問13 有機溶剤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)有機溶剤の蒸気は、空気より重いため、地下室やピットなどの通気が不十分な場所では滞留しやすい。
(2)有機溶剤は、全て脂溶性があるほか、揮発性及び引火性があるものが多い。
(3)有機溶剤による障害のうち、皮膚や粘膜の症状には、皮膚の角化、結膜炎などがある。
(4)低濃度の有機溶剤の繰り返しばく露では、頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴がみられる。
(5)メタノールによる障害として顕著なものは、網膜微細動脈瘤を伴う脳血管障害である。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2025年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
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2025年04月公表問題 | 問13 | 難易度 | 有機溶剤の物性と健康影響は必出事項で、内容も過去問に出題されたものを一部変形しただけである。 |
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有機溶剤の物性等 | 2 |
問13 有機溶剤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)有機溶剤の蒸気は、空気より重いため、地下室やピットなどの通気が不十分な場所では滞留しやすい。
(2)有機溶剤は、全て脂溶性があるほか、揮発性及び引火性があるものが多い。
(3)有機溶剤による障害のうち、皮膚や粘膜の症状には、皮膚の角化、結膜炎などがある。
(4)低濃度の有機溶剤の繰り返しばく露では、頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴がみられる。
(5)メタノールによる障害として顕著なものは、網膜微細動脈瘤を伴う脳血管障害である。
正答(5)
【解説】
本問は、(2)が過去問をややひねってあるが、他の肢はすべて過去問をそのまま流用している。
(1)正しい。有機溶剤の多くは、揮発性が高く、その蒸気は空気より重い。このため、地下室やピットなどの通気が不十分な場所では滞留しやすい。
そのため、有機溶剤のセンサは天井よりも床につける方がよく、局所排気装置は上方吸引より下方吸引の方が効率的である。
(2)正しい。本肢は、過去問に出題された肢をやや変形している。有機溶剤という用語には、安衛法令上の有機溶剤という意味と、一般的な意味での「有機物である溶剤」という意味がある。いずれにせよ有機溶剤の2大特性に、脂溶性(※)と揮発性があり、脂溶性はすべての有機溶剤が多かれ少なかれ有しており、揮発性はほとんどの有機溶剤が有している。また、引火性も多くの有機溶剤が有している。
※ 脂溶性とは油脂に溶ける性質のことである。例えば、山内直人他「慢性有機溶剤乱用による脳障害」(精神保健研究 No.40 1994 年)によれば「。有機溶剤はすべて脂溶性であ(る)
」とされている。
なお、ハロゲン類ではジクロロメタン、トリクロロエチレンのように引火性のほとんどないものもある。
(3)正しい。有機溶剤による皮膚の急性の症状としては、皮膚の痛み、紅斑、水疱などがあり、脱脂作用によって亀裂、角化(苔癬化)、紅斑局面などを引き起こすことがある。
眼の粘膜の急性症状としては、流涙、充血、眼痛などを起こし、結膜炎を引き起こすことがある。
(4)正しい。低濃度の有機溶剤の繰り返しばく露により、精神・神経障害(多発神経炎、視神経炎、小脳失調、初老期痴呆など)を起こすことがある。その症状として、頭痛、頭重感、いらいら、めまい、不眠、記憶力の低下、失神、手足のしびれ感、神経痛、脱力、麻痺などの不定愁訴がみられる。
(5)誤り。メタノールによる健康障害として顕著なものは、眼に対する重篤な損傷、中枢神経系への影響、麻酔作用などである。
網膜細動脈瘤は高血圧のある場合に生じるおそれがある疾病である。脳血管障害もどちらかといえば生活習慣病である。