第1種衛生管理者試験 2025年04月公表 問17

化学物質による健康障害




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年04月公表問題 問17 難易度 指定作業場の問題は、2020 年4月公表問題以来。内容も細かいもので正答率は低いかもしれない。
化学物質による健康障害

問17 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)一酸化炭素による中毒では、ヘモグロビン合成の障害による貧血、溶血などがみられる。

(2)二酸化窒素による健康障害では、肺水腫、気管支炎などがみられる。

(3)シアン化水素による中毒では、細胞内での酸素利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。

(4)硫化水素による健康障害では、脳神経細胞の障害による意識消失、呼吸麻などがみられる。

(5)ふっ化水素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯などがみられる。

正答(1)

【解説】

化学物質による健康障害についての過去問は「化学物質による健康影響(全般)」にまとめてあるので参照されたい。

(1)誤り。一酸化炭素による中毒は、一酸化炭素が血液のヘモグロビンと結合してしまい、酸素がヘモグロビンと結合することを妨害し、血液が酸素を運搬する能力が減少することによって起きる。ヘモグロビンが合成されることの障害が起きるわけではない。

「ヘモグロビン合成」という用語が、「ヘモグロビンが合成されること」を意味し、「ヘモグロビンと酸素が結合すること」を意味する言葉ではないと気付けば、あとは常識問題であろう。なお、「溶血」とは赤血球が崩壊してヘモグロビンが遊離し、周囲の液体に浮遊することである。

(2)正しい。二酸化窒素による中毒では、のど、気管、肺などの呼吸器に悪影響を与える。肺機能への影響及び肺水腫が認められたとする報告等がある。

(3)正しい。過去問と全く同じである。シアン化水素は、ミトコンドリア内のチトクロームオキシダーゼという酵素と結合することにより、細胞の酸素代謝を直接阻害する。これにより呼吸困難、痙攣などがみられる。

(4)正しい。硫化水素による中毒では、700~800ppmで意識消失、1,000~2,000ppmで呼吸麻痺などがみられる。なお、700ppm程度より濃度が高くなると臭気を感じなくなることも覚えておこう。

ガス濃度[ppm] 作用
0.025 臭いで感知しうる限界
0.3 明瞭に感知される
5~10 悪臭を強く感じる
20~50 目の炎症
50~150 頭痛、めまい、吐き気
150~200 悪臭の麻痺により臭気を感じなくなる
300 亜急性中毒(意識不明)
700~800 臭気を感ぜずに意識不明、30 分で生命危機
1000~2000 失神、痙攣、呼吸停止、死に至る

(5)正しい。ふっ化水素に限らず、弗化物による慢性中毒として、斑状歯(歯牙弗化物症)や骨硬化症がみられる。

  1. (4):表は環境省長野自然環境事務所「地獄谷歩道沿いの管理作業における安全対策マニュアル作成の手引き」(2012年3月)による。
2025年04月05日執筆