問11 化学物質とその常温・常圧(25 ℃、1気圧)での空気中における状態との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、ガスとは、常温・常圧で気体のものをいい、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1) | アセトン | ・・・ | 蒸気 |
(2) | ニッケルカルボニル | ・・・ | 蒸気 |
(3) | 二硫化炭素 | ・・・ | ガス |
(4) | ホルムアルデヒド | ・・・ | ガス |
(5) | 硫化水素 | ・・・ | ガス |
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2024年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
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2024年10月公表問題 | 問11 | 難易度 | 問題の形式は過去問に頻出だが、初出の物質が含まれている。過去問の知識に初出を加える最近の傾向の問題。 |
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化学物質の物性 | 3 |
問11 化学物質とその常温・常圧(25 ℃、1気圧)での空気中における状態との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、ガスとは、常温・常圧で気体のものをいい、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1) | アセトン | ・・・ | 蒸気 |
(2) | ニッケルカルボニル | ・・・ | 蒸気 |
(3) | 二硫化炭素 | ・・・ | ガス |
(4) | ホルムアルデヒド | ・・・ | ガス |
(5) | 硫化水素 | ・・・ | ガス |
正答(3)
【解説】
化学物質の常温・常圧での空気中における状態に関する過去問は「常温・常圧における空気中の状態」に、一覧表の形でまとめてあるので参照されたい。
本問は、但書でガスと蒸気の定義を示している。これは、蒸気とガスについては様ざまな定義があり、定義によってはどちらに該当するかが異なるからであろう。そして、本問では、常温・常圧で液体又は固体の状態にならないものは蒸気ではないと言っている。常温・常圧で気体となっているものは、ガスであって蒸気ではないのである。従って、沸点が常温よりも高いか低いかによって分類すればよいことになろう。
なお、揮発とは物体の状態が液体から気体に変化することで、昇華とは固体から気体に代わることである。日常用語の「蒸発」は液体表面から気化する現象で、蒸気圧が気圧よりも高くなると「沸騰」して液体内部からも気化するようになる。
また、ミストや湯気は液体であり、ヒュームは固体であって蒸気ではないことも覚えておくこと。
(1)正しい。アセトンの沸点は約56℃であり、蒸気圧は239.5hPaである。特有の刺激臭のある無色の蒸気である。
(2)正しい。ニッケルカルボニルの融点は約 -49 ℃、沸点は約 43 ℃であり、蒸気圧は 53kPa(25.8 ℃)である。常温常圧では、引火性の高い液体及び蒸気として存在する。
(3)誤り。二硫化炭素は、常温・常圧では液体として存在する。蒸発速度は酢酸ブチルを1としたとき、22.6となる。従って、二硫化炭素は常温・常圧の空気中で蒸気として存在する。
(4)正しい。ホルムアルデヒドの沸点は約-20℃であり、ほぼ無色の刺激臭のあるガスである。
(5)正しい。硫化水素の融点は約 -85 ℃、沸点は約-60 ℃であり、極めて可燃性・引火性の高いガスである。