第1種衛生管理者試験 2024年10月公表 問19

呼吸用保護具の選択と使用方法




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学習する女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2024年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2024年10月公表問題 問19 難易度 呼吸用保護具に関する基本的な知識問題である。過去問を学習していれば正答可能な問題。
呼吸用保護具

問19 呼吸用保護具に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)呼吸用保護具は、計算により求めた要求防護係数よりも大きな値の指定防護係数をもつものを選択する。

(2)型式検定合格標章のある防じんマスクでも、ヒュームのような微細な粒子に対しては使用しではならない。

(3)防じんマスクの面体の接顔部に接顔メリヤスを使用すると、マスクと顔面との密着性が良くなる。

(4)一酸化炭素用防毒マスクの吸収缶の色は、黄色である。

(5)2種類以上の有害ガスが混在している場合には、そのうち最も毒性の強いガス用の防毒マスクを使用する。

正答(1)

【解説】

呼吸用保護具については当サイトの「化学物質、粉じん等の保護具」を参照して頂きたい。

(1)正しい。防護係数とは、面体等の外側の濃度と面体等の内側の粉じん濃度の比である。分かりやすく言えば、有害な気中の有害物の濃度をどれだけ低下することができるかを表す数値である。

そして、要求防護係数とは、その作業場の気中濃度を職業ばく露限界値で除した値(作業環境中の有害物質の濃度÷有倍物質の職業ばく露限界値)であり、濃度倍率とも呼ばれる。

一方、指定防護係数とは、その種類の呼吸用保護具についての、多数の実験結果から算定された防護係数値の代表値である。訓練された着用者が、正常に機能する呼吸用保護具を正しく着用した場合に、少なくとも得られるであろうと期待される防護係数を示している(※)

※ 「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について」(平成21年3月31日基発第0331013号)の別紙「ナノマテリアルの労働現場におけるばく露防止等の対策について」の別添「呼吸用保護具の選択の方法」等を参照

従って、呼吸用保護具は、計算により求めた要求防護係数よりも大きな値の指定防護係数をもつものを選択する必要がある。

(2)誤り。ヒュームやナノマテリアルのような微細な粒子に対しても、型式検定合格標章のある防じんマスクは有効である。防じんマスクのフィルターは、粒子の大きな粉じんは網でさえぎる形で除去する。一方、粒子の小さな粉じんはブラウン運動をしているので、フィルターを通過するときにファンデアワールス力でフィルターに吸着する(拡散効果)ことで除去するのである(※)

※ 湯浅久史「マスク用エアフィルタの高性能化と評価技術に関する研究」(クリックすると自動でDLされます。)に分かりやすい説明がある。

そのため、0.3µm 程度の粒径のものが最も捕集効率が悪く、粒径がそれ以上でも、それ以下でも捕集効率は高くなるのである。なお、実務においては、使い捨て式防じんマスクの指定防護係数はあまり大きくないので、ヒュームやナノマテリアルが発生する場所で使用できることはほとんどないことに留意すること。

(3)誤り。防じんマスクの面体の接顔部に接顔メリヤスを使用すると、マスクと顔面との密着性が悪くなる。なお、すでに廃止された通達ではあるが、「防毒マスクの選択、使用等について(令和5年5月25日 基発0525第3号により廃止)」(平成17年2月7日基発第0207007号)に次のような記述があった。

【メリヤスの使用に関する通達の注意事項】

第1 事業者が留意する事項

3 防毒マスクの使用に当たっての留意事項

(9)次のような防毒マスクの着用は、有害物質が面体の接顔部から面体内へ漏れ込むおそれがあるため、行わせないこと。

 (略)

 面体の接顔部に「接顔メリヤス」等を使用すること。

 (略)

※ 「防毒マスクの選択、使用等について(令和5年5月25日 基発0525第3号により廃止)」(平成17年2月7日基発第0207007号)

(4)誤り。一酸化炭素用防毒マスクの吸収缶の色は、黄色ではなく赤である。次の表は覚えておく必要がある。

対応ガスの種類 吸収缶の色
有機ガス用
ハロゲンガス用 灰色と黒
アンモニア用
亜硫酸ガス用 橙色(黄赤)
一酸化炭素用
酸性ガス用 灰色
シアン化水素用
臭化メチル用
硫化水素用

(5)誤り。二種類以上の有毒ガスが混在している場合には、原則として給気式マスクを用いる。なお、「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月 25 日基発 0525 第3号)には、2種類以上の有害ガスが混在している場合について、以下のように対応することとされている。

【二種類以上の有毒ガスが混在している場合に関する通達の注意事項】

第3 防毒マスク及びG-PAPRの選択及び使用に当たっての留意事項

1 防毒マスク及びG-PAPRの選択及び使用項

(7)2種類以上の有毒ガス等が混在する作業環境中で防毒マスク又は G-PAPR を選択及び使用する場合には、次の事項について留意すること。

 作業環境中に混在する2種類以上の有毒ガス等についてそれぞれ合格した吸収缶を選定すること。

 この場合の吸収缶の破過時間は、当該吸収缶の製造者等に問い合わせること

※ 「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月 25 日基発 0525 第3号)

常識で考えても、最も毒性の強いガス用の防毒マスクを使用したのでは、その他の有害なガスにばく露してしまうことになるだろう。

2024年10月12日執筆