第1種衛生管理者試験 2024年10月公表 問40

耳とその機能




問題文
トップ
学習する女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2024年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、下表の左欄、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2024年10月公表問題 問40 難易度 聴覚に関する問題は最近では2回に1回の出題である。内容的にもやや高度だが正答したい。
耳とその機能

問40 耳とその機能に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)耳は、聴覚と平衡感覚をつかさどる器官で、外耳、中耳及び内耳の三つの部位に分けられる。

(2)耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。

(3)内耳は、前庭、半規管及び牛(うずまき管)の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、牛が聴覚をそれぞれ分担している。

(4)内耳に伝わった音の振動は、牛の中のリンパ液を介して有毛細胞に伝わり、この時、音の振幅の大きさによって異なる部位の有毛細胞が振動することによって音の高さの違いが伝えられる。

(5)鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。

正答(4)

【解説】

耳の断面図(解剖図)のイラスト

©看護roo!

図をクリックすると拡大します

(1)正しい。耳は、聴覚のみならず(3)の解説に示すように平衡感覚をつかさどる器官である。図に示すように、外耳、中耳及び内耳の三つの部位に分けられる。

(2)正しい。耳介で集められた音は、外耳道を伝わって鼓膜を振動させ、その振動が、ツチ骨、キヌタ骨及びアブミ骨と呼ばれる耳小骨を伝わって内耳へ伝わる。なお、このとき耳小骨はテコの仕組みで音を増幅していく。

(3)正しい。内耳は、前庭、半規管及び蝸牛の三つの部位からなる。前庭と半規管は平衡感覚を分担している。

前庭は三半規管の根元の部分にあり、単純に言えば、物体を感じることができる有毛細胞が内側にびっしりと生えた容器だと思えばよい。その容器の中(有毛細胞の上)に小さな耳石が入っている。脳は、この耳石がある部分が「下」であると感知することで、身体の傾きを知るのである。

三半規管は、「外側半規管」「前半規管」「後半規管」という3つの中空のリングからなる器官である。リングの中はリンパ液で満たされており、身体が回転すると、その動きによってリンパ液がリング内を回るように流れる。これを感知して、脳は身体の回転を知るのである。

(4)誤り。蝸牛は、内側に有毛細胞という振動を感じる細胞が生えた渦巻き型の器官であり、耳小骨から伝えられた振動(音)を信号に変換して脳に伝える役割をしている。蝸牛が渦巻き状をしているのは、音の周波数によって、入り口側は高い音を、奥側は低い音を感知するようになっているのである。

音の高低は周波数によるのであり、振幅によるのではない。「音の振幅の大きさによって異なる部位の有毛細胞が振動すること」で音の高低が判別できるわけがないと気付かなければならない。

(5)正しい。鼓室は、中耳にある鼓膜の内側の部屋である。この部分の気圧が鼓膜の外側と異なると音が聞こえにくくなる。そこで、耳管が鼓室と咽頭をつないで、鼓室の内圧を外気圧と等しくなるようにしているのである。

なお、耳管と咽喉は、通常はふさがっており、唾液や食物を嚥下したときに開くようになっている。

2024年10月16日執筆