問8 次の有害業務に従事した者のうち、離職の際に又は離職の後に、法令に基づく健康管理手帳の交付対象とならないものはどれか。
(1)ジアニシジンを取り扱う業務に3か月以上従事した者
(2)ベーターナフチルアミンを取り扱う業務に3か月以上従事した者
(3)ベンジジンを取り扱う業務に3か月以上従事した者
(4)水銀を取り扱う業務に5年以上従事した者
(5)粉じん作業に従事した者で、じん肺管理区分が管理二又は管理三のもの
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2024年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2024年10月公表問題 | 問08 | 難易度 | 健康管理手帳の交付対象は 2019 年 10 月公表以来の出題。過去問の学習で確実に正答できる問題。 |
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健康管理手帳 | 3 |
問8 次の有害業務に従事した者のうち、離職の際に又は離職の後に、法令に基づく健康管理手帳の交付対象とならないものはどれか。
(1)ジアニシジンを取り扱う業務に3か月以上従事した者
(2)ベーターナフチルアミンを取り扱う業務に3か月以上従事した者
(3)ベンジジンを取り扱う業務に3か月以上従事した者
(4)水銀を取り扱う業務に5年以上従事した者
(5)粉じん作業に従事した者で、じん肺管理区分が管理二又は管理三のもの
正答(4)
【解説】
健康管理手帳を公布する業務は安衛令第 23 条に規定されており、具体的な要件は安衛則第 53 条に定められている。
ただ、条文を覚えていなかったとしても、健康管理手帳は退職後の健康管理を目的とするものであるから、業務を離れた後で発症するおそれのある”発がん性物質の取扱い”や”粉じん業務”に限られる。そのことが分かっていれば、ある程度、選択肢を絞り込むことはできる。
【労働安全衛生法】
(健康管理手帳)
第67条 都道府県労働局長は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で、政令で定めるものに従事していた者のうち、厚生労働省令で定める要件に該当する者に対し、離職の際に又は離職の後に、当該業務に係る健康管理手帳を交付するものとする。ただし、現に当該業務に係る健康管理手帳を所持している者については、この限りでない。
2~4 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(健康管理手帳を交付する業務)
第23条 法第67条第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。
一 ベンジジン及びその塩(これらの物をその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
二 ベータ―ナフチルアミン及びその塩(これらの物をその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
三 粉じん作業(じん肺法(略)第2条第1項第三号に規定する粉じん作業をいう。)に係る業務
四~十一 (略)
十二 ジアニシジン及びその塩(これらの物をその重量の1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
十三~十五 (略)
【労働安全衛生規則】
(健康管理手帳の交付)
第53条 法第67条第1項の厚生労働省令で定める要件に該当する者は、労働基準法の施行の日以降において、次の表の上欄に掲げる業務に従事し、その従事した業務に応じて、離職の際に又は離職の後に、それぞれ、同表の下欄に掲げる要件に該当する者その他厚生労働大臣が定める要件に該当する者とする。
業務 | 要件 |
---|---|
令第23条第一号、第二号又は第十二号の業務 | 当該業務に3月以上従事した経験を有すること。 |
令第23条第三号の業務 | じん肺法(昭和35年法律第30号)第13条第2項(同法第15条第3項、第16条第2項及び第16条の2第2項において準用する場合を含む。)の規定により決定されたじん肺管理区分が管理二又は管理三であること |
(中略) | (中略) |
2及び3 (略)
(1)交付対象となる。ジアニシジンを取り扱う業務は、安衛令第 23 条に定められている。また、安衛則第 53 条第1項に、交付要件は3か月以上従事したこととされている。
(2)交付対象となる。ベーターナフチルアミンを取り扱う業務は、安衛令第 23 条に定められている。また、安衛則第 53 条第1項に、交付要件は3か月以上従事したこととされている。
(3)交付対象となる。ベンジジンを取り扱う業務は、安衛令第 23 条に定められている。また、安衛則第 53 条第1項に、交付要件は3か月以上従事したこととされている。
(4)交付対象とならない。水銀を取り扱う業務は、安衛令第 23 条の対象となっていない。なお、水銀は政府のモデルSDSでは、「生殖能又は胎児への悪影響のおそれ」があるとされているが、発がん性については区分の対象となっていない。
(5)交付対象となる。粉じん作業は、安衛令第 23 条に定められている。しかし、安衛則第 53 条第1項は、健康管理手帳の交付要件として管理2又は管理3であることと定めている。
なお、管理四の者は、じん肺法第 23 条で療養(医師による治療を受けること)を要するとされており、治療を受けることができるため、健康管理手帳を交付する必要がないのである。