第1種衛生管理者試験 2024年10月公表 問13

有機溶剤による健康影響等




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学習する女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2024年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2024年10月公表問題 問13 難易度 有機溶剤に関する基本的な知識問題。すべての肢が過去の公表問題と同じ。過去問の学習のみで正答できる。
有機溶剤による健康影響

問13 有機溶剤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)有機溶剤の多くは、揮発性が高く、その蒸気は空気より重い。

(2)有機溶剤による障害のうち、皮膚や粘膜の症状には、皮膚の角化、結膜炎などがある。

(3)低濃度の有機溶剤の繰り返しばく露では、頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴がみられる。

(4)メタノールによる障害として顕著なものは、網膜微細動脈癌を伴う脳血管障害である。

(5)キシレンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、メチル馬尿酸である。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。有機溶剤の多くは、揮発性が高く、その蒸気は空気より重い。そのため、有機溶剤のセンサは天井よりも床につける方がよく、局所排気装置は上方吸引より下方吸引の方が効率的である。

(2)正しい。有機溶剤による皮膚の急性の症状としては、皮膚の痛み、紅斑、水疱などがあり、脱脂作用によって亀裂、角化(苔癬化)、紅斑局面などを引き起こすことがある。

眼の粘膜の急性症状としては、流涙、充血、眼痛などを起こし、結膜炎を引き起こすことがある。

(3)正しい。低濃度の有機溶剤の繰り返しばく露により、精神・神経障害(多発神経炎、視神経炎、小脳失調、初老期痴呆など)を起こすことがある。その症状として、頭痛、頭重感、いらいら、めまい、不眠、記憶力の低下、失神、手足のしびれ感、神経痛、脱力、麻痺などの不定愁訴がみられる。

(4)誤り。メタノールによる健康障害として顕著なものは、眼に対する重篤な損傷、中枢神経系への影響、麻酔作用などである。

網膜細動脈瘤は高血圧のある場合に生じるおそれがある疾病である。脳血管障害もどちらかといえば生活習慣病である。

(5)正しい。キシレンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、メチル馬尿酸である。下記表は覚えておくこと。

物質名 生物学的モニタリングの指標(検査内容)
トルエン 尿中馬尿酸
キシレン 尿中メチル馬尿酸
スチレン 尿中マンデル酸
テトラクロルエチレン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
1.1.1-トリクロルエタン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
トリクロルエチレン 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物
N.N-ジメチルホルムアミド 尿中N-メチルホルムアミド
ノルマルヘキサン 尿中2,5-ヘキサンジオン
血液中鉛、尿中デルタアミノレブリン酸
2024年10月11日執筆