実施すること。

  なお、一般定期健康診断(労働安全衛生法第 66 条第1項に定めるものをいう。)を実施する際に、併せて実施して差し支えない。

a~e (略)

ハ (略)

別紙

情報機器作業の作業区分
作業区分 作業区分の定義 作業の例
作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの
(全ての者が健診対象)

1日に4時間以上情報機器作業を行う者であって、次のいずれかに該当するもの

・ 作業中は常時ディスプレイを注視する、又は入力装置を操作する必要がある

・ 作業中、労働者の裁量で適宜休憩を取ることや作業姿勢を変更することが困難である

・ コールセンターで相談対応(その対応録をパソコンに入力)

・ モニターによる監視・点検・保守

・ パソコンを用いた校正・編集・デザイン

・ プログラミング

・ CAD作業

・ 伝票処理

・ テープ起こし(音声の文書化作業)

・ データ入力

上記以外のもの
(自覚症状を訴える者のみ健診対象)

上記以外の情報機器作業対象者

・ 上記の作業で4時間未満のもの

・ 上記の作業で4時間以上ではあるが労働者の裁量による休憩をとることができるもの

・ 文書作成作業

・ 経営等の企画・立案を行う業務(4時間以上のものも含む。)

・ 主な作業として会議や講演の資料作成を行う業務(4時間以上のものも含む。)

・ 経理業務(4時間以上のものも含む。)

・ 庶務業務(4時間以上のものも含む。)

・ 情報機器を使用した研究(4時間以上のものも含む。)

注:「作業の例」に掲げる例はあくまで例示であり、実際に行われている(又は行う予定の)作業内容を踏まえ、「作業区分の定義」に基づき判断すること。

※ 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(下線強調引用者)

(5)適切ではない。ガイドラインでは 40 歳以上のものに対する眼位検査については一定の者について省略できることとされている。しかし、本肢のように、定期健康診断の視力検査において、近見視力の片眼視力が両眼とも 0.5 以上である者については、遠見視力の検査を省略できるとはされていない。

【情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン】

7 健康管理

  作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業者に対して、次により健康管理を行うこと。

(1)健康診断

イ (略)

ロ 定期健康診断

  情報機器作業を行う作業者の配置後の健康状態を定期的に把握し、継続的な健康管理を適正に進めるため、情報機器作業の作業区分に応じて、別紙に定める作業者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について必要な調査又は検査を実施すること。

  なお、一般定期健康診断(労働安全衛生法第 66 条第1項に定めるものをいう。)を実施する際に、併せて実施して差し支えない。

a~c (略)

d 眼科学的検査

(a) 視力検査

 遠見視力の検査

 近見視力の検査

 40 歳以上の者に対しては、調節機能検査及び医師の判断により眼位検査。ただし、c 自覚症状の有無の調査において特に異常が認められず、d(a)ⅰ遠見視力又はd(a)ⅱ近見視力がいずれも、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼とも 0.5 以上が保持されている者については、省略して差し支えない。

(b)(略)

 (略)

ハ (略)

※ 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(下線強調引用者)
2025年04月08日執筆