問16 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)マイクロ波は、赤外線より波長が短い電磁波で、照射部位の組織を加熱する作用がある。
(2)全身振動障害では、レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられ、局所振動障害では、関節痛などの筋骨格系障害がみられる。
(3)熱けいれんは、大量の発汗時に水を補給することで血中の塩分濃度が低下することによって生じ、こむら返り、立ちくらみなどもみられる。
(4)減圧症は、潜函作業者や潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた二酸化炭素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻痺などの症状がみられる。
(5)けい肺は、鉄、アルミニウムなどの金属粉じんによる肺の線維増殖性変化で、けい肺結節という線維性の結節が形成される。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2025年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
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2025年04月公表問題 | 問16 | 難易度 | 作業環境中の有害因子の問題は過去問で頻出しており、本問の各肢も過去問に出題されている |
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作業環境中の有害因子 | 2 |
問16 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)マイクロ波は、赤外線より波長が短い電磁波で、照射部位の組織を加熱する作用がある。
(2)全身振動障害では、レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられ、局所振動障害では、関節痛などの筋骨格系障害がみられる。
(3)熱けいれんは、大量の発汗時に水を補給することで血中の塩分濃度が低下することによって生じ、こむら返り、立ちくらみなどもみられる。
(4)減圧症は、潜函作業者や潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた二酸化炭素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻痺などの症状がみられる。
(5)けい肺は、鉄、アルミニウムなどの金属粉じんによる肺の線維増殖性変化で、けい肺結節という線維性の結節が形成される。
正答(3)
【解説】
(1)誤り。文献によって定義は異なるが、マイクロ波の波長は1mm ~1m 程度、赤外線は 700nm ~ 1mm 程度で、マイクロ波の方が波長は長い。なお、電磁波であること、照射部位の組織を加熱する作用があることは正しい。強力なマイクロ波は眼球の水晶体の温度を上げるため白内障を発症するリスクがあり、労基則別表第1の2には「マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患」が挙げられている。
(2)誤り。局所振動障害で現れる症状が、全身振動障害の症状として説明されている。
全身振動障害で、現時点で問題となってるのは腰痛であるが、内臓機能障害も指摘されている。なお、車酔いのような一過性の症状がみられることもある。レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられることはない。
一方、局所振動障害では、レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられる。なお、関節痛などの筋骨格系障害などがみられるとする報告(※)もある。
※ 日本産業衛生学会振動障害研究会「振動障害の診断ガイドライン 2013」(産衛誌 2013 Vol.55)、長瀬博文他「チェンソー作業者の症状発現と作業、生活、身体要因との関連性についての多変量解析」(産業医学 1990年 Vol.32)
(3)正しい。熱けいれんとは、暑熱時に多量の発汗をした場合に、真水や塩分濃度の低い飲料を補給して、血液中の塩分濃度が低下して起きる、痛みを伴う筋肉のけいれんのことである。こむら返り、立ちくらみなどもみられる
(5)誤り。減圧症は、潜函作業者、潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた窒素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻痺などの症状がみられる。
二酸化炭素が気泡化して起こす症状ではない。
(5)誤り。けい肺は、遊離結晶性シリカの粉じんによる肺の線維増殖性変化である。なお、けい肺結節(Silicotic Nodule)は、境界明瞭な層状の構造を示す硝子化した線維性結節で、これが形成されることは正しい。