問30 厚生労働省の「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。
(1)経営トップ自らが、高齢者労働災害防止対策に取り組む姿勢を示し、企業全体の安全意識を高めるため、高齢者労働災害防止対策に関する事項を盛り込んだ安全衛生方針を表明する。
(2)高齢者労働災害防止対策には、事業場全体で取り組むことが重要であることから、対策を推進するための特定の部署や担当者を指定することは避けるようにする。
(3)身体機能が低下した高年齢労働者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を行うが、危険を知らせるための警報音等は、年齢によらず聞き取りやすい高音域の音を採用するとよい。
(4)高年齢労働者が自らの身体機能の維持向上に取り組めるよう、高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行うことが望ましいが、個々の労働者に対する不利益につながるおそれがあることから、体力チェックの評価基準は設けないようにする。
(5)高年齢労働者は、十分な経験を有しているため、改めて安全衛生教育を行うことは高年齢労働者の自尊心を損なうおそれがあるばかりでなく、長時間にわたり教育を行うことは身体面の負担が大きいことから、最小限の時間と内容で行うことが望ましい。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2024年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
他の問題の解説をご覧になる場合は、下表の左欄、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
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2024年10月公表問題 | 問30 | 難易度 | エイジフレンドリーガイドラインに関する新問題。今後、頻出する可能性があり確実に押さえておきたい。 |
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高年齢労働者対策 | 2 |
問30 厚生労働省の「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。
(1)経営トップ自らが、高齢者労働災害防止対策に取り組む姿勢を示し、企業全体の安全意識を高めるため、高齢者労働災害防止対策に関する事項を盛り込んだ安全衛生方針を表明する。
(2)高齢者労働災害防止対策には、事業場全体で取り組むことが重要であることから、対策を推進するための特定の部署や担当者を指定することは避けるようにする。
(3)身体機能が低下した高年齢労働者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を行うが、危険を知らせるための警報音等は、年齢によらず聞き取りやすい高音域の音を採用するとよい。
(4)高年齢労働者が自らの身体機能の維持向上に取り組めるよう、高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行うことが望ましいが、個々の労働者に対する不利益につながるおそれがあることから、体力チェックの評価基準は設けないようにする。
(5)高年齢労働者は、十分な経験を有しているため、改めて安全衛生教育を行うことは高年齢労働者の自尊心を損なうおそれがあるばかりでなく、長時間にわたり教育を行うことは身体面の負担が大きいことから、最小限の時間と内容で行うことが望ましい。
正答(1)
【解説】
本問は、問題文から明らかなように、高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン:報道発表:関連通達)(以下、「ガイドライン」と略す。)からの出題である。
エイジフレンドリーガイドラインそのものが 2020 年に公表されている。衛生管理者試験は、策定されたり大幅な改正が行われた法令や指針類は、その後、数年間は出題されない傾向があり、今回の公表分が初出である。
初めての出題とはいえ、誤りの肢が労働衛生の観点からはかなり非常識な内容となっており、常識的に正答できる。むしろ、試験協会のサービス問題である。
(1)正しい。ガイドライン第2の1の(1)のアに「経営トップ自らが、高齢者労働災害防止対策に取り組む姿勢を示し、企業全体の安全意識を高めるため、高齢者労働災害防止対策に関する事項を盛り込んだ安全衛生方針を表明すること
」とされている。
本肢は、誤っていると考える要素がない。高年齢者の安全と健康の確保は重要事項であり(だからこそガイドラインが策定された)、トップが初診の表明を行うことは、事業場において適切に高年齢労働者の安全と健康の確保を行う上で有効である。
(2)誤り。ガイドライン第2の1の(1)のイに「安全衛生方針に基づき、高齢者労働災害防止対策に取り組む組織や担当者を指定する等により、高齢者労働災害防止対策の実施体制を明確化すること
」とされている。
高齢者労働災害防止対策に限らず、事業場全体で取り組むことが重要であるからこそ、対策を推進するための特定の部署や担当者を指定することが重要になる。本肢は、あまりにも非常識な内容である。
(3)誤り。ガイドライン第2の2の(1)に<危険を知らせるための視聴覚に関する対応>として、「警報音等は、年齢によらず聞き取りやすい中低音域の音を採用する、音源の向きを適切に設定する、指向性スピーカーを用いる等の工夫をすること
」とされている。
高年齢者は、高音域から聴力が衰えるので、高音域の音は聞き取りにくい。そのことは覚えておかなければならない。なお、身体機能が低下した高年齢労働者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を行うことは正しい。
(4)誤り。ガイドライン第2の3の(2)に「事業場の働き方や作業ルールにあわせた体力チェックを実施すること。この場合、安全作業に必要な体力について定量的に測定する手法及び評価基準は安全衛生委員会等の審議を踏まえてルール化することが望ましいこと
」とされている。
そもそも評価基準を設けないのであれば、体力チェックを行う意味がない。また、評価基準を儲けることがただちに個々の労働者に対する不利益につながるわけではない。なお、高年齢労働者が自らの身体機能の維持向上に取り組めるよう、高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行うことが望ましいことは正しい。
(5)誤り。ガイドライン第2の5に「高年齢労働者を対象とした教育においては、作業内容とそのリスクについての理解を得やすくするため、十分な時間をかけ、写真や図、映像等の文字以外の情報も活用すること。中でも、高年齢労働者が、再雇用や再就職等により経験のない業種や業務に従事する場合には、特に丁寧な教育訓練を行うこと
」とされている。
そもそも、厚生労働省は高年齢者を含めて安全衛生教育の重要性を周知している。「高年齢労働者は、十分な経験を有しているため、改めて安全衛生教育を行うことは高年齢労働者の自尊心を損なうおそれがある」などと厚労省のガイドラインに記されるわけがないであろう。