第1種衛生管理者試験 2025年04月公表 問10

労働時間の延長が1日2時間を超えてはならない業務




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2025年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2025年04月公表問題 問10 難易度 本問は過去問がほとんどない。なぜ労働時間を制限するのかという観点から解いてみよう。
労働基準法の時間外労働

問10 労働基準法に基づく時間外労働に関する協定を締結し、所轄労働基準監督署長への届出を行うとき、延長する労働時間が1日について2時間以内に制限されない業務は、次のうちどれか。

(1)著しく暑熱な場所における業務

(2)ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

(3)ヘリウム、アルゴン等の不活性の気体を入れたことのあるタンクの内部における業務

(4)土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

(5)削岩機、びょう打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

正答(3)

【解説】

本問の同種問題は、2017 年4月公表分からの公表問題としては、2024 年4月問 10 のみである。

労基法第 36 条第6項(第一号)の規定により、省令で定める健康上特に有害な業務については、1日について労働時間を延長して労働させる時間が2時間を超えてはならないとされている。

そして、この省令の定めは、労基則第 18 条に定められているので、本問は同条に定められているかどうかで判断できる。

(1)制限されている。労基則第 18 条第一号に、著しく暑熱な場所における業務が定められている。

(2)制限されている。労基則第 18 条第八号に、ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務が定められている。

(3)制限されていない。ヘリウム、アルゴン等の不活性の気体を入れたことのあるタンクの内部における業務は、労基則第 18 条に定められていない。

労働時間の延長が制限されるものは、ヒトの体に負担をかける業務である。ヘリウム、アルゴン等の不活性の気体を入れたことのあるタンクの内部における業務は酸素欠乏症の危険はあるが、危険のないように換気をしておけば(酸欠事故を起こさなければ)身体に負担がかかるようなことはない。

(4)制限されている。労基則第 18 条第四号に、土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務が定められている。

(5)制限されている。労基則第 18 条第六号に、削岩機、びょう打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務が定められている。

【労働基準法】

(時間外及び休日の労働)

第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

②~⑤ (略)

 使用者は、第1項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。

 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日について労働時間を延長して労働させた時間 2時間を超えないこと。

二及び三 (略)

⑦~⑪ (略)

【労働基準法施行規則】

第18条 法第36条第6項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 削岩機、びよう打機等の使用によつて身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激なる業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 鉛、水銀、クロム、素、黄りん、ふつ素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務

2025年04月04日執筆